日本地球惑星科学連合2025年大会

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[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS03] 太陽系小天体:太陽系の形成と進化における最新成果と今後の展望

2025年5月30日(金) 10:45 〜 12:15 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:荒川 創太(海洋研究開発機構)、岡田 達明(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、吉田 二美(産業医科大学)、深井 稜汰(宇宙航空研究開発機構)、座長:荒川 創太(海洋研究開発機構)、岡田 達明(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、吉田 二美(産業医科大学)、深井 稜汰(宇宙航空研究開発機構)


12:00 〜 12:15

[PPS03-12] 太陽系の同位対比分布を説明する微惑星形成・移動過程

*渡邊 誠一郎1小林 浩2武市 智樹1宮村 尚典1 (1.名古屋大学大学院環境学研究科、2.名古屋大学大学院理学研究科)

キーワード:小惑星リュウグウ、太陽系物質の同位体三分性、惑星成長、重力散乱

隕石やリュウグウ・Bennu試料などに残された太陽系形成期のダスト粒子や年代学的情報は惑星形成理論とは整合していない.

まず,CAI貯蔵問題がある.太陽系最初期のCAI形成とコンドリュールの形成の間には約2 Myrの年代差があるが,両成分は機械的に数 cm以下のスケールまでよく混合されており,別々の微惑星からもたらされたとは考えにくい.理論的には原始惑星系円盤ガス中で1 mm程度の大きさに成長したダストは数千年で太陽方向へ落下してしまうため,圧力バンプなどダストを円盤中のある領域に保持する機構がなければCAIを粒子状態で1 Myr以上保持することは困難である.ダストが落下前に合体成長して微惑星となる状況を考えることもできるが,その場合は,CAIを含む微惑星上に後から集積することになるコンドリュールを十分均質に混合できるかという問題が生じる.

もう1つの問題は太陽系物質に見られる同位体比の三分性,すなわち隕石母天体やリュウグウ・Bennu試料がNC, CC, CIという安定同位体比が異なる3つのソースに整合的に区分されることをいかに説明するかということである.理論的には,ダストは成長段階で円盤中を動径方向に大きく移動するため,初期に円盤に空間的な同位体比の勾配があったとしても,母天体微惑星に集積するまでに機械的混合が進む可能性が高い.特に圧力バンプなどで広い領域のダストが狭いゾーンに集まると生成される母天体は異なる同位体比を持った粒子で構成されることになる.木星などの巨大ガス惑星の形成によって圧力バンプが複数形成されて,それぞれがNC, CC, CIの故郷となったという仮説が提唱されているが,そこにはガス惑星形成のタイミングという問題が生じる.理論的には微惑星形成さえできれば,惑星成長は比較的短期間で進むため,木星は太陽系形成後1 Myr以内に形成される (Kobayashi & Tanaka, 2023).しかし,そうなると円盤散逸も早くなり,隕石やリュウグウ試料から得られているCAI形成後4 Myr前後の水質変成時に析出した磁鉄鉱微粒子がガス円盤起源と考えられる強い磁場を記録していること(e.g., Nakamura et al., 2021)とは矛盾する.一方で木星形成が遅かった場合,太陽系形成後1 Myrに形成されたとされる鉄隕石にもNCとCCの区別が見つかっていることをどう説明するかは吟味が必要である.

こうした問題点の解明のポイントは微惑星形成過程にある.ダストから微惑星への成長過程は惑星形成論のボトルネックであり,さまざまな障壁があることが指摘されている.また、CAIやコンドリュールのような液滴粒子を考慮した合体成長モデルは存在しない.そこで,サブミクロン粒子の集合体だけでなく液滴粒子を混合した系の合体成長過程を考察することが必要である.それ同士が合体成長できない液滴粒子は微惑星形成の妨げになるが,一方で長時間の粒子保持には好適である.また,ひとたび微惑星が形成されれば,液滴粒子も捕獲されて更なる成長に寄与できる.こうした計算結果を隕石やリュウグウ,Bennuの母天体の情報と比較することで,CAI貯蔵問題と同位体三分性の起源を解明することができる.

ペブルの成長・落下過程を追跡することで,初期の同位体空間分布がどの程度均質化されるを数値シミュレーションで定量的に検証する.ダストに対してその初期動径位置に対して決まる同位体比指標を与えた上で,合体成長と動径移動を計算することで,各領域で形成される微惑星の平均同位体比指標を求める.圧力バンプのない円盤と圧力バンプを置いた円盤において,シミュレーションを行い結果を比較する.また,天体の質量に対する同位体比指標の依存性を調べる.さらに,微惑星に集積するダストの質量分布さらに巨大惑星の外側への移動に伴う微惑星の散乱過程を軌道計算で追って,最終的に小惑星帯にもたらされる状況を吟味した.ダスト集合体に加え液滴粒子が混ざった系の合体成長シミュレーション手法についても議論する.