日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS02] Regolith Science

2025年5月29日(木) 15:30 〜 17:00 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:和田 浩二(千葉工業大学惑星探査研究センター)、小林 真輝人(東京大学)、Michel Patrick(Universite Cote D Azur Observatoire De La Cote D Azur CNRS Laboratoire Lagrange)、Walsh Kevin J(Southwest Research Institute Boulder)、座長:小林 真輝人(東京大学)、磯邊 優奈(東京大学)


16:30 〜 16:45

[PPS02-05] レゴリスシミュラント粉体の摩擦帯電特性

*武田 晋弥1山中 千博1 (1.大阪大学)

はじめに
月面レゴリスは宇宙放射線や太陽プラズマの影響によって、表面昼側で約5~10V、夜側では約-50~-200Vに帯電しており[1]、レゴリス中の深さ約1mでも帯電している可能性が指摘されている[2]。そのような電場が存在する環境では、帯電した粒子は電場の影響を受け浮遊し、その挙動が変化すると考えられる。浮遊する粒子として、よく知られているレゴリスダスト以外に、微細な氷結晶が帯電した場合でも、電場によってその挙動は影響を受けるものと考えられる。

物質の摩擦帯電特性を表す指標としては、摩擦帯電列が広く知られている。摩擦帯電列とは、異なる物質を摩擦させた際に、どちらが正または負に帯電しやすいかを相対的な順序で示したものであり、文献では、地球の鉱物(多くはケイ酸塩、斜長石を含む)や有機物を含め定性的な指標として提示されているものがほとんどである。近年、様々な物質に対して定量的な帯電列指標が報告されているが[3]、月面に顕著なアノーソサイトなどの帯電列については、我々の知る限り報告がなかった。そこで我々は、アノーソサイトを含む月面レゴリスを構成する鉱物種ごとの摩擦帯電列を明らかにすること、また粒径サイズが摩擦帯電に与える効果を定量的に測定することを目的として、鉱物粉体各種の帯電特性の評価を行った。

実験
月レゴリスシミュラントを構成する鉱物/岩石であるアノーソサイト・玄武岩・イルメナイト・輝石・橄欖石[4]にラテライトを加えた6種類を実験に使用した。この6種類の試料を、篩を用いてそれぞれ粒径~500, 500~250 , 250~125 , 125~45µmの4種類に分類し、十分に乾燥させた状態で測定を行った。実験は、鉱物粉体がチューブ(内径4mm および10mm)を通過するときにチューブの内壁と接触することで帯電させる方法を採用した。チューブ内の粉体を、空気ポンプで吸引しつつ、チューブ自体を自作の貫通型ファラデーゲージ(長さ1m)内に装着することで、チューブ自体の帯電を測定するとともに、通過した粉体は、出口でもう一個のファラデーゲージに導き、分極した正負の電荷を同時に測定できるように工夫した。チューブの材質としては、乾燥させたテフロン・ガラス・ナイロン・塩化ビニルの4種類を用い、それぞれの材料との相対的な摩擦帯電を電荷量として評価した。この結果を基に、鉱物粉体の帯電特性を比較し、各鉱物粉体の帯電列を明らかにした。

結果
粉体がチューブ内を通過すると、粉体・チューブはそれぞれ正負に分極していることが見られた[図1]。さらに、チューブ材質を変えると得られる電荷量に違いが見られ、帯電傾向が異なることが明らかとなった。特に、全ての鉱物種において、テフロンチューブとの摩擦帯電では、他のチューブと比べて10倍以上高い電荷が得られることがわかった。以上の結果より、測定に用いた6種類の鉱物粉体の帯電列における位置づけを、テフロン、ガラス、ナイロンとの比較を通じて明確にすることができた。また、粒子サイズが帯電に与える影響についても、全ての鉱物種で粒径が小さいほど、摩擦帯電により多くの電荷が与えられる結果となった[図2]。

今回製作した装置を用いて、レゴリス粉体の帯電特性を定量的に評価することが可能となった。本研究により得られた成果は、月面環境におけるレゴリス粉体の帯電挙動を理解する上で重要であり、今後は月面での帯電現象の定量的予測や、月探査における帯電対策に繋がることが期待される。



[1] James R Phillips . et al. (2022) Electrostatic charging of the lunar surface. 51st International Conference on Environmental Systems, Saint Paul, MN.

[2] Jordan, A. P. et al. (2015) Dielectric breakdown weathering of the Moon's polar regolith. Journal of Geophysical Research: Planets, 120, 210-225.

[3] Haiyang Zou. et al. (2020). Quantifying and understanding the triboelectric series of inorganic non-metallic materials. Nature Communications, 11, 2093.

[4] Space Resources Technology社 鉱物サンプル

https://spaceresourcetech.com/products/lunar-constituent-mineral-samples?_pos=1&_psq=lunar-constituent-mine&_ss=e&_v=1.0