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[PPS06-P10] 可視近赤外観測で探るタイタン大気の時間変動

キーワード:タイタン、地上望遠鏡、大気
土星衛星タイタンは地表で1.46気圧に達する分厚い大気を持つ.窒素が95 %以上,メタンが1-5 %の還元的な大気は,生命誕生・酸化イベント前の原始地球大気に類似しており,生命誕生につながる化学反応が現在でも続いていると考えられている.上層大気においてメタン・窒素分子は光解離・電離され,有機物エアロゾル(ソリン)が生成し全球を覆うヘイズ層を形成する.ヘイズ層は可視波長において光学的に厚く,地表まで到達する波長は赤外より長波長域に限られる.タイタンは公転運動(約16日周期)の間に土星磁気圏プラズマシートを通過し,それに伴い大気に降り注ぐ高エネルギー粒子数が増加する.このときタイタン大気中ではメタンの消費及びソリンの生成反応が促進すると考えられる.土星磁気圏がタイタン大気に及ぼす影響は,タイタン熱圏のメタン混合比が1.1-2.4 %の間で変動すること(Vervack et al., 2004),プラズマシート内においてタイタン熱圏の温度がプラズマローブ内より平均29 K高い(Westlake et al., 2011)ことが報告されている.しかしながら公転周期全体をカバーするモニタリング観測は未だに実施されておらず,公転周期内で生じるタイタン大気の時間変動は不明である.また太陽風動圧が大きい場合,タイタン軌道は土星磁気圏バウショックの外側に存在することが観測され(Feyerabend et al., 2015),このとき太陽風粒子がメタンの消費及びソリンの生成反応が促進すると考えられるが,太陽風動圧増加前後を含むモニタリング観測はなされておらず,太陽の活動に関連するタイタン大気の時間変動は明らかにされていない.
本研究はタイタン公転運動及び太陽活動に関連するタイタン大気の時間変動の解明を目的とする.北海道大学が所有するピリカ望遠鏡のマルチスペクトル撮像装置(MSI)(Watanabe et al., 2012)を用いて,2021年から2024年にわたりメタン吸収波長(727,889 nm)を含む多波長撮像観測を行った.得られた観測データから反射率とその時間変動を導出した.また導出した反射率を大気放射伝達モデルと比較し,メタン吸収量及びヘイズ層の光学的厚さを定量した.その結果,727 nmにおいては反射率の平均値は0.1549であり,これは先行研究(Karkoschka, 1994)の観測値(~0.16)と整合的であった.727 nmにおける反射率は標準偏差0.0151の変動があり,近土点で小さい傾向が見られた.この要因として土星磁気圏プラズマシートから降り注ぐ高エネルギー粒子数が増加した,または太陽風動圧が強い場合降り注ぐ太陽風粒子が増加したことが考えられる.タイタンがプラズマシート内またはバウショック外にあるとき,高エネルギー粒子数が増加し,メタンが消費されソリンが生成されるため,メタン柱密度の減少とメタン吸収波長における反射率の上昇が考えられる.本発表では導出した反射率の変動及び考えられる要因を比較し,公転運動に関連するタイタン大気の時間変動について議論する.
本研究はタイタン公転運動及び太陽活動に関連するタイタン大気の時間変動の解明を目的とする.北海道大学が所有するピリカ望遠鏡のマルチスペクトル撮像装置(MSI)(Watanabe et al., 2012)を用いて,2021年から2024年にわたりメタン吸収波長(727,889 nm)を含む多波長撮像観測を行った.得られた観測データから反射率とその時間変動を導出した.また導出した反射率を大気放射伝達モデルと比較し,メタン吸収量及びヘイズ層の光学的厚さを定量した.その結果,727 nmにおいては反射率の平均値は0.1549であり,これは先行研究(Karkoschka, 1994)の観測値(~0.16)と整合的であった.727 nmにおける反射率は標準偏差0.0151の変動があり,近土点で小さい傾向が見られた.この要因として土星磁気圏プラズマシートから降り注ぐ高エネルギー粒子数が増加した,または太陽風動圧が強い場合降り注ぐ太陽風粒子が増加したことが考えられる.タイタンがプラズマシート内またはバウショック外にあるとき,高エネルギー粒子数が増加し,メタンが消費されソリンが生成されるため,メタン柱密度の減少とメタン吸収波長における反射率の上昇が考えられる.本発表では導出した反射率の変動及び考えられる要因を比較し,公転運動に関連するタイタン大気の時間変動について議論する.