日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS04] Mercury Science and Exploration

2025年5月25日(日) 10:45 〜 12:15 304 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:村上 豪(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、相澤 紗絵(Laboratoire de Physique des Plasmas, CNRS)、原田 裕己(京都大学理学研究科)、鎌田 俊一(北海道大学 理学研究院)、座長:村上 豪(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、原田 裕己(京都大学理学研究科)、鎌田 俊一(北海道大学 理学研究院)

11:15 〜 11:30

[PPS04-09] 水星表層K存在度の空間分布の解析:表層-大気相互作用による熱的再分布の検証

★招待講演

*平田 佳織1,2臼井 寛裕2、Peplowski Patrick3鈴木 雄大2 (1.東京大学、2.JAXA 宇宙科学研究所、3.ジョンズ・ホプキンズ大学 応用物理研究所)

キーワード:水星、表面組成、揮発性元素、熱脱離、ガンマ線分光法

MESSENGER探査機によるガンマ線分光観測から、水星表面に地球型惑星の中でも最も高い濃度で揮発性元素が存在することが報告されてきた[1,2]。これはMESSENGER探査機の南北非対称軌道による北半球高緯度域に集中した観測データの取得を反映している可能性があり、水星全球を代表したK/Th比を推定するためにはその空間分布を理解する必要がある。ガンマ線分光データは低いシグナル-ノイズ比と広い観測視野に起因する低空間解像度という特徴があり、水星表面におけるKやThの存在度の空間分布は詳細に理解されていない。水星表面のK, Th組成を決定する要因として、天体衝突による外来物質の供給[3]と表面温度を反映した揮発性元素の再分布[4]が考えられるが、両者のうちどちらが支配的であるかによって、再現される空間分布は異なると予測される。
本研究では、水星表面におけるK, Th存在度の空間分布を明らかにするために、表面組成を決定する支配的なプロセスを理解することを目的とする。低空間解像度データから予め定義した表面領域に相当する元素組成を推定する手法[4]を用いてガンマ線分光データの解析を行い、地質区分に対応する表面K存在度を推定した。
若い年代に形成された平原領域のうち、北部平原で最も高いK存在度が示された一方で、カロリス平原では最も低いK存在度が示された。古い年代に形成された初期地殻と平原で、Th存在度に大きな多様性は見られなかった。推定された空間多様性は、天体衝突による外来物質供給から予測される傾向とは反する傾向を示した。一方で、K存在度と表面温度には負の相関が見られ、熱的際分配仮説と整合的であった。このことは、現在の水星表面におけるK存在度の空間分布が外部物質供給よりも表層温度環境を支配的に反映していることを示唆した。また、北半球における平均K/Th比は、従来推定よりも低い4800±600と計算され、水星表面さらにはバルク水星における揮発性元素存在量が従来想定されていたよりも低い可能性があることが示唆された。

[1]Peplowski et al., 2011, Science, 333, 6051, 1850-1852. [2]Peplowski et al., 2012, JGR, 117, E12, 2012JE004141. [3] Hyodo et al., 2021, Icarus, 354, 114064. [4]Peplowski et al., 2014, Icarus, 228, 86-95.