日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS06] 惑星科学

2025年5月26日(月) 09:00 〜 10:30 展示場特設会場 (3) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:冨永 遼佑(東京科学大学 理学院地球惑星科学系)、田畑 陽久(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)、小林 真輝人(東京大学)、辰馬 未沙子(理化学研究所)、座長:吉田 辰哉(東北大学)、田畑 陽久(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)

09:00 〜 09:15

[PPS06-06] クレーター形態から推測する固体天体内部強度:レゴリスに覆われた基盤岩標的に対するクレーター形成実験

*柿木 玲亜1荒川 政彦1保井 みなみ1長谷川 直2 (1.神戸大学大学院理学研究科、2.宇宙航空研究開発機構)

キーワード:クレーター、層構造、内部強度

天体内部を構成する物質の物性や化学組成を推定することは、固体天体の起源や進化を理解するうえで重要な情報であり、それらの推定のためには、天体の内部構造が重要な手がかりとなる。これまで、天体の内部構造の探査として、地震波探査や電磁波探査などの大規模な探査が行われてきた。一方で、探査機の撮像技術は向上しており、固体天体表面の詳細な地形がわかるようになってきた。固体天体の内部構造の推定のために注目されている特徴として、中央にピットと呼ばれる深い孔が見られるクレーター(同心円型クレーター)が挙げられる。例えば、はやぶさ2探査機が小惑星リュウグウに形成したSCIクレーターでは、クレーターの底に中央ピットが存在した。この結果から、リュウグウの表層には、結合強度を持たないレゴリス層の下に、強度の大きい(数百Pa)レゴリス層もしくは基盤層が存在している可能性が考えられている。このように、クレーター形態は固体天体の内部構造を推定する上で有効な手がかりとなると考えられる。しかしながら、層構造標的に対するクレーター形成実験を行った例は限られており、層構造標的におけるクレータースケーリング則は未解明である。
本研究では、クレーター形態の特徴から固体天体の内部強度を推定する手法を開発することを最終目標と定める。しかしながら、クレーターサイズに対する層構造の影響は未解明であり、特に各層の層の厚さと強度の影響が分かっていない。したがって、本研究ではレゴリスで覆われた基盤を持つ固体天体のクレーター形成過程を調べることを目的として、層構造を持つ固体天体表層を模擬した標的へのクレーター形成実験を行った。この実験において、クレーターサイズやその形態、クレーター形成過程に対して基盤層が与える影響を調べた。
衝突実験は、宇宙科学研究所の縦型二段式軽ガス銃を用いて行った。基盤層には、混合比を変化させた砂・石膏混合物を用いた。作成した試料の強度は20.4-364kPaである。基盤層を覆う粒子層として、粒径100µmの石英砂を用い、その層厚は0-100mmである。弾丸は直径1または2mmのアルミ球であり、衝突速度は2km/sである。実験の様子は標的真上から可視光高速カメラと赤外高速カメラ、真横から可視光高速カメラで撮影した。
結果、クレーター形態は粒子層の厚みの減少に伴い、お椀型(Bタイプ)から平底型(Fタイプ)、同心円型(Cタイプ)へと変化した。FタイプとCタイプの境界となるような、弾丸直径で規格化した粒子層厚さは、基盤層強度の増加に伴い減少したが、FタイプとBタイプの境界となる規格化粒子層厚さは、基盤層強度に依存しなかった。また、トランジェントクレーターはFタイプだが最終クレーターはBタイプとなるようなクレーター(FBタイプ)の存在が確認された。FBタイプクレーターが見られるような規格化粒子層厚さの範囲は、基盤層強度に依存しなかった。
Cタイプクレーターにおいて粒子層に形成されるクレーターサイズは、FタイプやBタイプに比べて小さく、粒子層厚さの減少に伴い減少した。また、クレーターサイズは基盤層強度に依存しなかった。無次元クレーター半径πRと、同じ衝突条件において均質石英砂標的に形成される無次元クレーター半径πR∞の比は、Cタイプクレーターの場合、規格化粒子層厚さの減少に伴い減少した。一方、FまたはBタイプクレーターの場合1に近い値となった。基盤層に形成されるピットは、粒子層厚さの増加に伴い減少した。すなわち、無次元ピット半径πRと、同じ衝突条件において、均質基盤層標的に形成される無次元ピット半径πR0の比は、規格化粒子層厚さの増加に伴い減少した。ピット半径の減少率は、基盤層強度に依存しなかったが、モルタル層に覆われた玄武岩に対して求められたピット半径減少率 (Dohi et al. (2012))とは異なっており、最表層の強度に対して依存する可能性がある。
このように求められた粒子層に形成されたクレーターと基盤層に形成されたピットのスケーリング則から基盤層強度を求める経験則を導いた。
最後に、この経験則を月のCタイプクレーター(23.455˚E, 0.697˚N)に応用した。岩石質のインパクターが15km/sの速度で月表面に衝突したと仮定すると、基盤層強度は0.92MPaと求められた。この強度は月のメガレゴリス層の強度を反映していると考えられる。