16:00 〜 16:15
[PPS06-23] 原始惑星系円盤における巨大惑星が引き起こす衝撃波加熱とスノーラインの移動
キーワード:流体力学、原始惑星系円盤、惑星円盤相互作用
地球をはじめとする岩石を主成分とする惑星は,原始惑星系円盤の中のスノーライン(氷が昇華する軌道)より内側の領域で形成されたと広く考えられている.原始惑星系円盤の温度構造を解明し,スノーラインの位置を理解することは,岩石惑星の形成を知るために不可欠である.磁気流体力学的な円盤降着を考慮した近年の円盤温度モデル (Mori et al. 2021; Kondo et al. 2023) によると,円盤内部は従来のモデルの予想よりも低温であり,太陽型星の周囲の円盤のスノーラインは現在の地球軌道より内側に存在する可能性がある.このことは,現在の地球軌道において,氷ダストが存在することにより岩石惑星の形成が困難になるという問題を提起する.
本研究では,これまでの円盤温度モデルで無視されていた加熱源の1つである,巨大惑星の引き起こす衝撃波による加熱に着目する.太陽系物質の同位体組成の二分性 (e.g., Warren 2011; Kruijer et al. 2020) は,原始太陽系円盤において木星が早期に形成した可能性を示唆する.円盤中にこのような巨大惑星が存在すると,螺旋状の密度波(スパイラル)が円盤を伝播する.スパイラルの密度波が衝撃波化すると,衝撃波が円盤を加熱する. Ziampras et al. (2020) は,惑星をもつ円盤の流体シミュレーションで円盤温度進化も同時に計算し,中心星から数天文単位 (au) の軌道に木星質量の惑星が存在すると,惑星近傍や惑星より内側の領域の円盤温度が上昇しうることを示した.Ono et al. (2025) は,衝撃波をまたいだエントロピーの増加を測定することで,巨大惑星の軌道付近にある衝撃波がもたらす円盤加熱率を求めた.しかし,巨大惑星からより離れた円盤内側領域での衝撃波加熱率はこれまで調べられていなかった.
本研究では,巨大惑星のつくるスパイラルがより内側の円盤領域の温度構造やスノーラインの位置に果たす役割を,以下の2段階に分けて調べた.まず,巨大惑星が存在する円盤に対して,巨大惑星の10分の1の軌道半径まで計算領域を広げた2次元流体計算を行い,内側領域に生じるスパイラル衝撃波がもたらす加熱率を測定した.さらに,得られた衝撃波加熱率分布を用いて,降着加熱が非効率な円盤の動径温度分布をモデル計算し,巨大惑星による円盤の衝撃波加熱がスノーラインの位置を変化させるかどうかを検証した.
2次元流体計算の結果,巨大惑星より内側の円盤領域に,5本以上のスパイラルの存在を確認した.例えば巨大惑星が5 auの軌道(現在の木星軌道)にあると,1 auの軌道(現在の地球軌道)では第4波,第5波が円盤加熱に最も寄与する.第1波から第5波までの衝撃波加熱率の和は,惑星軌道からの距離と惑星質量の簡単なべき関数で近似できることもわかった.温度分布のモデル計算からは,木星質量の惑星が円盤内の5 auの軌道に形成されると,第4波,第5波による円盤加熱によってスノーラインは1 auの軌道より外側へ移動することがわかった.このことは,原始太陽系円盤において木星が早期に形成したことにより,地球軌道付近において水に枯渇した岩石惑星の形成が実現した可能性を示唆する.
本研究では,これまでの円盤温度モデルで無視されていた加熱源の1つである,巨大惑星の引き起こす衝撃波による加熱に着目する.太陽系物質の同位体組成の二分性 (e.g., Warren 2011; Kruijer et al. 2020) は,原始太陽系円盤において木星が早期に形成した可能性を示唆する.円盤中にこのような巨大惑星が存在すると,螺旋状の密度波(スパイラル)が円盤を伝播する.スパイラルの密度波が衝撃波化すると,衝撃波が円盤を加熱する. Ziampras et al. (2020) は,惑星をもつ円盤の流体シミュレーションで円盤温度進化も同時に計算し,中心星から数天文単位 (au) の軌道に木星質量の惑星が存在すると,惑星近傍や惑星より内側の領域の円盤温度が上昇しうることを示した.Ono et al. (2025) は,衝撃波をまたいだエントロピーの増加を測定することで,巨大惑星の軌道付近にある衝撃波がもたらす円盤加熱率を求めた.しかし,巨大惑星からより離れた円盤内側領域での衝撃波加熱率はこれまで調べられていなかった.
本研究では,巨大惑星のつくるスパイラルがより内側の円盤領域の温度構造やスノーラインの位置に果たす役割を,以下の2段階に分けて調べた.まず,巨大惑星が存在する円盤に対して,巨大惑星の10分の1の軌道半径まで計算領域を広げた2次元流体計算を行い,内側領域に生じるスパイラル衝撃波がもたらす加熱率を測定した.さらに,得られた衝撃波加熱率分布を用いて,降着加熱が非効率な円盤の動径温度分布をモデル計算し,巨大惑星による円盤の衝撃波加熱がスノーラインの位置を変化させるかどうかを検証した.
2次元流体計算の結果,巨大惑星より内側の円盤領域に,5本以上のスパイラルの存在を確認した.例えば巨大惑星が5 auの軌道(現在の木星軌道)にあると,1 auの軌道(現在の地球軌道)では第4波,第5波が円盤加熱に最も寄与する.第1波から第5波までの衝撃波加熱率の和は,惑星軌道からの距離と惑星質量の簡単なべき関数で近似できることもわかった.温度分布のモデル計算からは,木星質量の惑星が円盤内の5 auの軌道に形成されると,第4波,第5波による円盤加熱によってスノーラインは1 auの軌道より外側へ移動することがわかった.このことは,原始太陽系円盤において木星が早期に形成したことにより,地球軌道付近において水に枯渇した岩石惑星の形成が実現した可能性を示唆する.