日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS01] Outer Solar System Exploration Today, and Tomorrow

2025年5月30日(金) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:木村 淳(大阪大学)、佐柳 邦男 M(NASA Langley Research Center)、土屋 史紀(東北大学大学院理学研究科惑星プラズマ・大気研究センター)、丹 秀也(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

17:15 〜 19:15

[PPS01-P04] 炭酸塩への荷電粒子照射実験に基づくエウロパ表層におけるCO₂の生成過程の解明

*盧 清揚1木村 智樹1森岡 将生1吉岡 和哉1土屋 史紀2丹 秀也3 (1.東京理科大学、2.東北大学大学院理学研究科惑星プラズマ・大気研究センター、3.国立開発法人海洋研究開発機構)


キーワード:氷衛星、エウロパ、照射実験

木星の衛星エウロパは氷地殻の下に内部海と呼ばれる液体の海が存在しており[Kivelson. 2000; Paranicas et al. 2001,2002]、生命存在の可能性が示唆されている[Chyba et al. 2001]。カリレオ探査機搭載の近赤外分光撮像装置NIMSによって生命の構成元素である炭素を含む二酸化炭素がエウロパの表面で観測された [McCord et al. 1998]。 また近年、ジェイムズ・ズウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測により、エウロパ表層の反射率が二酸化炭素(CO₂)に対応する4.25μmと4.27μmの吸収構造を持つことが明らかになった。その吸収構造は内部海からの頻繁な水噴出が期待されるTara Regioに集中した分布を示した。このことから、エウロパ表層の二酸化炭素は内部由来の可能性が高いと考えられている[Trumbo et al. 2023; Villanueva et al. 2023]。木星磁気圏とエウロパ表層の相互作用によって、表出した内部海起源の物質が二酸化炭素を生成している可能性が高い[Jones et al. 2014]が、その詳細は未解明である。
そこで本研究では、エウロパ表層での二酸化炭素の生成過程を検証する目的で、二酸化炭素の起源物質の候補の一つである炭酸塩(炭酸ナトリウム)へ木星磁気圏プラズマを模した荷電粒子照射実験を行った。室温の炭酸塩サンプルへ電子照射し、照射中に脱ガスした二酸化炭素の分圧から生成率とyieldを計算した。また照射後にサンプル表層の近赤外スペクトルを測定した。10keV、フルエンス8.23 × 1018 e-/cm2 、フラックス1.52 × 1015 /cm2/s、90分間の電子照射での二酸化炭素の生成率は6.7 × 10-10 mol/sで、yield(sputter particles/incident particle)は1.2であった。yieldからエウロパ表層での実際のCO2の放出率を推定した結果、2.16 × 108 particles/cm2/sと見積もられた。また、異なるフルエンスで実験したところ、照射のフルエンスが小さくなるほど(2.67 × 1018 e-/cm2)二酸化炭素の生成率が高くなり(2.57 × 10-9 mol/s)、yieldも大きくなった(4.31)。近赤外スペクトルでは、二酸化炭素の吸収波長3.68μmと4.42μmに相対反射率(反射後/反射前)のピークを持ち、フルエンスが高くなるほどピークが高くなった (二酸化炭素による吸収減少に対応)、ピークの高さとフルエンスはほぼ線形で比例していた。これらは、照射によって炭酸塩が分解され二酸化炭素を生成し、それらが脱ガスしてサンプルから減少することを示している。今後は、電子に加えてイオン(O+,H+)の同時照射や低温(80K~130K)での照射実験を行い、二酸化炭素の生成率やスペクトルなどの結果を比較する予定である。本発表では上記の現状を報告する。