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[PPS03-P02] 岩石の吹き飛ばしを考慮した彗星から小惑星への進化モデル
キーワード:彗星、小惑星、長期進化、数値計算
太陽系に存在する小天体である彗星と小惑星は、前者は主に氷からなり、後者は主に岩石からなるとして古典的には明確に区別されてきた。彗星が太陽に近づいて氷が昇華すると、ガスと、ガスに巻き込まれた岩石などが彗星核の表面から放出される。それらが太陽光を散乱することで長大な尾が生じるなどの活動性(彗星活動)を示す。一方、小惑星はこのような彗星活動を示さない。しかしながら近年では、小惑星的な軌道をもちながら彗星活動をする活動的小惑星などが発見されたことにより、両者の境界が曖昧になりつつある。その原因の一つとして、彗星が小惑星へと進化する過程の存在が挙げられる[1]。このような進化の途中段階にある小天体は、彗星/小惑星遷移天体と呼ばれる。
従来の進化モデル[2]では、水氷と岩石の欠片が一様に分布した多孔質な球状の彗星核から、昇華により水氷が失われ、岩石が彗星核の重力により彗星核表面に集積して岩石のみからなる層(ダストマントル)を形成し、水氷の昇華と岩石の集積が進んで彗星核全体が収縮することで、最終的に岩石のみで構成される小惑星となる過程が調べられた。しかし,従来の進化モデル[1]は、流出する水蒸気によって岩石が吹き飛ばされる過程を考慮していなかった。水氷が昇華したあと、その場に残された岩石には、流出する水蒸気が及ぼす彗星核外向きの力であるガス抗力と、彗星核の重力による中心向きの力が作用している。水蒸気流によるガス抗力が彗星核の重力よりも強い場合、その岩石は彗星核から吹き飛ばされる。このような岩石吹き飛ばし過程はダストマントルの形成や彗星活動に影響するため、彗星核の長期進化モデルにおいて岩石吹き飛ばし過程を考慮することは重要である。
本研究では、水蒸気流に巻き込まれた岩石の彗星核内部における移動、および、彗星核表面からの放出をモデル化し、彗星から小惑星への長期進化の数値計算モデルに組み込んだ。重力は岩石の質量に、ガス抗力は岩石の断面積に比例するため、小さい粒子は吹き飛びやすく、大きい粒子は吹き飛びにくい。そこで、異なるサイズの岩石を想定し、サイズごとに岩石にかかるガス抗力と重力を計算して、その岩石が吹き飛ぶかどうかを判定した。彗星核内部の岩石はガス抗力により空隙を通り抜けて外向きに移動しうる。このとき、空隙より小さい岩石は移動可能であるが、大きい岩石はその位置より外側の領域への移動ができない。本モデルでは、空隙を通ることができるサイズの岩石が吹き飛び可能であると判定された場合に、彗星核外側方向へ移動することを考慮した。あるサイズの岩石が外側方向に移動できるかどうかに対しては、その外側に存在するダストのサイズ分布に基づいた判定基準を設定した。以上を考慮した彗星の長期進化の数値計算を行い、小惑星への進化のタイムスケールや、天体表面に残される岩石のサイズ分布について調べた。
岩石吹き飛ばしを考慮した数値計算の結果、彗星核内部の氷の昇華に伴い、小さい岩石は水蒸気流に巻き込まれて吹き飛ばされるため表面にはほとんど残らず、大きい岩石は吹き飛ばされないため彗星核表面付近に残るという結果が得られた。水氷の昇華が進行してダストマントルが厚くなると、水蒸気流が弱くなり岩石を吹き飛ばす力も小さくなるため、氷が完全に枯渇した後の彗星核中心部には小さいサイズの岩石も残されていた。この結果は、彗星核から進化した小惑星の表面は、そうでない小惑星と比べ、より大きな粒子で覆われていることを示唆している。
[1] 脇田茂, 瀧哲朗, 伊藤孝士. (2019). 日本惑星学会誌 遊・星・人, Vol 28, No.2, pp.124-139.
[2] Miura, H. et al. (2022), Astrophys. J. 925, L15.
従来の進化モデル[2]では、水氷と岩石の欠片が一様に分布した多孔質な球状の彗星核から、昇華により水氷が失われ、岩石が彗星核の重力により彗星核表面に集積して岩石のみからなる層(ダストマントル)を形成し、水氷の昇華と岩石の集積が進んで彗星核全体が収縮することで、最終的に岩石のみで構成される小惑星となる過程が調べられた。しかし,従来の進化モデル[1]は、流出する水蒸気によって岩石が吹き飛ばされる過程を考慮していなかった。水氷が昇華したあと、その場に残された岩石には、流出する水蒸気が及ぼす彗星核外向きの力であるガス抗力と、彗星核の重力による中心向きの力が作用している。水蒸気流によるガス抗力が彗星核の重力よりも強い場合、その岩石は彗星核から吹き飛ばされる。このような岩石吹き飛ばし過程はダストマントルの形成や彗星活動に影響するため、彗星核の長期進化モデルにおいて岩石吹き飛ばし過程を考慮することは重要である。
本研究では、水蒸気流に巻き込まれた岩石の彗星核内部における移動、および、彗星核表面からの放出をモデル化し、彗星から小惑星への長期進化の数値計算モデルに組み込んだ。重力は岩石の質量に、ガス抗力は岩石の断面積に比例するため、小さい粒子は吹き飛びやすく、大きい粒子は吹き飛びにくい。そこで、異なるサイズの岩石を想定し、サイズごとに岩石にかかるガス抗力と重力を計算して、その岩石が吹き飛ぶかどうかを判定した。彗星核内部の岩石はガス抗力により空隙を通り抜けて外向きに移動しうる。このとき、空隙より小さい岩石は移動可能であるが、大きい岩石はその位置より外側の領域への移動ができない。本モデルでは、空隙を通ることができるサイズの岩石が吹き飛び可能であると判定された場合に、彗星核外側方向へ移動することを考慮した。あるサイズの岩石が外側方向に移動できるかどうかに対しては、その外側に存在するダストのサイズ分布に基づいた判定基準を設定した。以上を考慮した彗星の長期進化の数値計算を行い、小惑星への進化のタイムスケールや、天体表面に残される岩石のサイズ分布について調べた。
岩石吹き飛ばしを考慮した数値計算の結果、彗星核内部の氷の昇華に伴い、小さい岩石は水蒸気流に巻き込まれて吹き飛ばされるため表面にはほとんど残らず、大きい岩石は吹き飛ばされないため彗星核表面付近に残るという結果が得られた。水氷の昇華が進行してダストマントルが厚くなると、水蒸気流が弱くなり岩石を吹き飛ばす力も小さくなるため、氷が完全に枯渇した後の彗星核中心部には小さいサイズの岩石も残されていた。この結果は、彗星核から進化した小惑星の表面は、そうでない小惑星と比べ、より大きな粒子で覆われていることを示唆している。
[1] 脇田茂, 瀧哲朗, 伊藤孝士. (2019). 日本惑星学会誌 遊・星・人, Vol 28, No.2, pp.124-139.
[2] Miura, H. et al. (2022), Astrophys. J. 925, L15.
