日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS01] Outer Solar System Exploration Today, and Tomorrow

2025年5月30日(金) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:木村 淳(大阪大学)、佐柳 邦男 M(NASA Langley Research Center)、土屋 史紀(東北大学大学院理学研究科惑星プラズマ・大気研究センター)、丹 秀也(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

17:15 〜 19:15

[PPS01-P08] Cassini 11+モデルの非CGF軌道再現性とLowes半径解析による土星内部構造: 検証と評価

*矢野 晴大1藤 浩明2 (1.京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻、2.京都大学大学院理学研究科附属地磁気世界資料解析センター)

キーワード:土星、固有磁場、Lowes半径、内部構造

本研究では,最新の土星固有磁場モデルであるCassini 11+(Cao et al., 2020)が,最適化に用いられたCGF軌道以外の軌道においても十分な再現性を有するかを検証するとともに,Lowes半径を用いた土星内部のダイナモ領域推定を試みた.Cassini 11+モデルでは,次数14までのゾーナル項だけからなる土星固有磁場モデルである.

Cassini 11+モデルは,長年にわたり土星圏で活動した惑星探査機Cassiniの最終軌道であるCassini Grand Finale (CGF)の土星近接磁場データのみで最適化されているため,非CGF軌道で得られた磁場計測データへの適用可能性が未検証であった.そこで,非CGF軌道におけるベクトル磁場データ実測値とモデル予測値との比較を行い,Cassini 11+モデルの再現性を定量的に評価した.その結果,Cassini 5他の過去モデルが使用した非CGF磁場データだけでなく,Cassini 11+及び過去モデルのどちらにも使用されていないベクトル磁場データに対しても,Cassini 11+モデルは過去モデルと同等かより良いフィットを与える事が分かった.尚,この検証は,土星磁気圏における外部磁場の主要項であるリングカレントの寄与を,Connerney et al. (1983)のmagnetodiscモデルパラメータをCassini磁場データを用いて更新した上で行なっている.

こうした検証によりCassini 11+モデルの高い有効性が確かめられた為,本研究では更にCassini 11+モデルに基づく土星マウエルスバーガースペクトルを求め,その低次項(次数6以下)のみ,高次項(次数7以上)のみ,或いは,全次数(次数14まで)を対象としてLowes半径(Lowes, 1974)をそれぞれ推定し,得られた値とこれまでに推定されている土星内部構造との対応を検討した.解析の結果,低次項だけから求めたLowes半径が約1/4土星半径であったのに対し,高次項或いは全次数を用いて推定したLowes半径はどちらも約0.6土星半径となり,最新の土星環地震学が示唆する拡散核半径と一致した(Mankovich et al., 2021).この事は,観測されたマウエルスバーガースペクトルが拡散核半径と第一義的に対応している可能性と,土星固有磁場の源は土星深部に存在する液体金属水素層である事の二つを示唆する.

土星固有磁場の平均エネルギー密度スペクトル次数依存性から推定した土星内部構造と,土星環地震学を始めとする他分野での構造推定結果との比較照合は今後行なう必要があるが,本成果は磁場観測に基づく土星内部におけるダイナモ活動領域の理解に寄与するものと考えられる.