日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS06] 惑星科学

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:冨永 遼佑(東京科学大学 理学院地球惑星科学系)、田畑 陽久(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)、小林 真輝人(東京大学)、辰馬 未沙子(理化学研究所)

17:15 〜 19:15

[PPS06-P14] 熱進化した内部構造を持つ氷微惑星の衝突破壊に関する実験的研究

*﨑村 達也1荒川 政彦1豊田 優佳里1笹井 遥1横田 優作1石井 竣基1長谷川 直2 (1.神戸大学、2.宇宙航空研究開発機構(宇宙科学研究所))

原始太陽系星雲における微惑星の生き残りである小惑星は、惑星形成過程の記録を未だ保持しており、小惑星の起源を知ることは、惑星形成過程を紐解くために重要である。その中でも小惑星リュウグウは、「はやぶさ2」による探査の成果により、その産状や起源について議論する上での観測事実が多い。リュウグウは、母天体の衝突破片の再集積によって形成されたラブルパイル天体であると考えられており、また粘土鉱物を豊富に含んでいる。そのことから、母天体は放射性熱源によって熱進化を経験し、内部が融解し、岩石成分と氷成分に分化した層構造を持った氷微惑星と推測されている。そのような母天体がどのような衝突破壊と再集積過程を経験し、リュウグウのようなラブルパイル天体に至ったのかを明らかにすることは、小惑星の起源に迫る上で重要である。
  本研究では、上記のリュウグウ母天体のような熱進化した層構造天体を模擬した試料を標的として作成し、衝突破壊実験を行った。標的試料については、マントル部分に厚さ15mm、空隙率40%の雪、コア部分にモンモリロナイト粉末とシリコンオイルからなる直径30mmの粘土球を持つ、直径60mmの層構造球とした。衝突実験は、神戸大学及び宇宙科学研究所の横型二段式軽ガス銃を使用した。衝突速度は1~6km/sの範囲で、弾丸は直径19mm、4.7mm、7mmの3種類を用いた。全ての実験は高速カメラによって観測し、宇宙科学研究所の実験ではそれに加えて、フラッシュX線撮影による標的内部の観測も行った。
  先行研究では層構造標的試料への衝突破壊実験の結果、エネルギー密度やコア質量比によって決まる4つの破壊様式が存在することがわかっており、これは層構造天体の破壊の産状を確認するための重要な手がかりとなる[1]。本研究では、実験結果をこれらの破壊様式と照らし合わせながら破壊の産状を評価した。また、これまでの衝突実験の研究と同様に、エネルギー密度Qと標的の最大破片質量の関係についても調べた。
  実験の結果、どの弾丸サイズにおいても、エネルギー密度が大きくなるとともに破壊の程度は大きくなった。しかし、弾丸サイズ1.9mmでは、Q=898J/kgでマントルがカタストロフィック破壊したもののコアは無傷であったのに対して、4.7mmではQ=294J/kgでマントルのカタストロフィック破壊に加えてコアへのクレーター形成を伴う破壊が見られた。また、弾丸サイズ4.7mmでは、Q=16455J/kgでもコアのカタストロフィック破壊は認められなかったが、7mmでは、Q=6634J/kgで明らかなコアのカタストロフィック破壊が確認できた。これらの結果は、エネルギー密度の大小のみでは、標的の破壊様式を議論するのに不十分であることを意味すると同時に、弾丸サイズが衝突破壊に何らかの効果を与えていることを示唆する。また、エネルギー密度と標的の最大破片質量の関係についても同様に、弾丸サイズの違いによる効果を示唆する傾向が見られた。
  弾丸サイズは、標的内部に進入する際の弾丸速度の減衰に影響を与えている。これは、コアの破壊をスケーリングするためには、エネルギー密度では不十分であり、弾丸サイズに依存する速度減衰の効果を加えた有効エネルギー密度を検討する必要性あることを意味する。また、実際に太陽系で起こる天体衝突においても衝突体のサイズは多様であるので、本研究での衝突破壊実験において弾丸サイズが及ぼす影響を調べ、衝突破壊のスケール則を改訂することが必要である。

[1] Okamoto and Arakawa.,2008, Experimental study on the impact fragmentation of core-mantle bodies: Implications for collisional disruption of rocky planetesimals with sintered core covered with porous mantle, Icarus 197 (2008) 627-637