日本地球惑星科学連合2025年大会

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[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM17] 宇宙プラズマ科学

2025年5月27日(火) 10:45 〜 12:15 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:天野 孝伸(東京大学 地球惑星科学専攻)、三宅 洋平(神戸大学大学院システム情報学研究科)、諌山 翔伍(九州大学総合理工学研究院)、梅田 隆行(北海道大学 情報基盤センター)、座長:諌山 翔伍(九州大学総合理工学研究院)、三宅 洋平(神戸大学大学院システム情報学研究科)

11:45 〜 12:00

[PEM17-11] 非線形波動粒子相互作用における背景プラズマ数密度勾配の寄与

*齋藤 幸碩1加藤 雄人1川面 洋平2,1熊本 篤志1 (1.東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻、2.宇都宮大学データサイエンス経営学部)

キーワード:非線形波動粒子相互作用、粒子加速過程、木星磁気圏、プラズマ数密度勾配

惑星磁気圏の非線形波動粒子相互作用には、例えばkinetic Alfvén waveとのLandau共鳴によるオーロラ電子加速過程[e.g., Saito et al., 2025]や、高エネルギー電子とサイクロトロン共鳴によるwhistler mode chorus waveの励起過程[e.g., Omura, 2021]などが挙げられる。これらの粒子捕捉過程は、2次共鳴理論[e.g., Matsumoto and Omura, 1981]を導入することで理解される。コヒーレントな電磁波動に、Landau共鳴過程(サイクロトロン共鳴過程)で捕捉された粒子の速度位相空間上の運動は、波の磁力線平行方向の位相速度Vph||(共鳴速度VR)の近傍に形成される捕捉領域内で、粒子から見た波の位相ψ(粒子のジャイロ位相φとの相対位相ζ = φ-ψ)についての単振動と、背景場の勾配に起因する不均一性因子Sの重畳として記述される。
一般に、不均一性因子Sの評価に関しては、波の周波数の時間変化や背景磁場勾配のみを考慮し、背景プラズマ数密度勾配を無視する場合が多い[Omura et al., 2008; Saito et al., 2025]。しかし、木星磁気圏におけるイオトーラスのように、磁気赤道付近のプラズマ数密度が遠心力のスケールハイト[e.g., Thomas et al., 2004]で顕著に変化する系では、数密度勾配が磁場勾配以上にSに寄与する可能性がある。
Saito et al. (2025)は、地球磁気圏L = 9磁力線上でkinetic Alfvén waveによるオーロラ電子加速過程を検討した。プラズマシート内の数百eVから数keVの温度を有するプラズマは、磁気赤道付近では磁力線方向の数密度変化が小さいため[e.g., Ergun et al., 2000; Saito et al., 2023]、Sにおいては背景磁場勾配のみの寄与が重要になる。一方、kinetic Alfvén waveの電子加速過程はイオトーラスなど木星磁気圏でも重要と考えられている[e.g., Damiano et al., 2019]。イオトーラスでは、観測より遠心力スケールハイトはHc = 1.16 RJとされる[Phipps et al., 2018]。磁場勾配(B)と密度勾配(n)を考慮した不均一性因子S = SB+Snを新たに導出したところ、イオトーラスではSn/SB ≦ 2.88となることが分かった。この結果は、数密度勾配がSの主要要素となり得ることを示唆する。
同様の議論はwhistler mode chorus waveにも適用される。高エネルギー電子の運動における不均一性には、磁場勾配と数密度勾配の比を評価する係数Λが含まれる[Omura et al., 2009]。Λは1に加え、第2項として数密度勾配と磁場勾配の比に関する項を含む。木星の衛星エウロパ近傍では強度の大きいwhistler mode waveが観測される[Shprits et al., 2018]。エウロパ周囲のプラズマ環境[Bagenal et al., 2015]よりHc = 1.61 RJとされる。木星固有磁場をダイポールに近似することで、Λ = 1+7.5(Ωe-ω)/Ωeと得られる。ここで、Ωeは電子サイクロトロン周波数、ωは波の周波数である。したがって、数密度勾配が磁場勾配に比べて数倍Sに寄与することが分かる。
以上より、木星磁気圏のような数密度勾配が顕著な領域では、数密度勾配が不均一性因子Sの主要な要素になり得ることが示唆される。本発表では、これら理論検討の詳細について報告する。