日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS01] Outer Solar System Exploration Today, and Tomorrow

2025年5月30日(金) 09:00 〜 10:30 301B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:木村 淳(大阪大学)、佐柳 邦男 M(NASA Langley Research Center)、土屋 史紀(東北大学大学院理学研究科惑星プラズマ・大気研究センター)、丹 秀也(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、座長:芝池 諭人(大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 国立天文台)、古賀 亮一(名古屋市立大学)

10:15 〜 10:30

[PPS01-06] エンセラダス南極域のプリューム噴出期間の制約

*水沼 卓也1、太田原 裕都1中原 俊平1諸田 智克1 (1.東京大学)


キーワード:エンセラダス、プリューム

土星の衛星エンセラダスは, テクトニックな地形が多く確認されており, 地質活動が活発な天体である (e.g., Spencer & Nimmo, 2013). 南極域には「タイガーストライプ」と呼ばれる巨大な裂け目地形が存在し, そこから氷やガスのプリュームが噴出している (e.g., Goldstein et al., 2018). プリューム粒子の一部は宇宙空間へ放出されるが, 大部分はエンセラダスの表面に堆積し, 細粒子層を形成すると考えられている (e.g., Kempf et al., 2010). 数値計算により推定される単位時間あたりのプリューム粒子の堆積量 (以後, 堆積速度) の分布は, 反射スペクトルデータから推定されたエンセラダス表面の未変質の水氷分布と概ね整合することが報告されており (Southworth et al., 2019), 数値計算で推定された堆積速度分布で最近のプリューム粒子の堆積が生じていると考えられる. プリュームの噴出が地質学的タイムスケールで継続する場合, プリューム粒子の堆積によって小クレーターが選択的に消失すると考えられる. また, プリューム物質は内部海から直接供給されている可能性が高いため (e.g., Spencer et al., 2018), 堆積物の厚さを調べることでプリュームの噴出持続期間を推定できれば, 内部海の存続期間の制約につながる. 本研究では, kmサイズの小クレーターに着目し, その消失の程度を評価して堆積物の厚さを見積もることで, プリュームの噴出期間を制約することを目的とする.
本研究では, Cassini画像データを用いて同定されたクレーターデータベース (Kirchoff, 2020) を使用した. プリューム粒子の再堆積に関する数値計算研究 (Southworth et al., 2019) に基づき, 堆積速度の高い南緯45°西経45°付近のクレーターサイズ頻度分布を調査した. その結果, 直径3 km以下のクレーターにおいて, 直径4 km以上のクレーターよりもサイズ頻度分布の傾きが小さくなっていることがわかった. これは, 直径3 km以下の小クレーターがプリューム粒子の堆積によって消失している可能性を示唆する. 小クレーターの消失の程度を定量的に評価するため, 直径1 km以上のクレーター数密度に対する直径3 km以上のクレーター数密度の比を算出した. その結果, 南半球のcratered plainにおいて, クレーター数密度の比と推定堆積速度の間に弱い正の相関が見られた. これは, 直径3 km以下の小クレーターがプリューム粒子の堆積によって選択的に消失している可能性を支持する.
さらに, 小クレーター消失のメカニズムを解明するため, 数理モデルを用いて観測データの説明を試みた. 本モデルでは, クレーター形成はインパクターの衝突によって生じ, クレーターの埋没はプリューム粒子の堆積によってのみ進行すると仮定した. また, プリューム粒子の堆積速度は一定であり, それによりつくられる細粒子層の厚さがクレーターリムの高さに到達した時点でクレーターが消失すると仮定した. モデルのパラメータとして, 表面年代と消失するクレーターの最大サイズを設定し, 堆積速度が高いとされる南緯30°西経190°付近の領域 (領域①) および南緯45°西経50°付近の領域 (領域②) において, モデルのフィッティングを行った. その結果, モデルによって得られたクレーターサイズ頻度分布は観測データの特徴をよく再現し, これは, リム高さ程度の細粒子層が形成することでクレーターが消失していることを示唆する. また, 埋没クレーターの最大サイズは, 領域①で約2 km, 領域②で約3 kmと推定され, 埋没クレーターの最大サイズと推定堆積速度を基に計算した結果, プリューム粒子の堆積期間は約1 Gyrである可能性が示された.