日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS06] 惑星科学

2025年5月26日(月) 10:45 〜 12:15 展示場特設会場 (3) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:冨永 遼佑(東京科学大学 理学院地球惑星科学系)、田畑 陽久(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)、小林 真輝人(東京大学)、辰馬 未沙子(理化学研究所)、座長:澤田 涼(東京大学)、小林 真輝人(東京大学)

11:15 〜 11:30

[PPS06-13] 巨大惑星の外側移動での微惑星散乱によるC型小惑星の起源の統計的推定

*武市 智樹1渡邊 誠一郎1 (1.名古屋大学環境学研究科)

キーワード:惑星形成論、原始惑星系円盤、C型小惑星、惑星移動

小惑星探査機はやぶさ2によって探査されたC型小惑星リュウグウは,帰還サンプル分析の結果,炭酸塩鉱物やCO2に富む流体包有物が見つかり (Nakamura et al., 2021),母天体はCO2スノーラインの外側で形成された後,巨大惑星の重力散乱によって内側に運ばれたと推定されている.Raymond & Izidoro (2017) は,土星以遠を起源とした氷微惑星について,巨大惑星の成長・移動による散乱と,散逸する原始惑星系円盤のガス抵抗を受ける場合の軌道進化を数値軌道計算によって調べた.結果,木星と土星がともに内外に移動するGrand Tackモデルを採用した場合に,広い範囲の氷微惑星が惑星重力によって散乱され,その一部が小惑星帯や地球型惑星領域へ移動することを示した.しかし,Grand Tackモデルは土星が現在の質量を超えて成長するという問題点が近年指摘され,疑問視されている (Tanaka, 2023).そのため氷微惑星の輸送は,木星ではなく,主に土星と氷惑星の外側への軌道移動によって駆動された可能性を考察する.氷惑星が内側に移動する場合の氷微惑星の小惑星帯への輸送率は近年,Nesvorný, et al. (2024) によって調べられたが,氷惑星が内側へ移動した明確な証拠は現在の太陽系にはなく,現実的でない.そこで本研究は,氷惑星が現在の位置より内側で形成され,成長しながら外側へ移動するシナリオに注目し,スーパーコンピュータを用いて氷微惑星の大規模な軌道計算を行った.そのうえで,惑星の成長・移動,円盤ガス散逸のパラメータ変化に対する,氷微惑星の小惑星帯などへの移動率の依存性を議論し,初期太陽系進化モデルの範囲を推定している.
惑星の成長・移動条件としては,木星の成長終了時間τJをパラメータとして,内側の惑星から成長・移動が起こるように各惑星の成長・移動時間をτJに連動させた (ただし木星のみ移動させない).円盤ガス進化は,粘性降着による指数関数的な散逸 (時刻τgで計算開始時の1/e) に加え,太陽X線照射による光蒸発で消失 (時刻τPE) することも考慮した.
標準的なX線照射の場合 (τJg=0.8 Myr, τPE=3.2τg =2.56 Myr),氷微惑星は外側小惑星帯 (2.5–3.2 au) よりも内側小惑星帯 (1.8–2.5 au) やさらに内側の地球型惑星領域に多く分布した (Fig.1).軌道の解析から,外側小惑星帯で一旦軌道が安定化した氷微惑星のほとんどは,ガス散逸に応じて内側に移動する土星の永年共鳴によって離心率が増大し,ガス抵抗を受けて内側に輸送されたことが分かった.現在の太陽系ではC型小惑星は外側小惑星帯に多く存在するため,この結果は現在の軌道分布とは整合しない.X線照射が強い場合 (τPE=2τg =1.6 Myr),永年共鳴の影響は小さくなる.さらに,ガス散逸が遅い場合 (τg=1.5τJ, 2τJ),小惑星帯への移動率は外側・内側に依らず増加傾向であった.ただし,木星・土星の成長に対してガス円盤が過度に長期間残存することは非現実的である.
発表では惑星の成長・移動条件を変えた計算も含めて,氷微惑星の移動率から太陽系進化の制約について議論する.