日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS06] 惑星科学

2025年5月26日(月) 10:45 〜 12:15 展示場特設会場 (3) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:冨永 遼佑(東京科学大学 理学院地球惑星科学系)、田畑 陽久(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)、小林 真輝人(東京大学)、辰馬 未沙子(理化学研究所)、座長:澤田 涼(東京大学)、小林 真輝人(東京大学)

11:00 〜 11:15

[PPS06-12] 氷微惑星の集積と熱進化

佐藤 龍成1、*木村 淳1寺田 健太郎1佐々木 晶1 (1.大阪大学)

キーワード:微惑星、氷天体、進化

氷微惑星の内部熱進化は多様であったことがわかってきた。例えば、小惑星探査機はやぶさ2が得たサンプルが約300 K の低温環境で水質変成を受け、リュウグウ物質は均質であると推定される点は、リュウグウ母天体は低温で未分化な氷微惑星であった考えられる。一方、炭素質コンドライトと類似した同位体比を持つ鉄隕石も確認されている。炭素質コンドライトの母天体も氷微惑星だと考えられていることから、この鉄隕石の存在は氷微惑星内部が金属融点を超えて昇温したことを意味する.このように,氷微惑星は熱的に多様な進化を経たことが明らかになってきているが、その理論的説明はまだ十分ではない。氷微惑星の進化においては、岩石と水が共存することによる物性の多様性や、含水鉱物は流動性が大きく対流熱輸送も有意であり得ること、昇温に伴う氷の融解や水質変成および脱水反応と、それに伴う内部構造の形成といった変化が、集積による天体成⾧と衝突加熱を経ながら起こるように、様々な素過程が複雑に共存する。しかしながら、氷微惑星の熱進化を扱った先行研究では、これらの素過程を部分的に数値モデルへ導入したにとどまっている。本研究ではこれらの素過程を全て考慮した数値モデルを新たに構築し、初期温度70 K、初期半径1 kmから集積成⾧する氷微惑星の内部熱進化をCAI形成後1億年にわたって数値シミュレーションで追跡した.計算においては、最終半径(10-1000 km)、集積開始時期 (CAI 形成から1.0, 2.0 Myr 後に集積開始) 、集積期間 (0.4, 4.0Myr)、集積モード (β=0、2) をパラメータとして場合分けし、内部温度構造の変化や最高到達温度が取り得る違いに着目して熱進化を見直した.
計算の結果、一般に、最終半径が大きいほど内部の温度上昇が高い一方で、集積を特徴付ける因子に強く依存することが分かった。例えば、CAI 形成からできるだけ早期に天体サイズが大きくなるほど内部の昇温は大きくなり、内部が様々な変成を経て構造を多様化させる。具体的には、CAI 形成から1.0 Myr 後に集積を開始し、0.4 Myr の集積期間においてβ=0(線形成⾧)の集積モードで最終半径100 km まで成⾧する場合は、微惑星深部の温度がFe-FeS 共融点(~1,250 K)に達する。一方で最終半径が10 kmにとどまる場合は、内部の最高温度は約400 Kに留まる。同様の集積開始時期と集積期間においてβ=2(暴走的成⾧)の集積モードで成長する場合は、最終半径が100 kmの場合は最高温度が800 Kにとどまる。集積開始時期をCAI 形成から2.0 Myr 後に遅らせた場合は、最終半径が100 kmの場合に600 K までしか昇温しない。また、集積期間を4.0 Myr に延ばした場合は、最終半径が500 km以上に達する場合は中心付近のみが1,000 Kを超えて昇温し、表層付近での衝突加熱による昇温があらわれる。CAI 形成から天体サイズが十分大きくなるまでの時間が⾧すぎると、すでに放射性同位体が枯渇した素材ばかりが集まるために昇温できないものと解釈できる。これらの結果は、微惑星の最終半径や集積時期・期間・モードの違いに応じて、氷微惑星が多様な熱進化をたどることを意味する。計算結果と、探査やサンプル分析の結果とを照らし合わせると、CAI 形成から1 Myr 後に集積が始まり、4 Myr かけて半径50 km まで線形成⾧した場合は内部昇温が低いためリュウグウ母天体に進化し、同様に0.4 Myr かけて半径200 km 以上まで線形成⾧した場合は鉄隕石母天体に進化したと考えられる。また、CAI 形成から1.0 Myr 後に集積開始し0.4 Myr かけて線形または暴走的成⾧、もしくはCAI 形成から2.0 Myr 後に集積開始し0.4 Myr かけて暴走的成⾧し現在の半径250 km に達した天体の内部構造は、土星衛星エンセラダスに類似する。このように、本研究の結果は氷微惑星の熱進化を統一的に説明するものであり、氷微惑星に対する直接探査計画であるLucy ミッション (NASA) によって得られる観測結果と比較することで、氷微惑星の熱進化を実証的に理解することにつながる。