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[PPS01-04] ひさき衛星の極端紫外分光データを用いたエウロパ軌道におけるプラズマ診断

キーワード:木星磁気圏、イオプラズマトーラス、エウロパ、ひさき衛星
エウロパは木星から9.4 RJ (RJ = 71,492 km) 離れている衛星で、液体の地下水、有機物質、エネルギーという生命に必要な材料が揃っていると期待されているため、近年注目が高まっている。エウロパは、木星磁気圏のプラズマが衛星表面にスパッタリングすることによって生じる希薄な酸素大気に覆われている。エウロパ大気の生成散逸についての理解を深めるためには、衛星周辺のプラズマ状態を知ることが不可欠である。しかし、これまでの観測に限界があり、エウロパ軌道でのプラズマ特性の空間分布・時間変動についてはほとんど調査されてこなかった。そこで本研究では、ひさき衛星を用いて、エウロパ周辺の電子密度や電子温度、イオン組成といったプラズマ特性を推定することを目的とする。
ひさき衛星に搭載された極端紫外線分光器 (EXCEED) は、65 nm ~ 145 nm の波長帯で硫黄や酸素のイオンの輝線を観測している。木星磁気圏のプラズマの大部分は、衛星イオ (5.9 RJ) の火山性ガスを起源としている。イオプラズマトーラスの密度は、イオ軌道で最も濃く、動径方向外側に向かうほど希薄になっている。エウロパ軌道では発光強度が低いので、地球の放射線帯やジオコロナの影響を丁寧に取り除く必要がある。また、シグナル・ノイズ比 (S/N) を向上するため、ひさき衛星が日陰領域にいてジオコロナの発光強度が低いときのデータを、2015年3月1日から2015年5月14日までの約15,500分間にわたって積分した。この期間は、イオの火山活動が活発な時期を含んでいる。
観測される輝線の発光強度は、体積放射率が視線方向に沿って積分されたものである。体積放射率は、電子衝突によって励起されるトーラスのイオンの密度に比例し、衝突電子の密度・温度にも影響を受ける。本研究では、CHIANTI原子データベースを用いて計算されたモデルスペクトルと観測スペクトルのカイ2乗値を最小化することにより、観測データからプラズマパラメータを推定した。この方法は、プラズマ診断と呼ばれている。
ひさき衛星のデータを解析した結果、エウロパ軌道における硫黄と酸素のイオンの輝線を同定することに成功し、その発光強度はイオ軌道における強度の約2~6 %であった。イオ軌道とエウロパ軌道では輝線の強度比も変化していて、S2+ (68.0 nm) に対するS3+ (74.9 nm)、S2+とO2+の混合 (70.2 nm)の強度比は、それぞれ 39%から56%、55%から76%へと増加した。その一方で、S2+ (68.0 nm) に対するS+ (76.5 nm)、O+とO2+の混合(83.4 nm)の強度比は、それぞれ30%から24%、55%から49%へと減少した。
Ly-α (121.6 nm) より長い波長域では、トーラスの発光強度がジオコロナの散乱光の強度と同程度となり、S/Nが低下した。このため、硫黄と酸素の輝線のうちS/N > 2の部分のみを解析に用いた。プラズマ診断から、エウロパ軌道における電子密度は 246±30 cm3、冷たい電子の温度は 6.1±1.5 eV、高温電子(300 eVに固定)の割合は39%と求められた。イオン組成に関しては、イオ軌道からエウロパ軌道にかけて、電子に対するS3+の割合が6%から11%へと増加した一方、S+の割合は6%から2%へと減少した。動径方向外側ほどイオンの価数が大きくなっていることから、外側ほどイオンと高温電子の衝突によりイオン化が進んだ結果であると考えられる。
本研究の電子密度とS3+の組成は、Cassiniの観測結果よりも高い値だった。このことから、2015年の1月下旬に発生したイオの火山活動により、エウロパ軌道上のプラズマ密度とイオン組成が変動している可能性が示された。今後は、ひさき衛星でのデータを用いて、エウロパ軌道においてイオ火山活動の静穏期(2014年2月~4月)と活発期(2015年3月~5月)でプラズマ特性がどのように変化するかを調べ、イオプラズマトーラスにおける物質輸送に観測的な制約を与えたい。
ひさき衛星に搭載された極端紫外線分光器 (EXCEED) は、65 nm ~ 145 nm の波長帯で硫黄や酸素のイオンの輝線を観測している。木星磁気圏のプラズマの大部分は、衛星イオ (5.9 RJ) の火山性ガスを起源としている。イオプラズマトーラスの密度は、イオ軌道で最も濃く、動径方向外側に向かうほど希薄になっている。エウロパ軌道では発光強度が低いので、地球の放射線帯やジオコロナの影響を丁寧に取り除く必要がある。また、シグナル・ノイズ比 (S/N) を向上するため、ひさき衛星が日陰領域にいてジオコロナの発光強度が低いときのデータを、2015年3月1日から2015年5月14日までの約15,500分間にわたって積分した。この期間は、イオの火山活動が活発な時期を含んでいる。
観測される輝線の発光強度は、体積放射率が視線方向に沿って積分されたものである。体積放射率は、電子衝突によって励起されるトーラスのイオンの密度に比例し、衝突電子の密度・温度にも影響を受ける。本研究では、CHIANTI原子データベースを用いて計算されたモデルスペクトルと観測スペクトルのカイ2乗値を最小化することにより、観測データからプラズマパラメータを推定した。この方法は、プラズマ診断と呼ばれている。
ひさき衛星のデータを解析した結果、エウロパ軌道における硫黄と酸素のイオンの輝線を同定することに成功し、その発光強度はイオ軌道における強度の約2~6 %であった。イオ軌道とエウロパ軌道では輝線の強度比も変化していて、S2+ (68.0 nm) に対するS3+ (74.9 nm)、S2+とO2+の混合 (70.2 nm)の強度比は、それぞれ 39%から56%、55%から76%へと増加した。その一方で、S2+ (68.0 nm) に対するS+ (76.5 nm)、O+とO2+の混合(83.4 nm)の強度比は、それぞれ30%から24%、55%から49%へと減少した。
Ly-α (121.6 nm) より長い波長域では、トーラスの発光強度がジオコロナの散乱光の強度と同程度となり、S/Nが低下した。このため、硫黄と酸素の輝線のうちS/N > 2の部分のみを解析に用いた。プラズマ診断から、エウロパ軌道における電子密度は 246±30 cm3、冷たい電子の温度は 6.1±1.5 eV、高温電子(300 eVに固定)の割合は39%と求められた。イオン組成に関しては、イオ軌道からエウロパ軌道にかけて、電子に対するS3+の割合が6%から11%へと増加した一方、S+の割合は6%から2%へと減少した。動径方向外側ほどイオンの価数が大きくなっていることから、外側ほどイオンと高温電子の衝突によりイオン化が進んだ結果であると考えられる。
本研究の電子密度とS3+の組成は、Cassiniの観測結果よりも高い値だった。このことから、2015年の1月下旬に発生したイオの火山活動により、エウロパ軌道上のプラズマ密度とイオン組成が変動している可能性が示された。今後は、ひさき衛星でのデータを用いて、エウロパ軌道においてイオ火山活動の静穏期(2014年2月~4月)と活発期(2015年3月~5月)でプラズマ特性がどのように変化するかを調べ、イオプラズマトーラスにおける物質輸送に観測的な制約を与えたい。