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[PPS07-04] γ線を用いたホルモース型反応による前生物的な2-deoxyriboseの生成
キーワード:糖、ホルモース型反応、γ線、2-deoxyribose
緒言
生命の化学進化を考える上RNA, DNAの構成要素である糖類の起源を知ることは重要である。糖類の前生物的な生成反応としてホルモース型反応が知られており[1,2]、RNA仮説により、riboseの生成が主に注目されてきた。様々な条件によりリボースを含むアルドースの生成が確認されている[3,4]。ただし、DNAの構成要素である2-deoxyriboseはHCHOやCH3OHのみを炭素源とした熱ホルモース型反応からの生成は確認されていない。
リボースを含む糖類は隕石中から発見されている[2,5]ことから地球外環境で生成したこれらの物質が隕石などを介して原始の地球に運搬された可能性がある。宇宙空間での有機物生成の場として隕石母天体内部が考察されている。ここではエネルギー源として26Alなどの放射性崩壊により生じたγ線などの放射線や崩壊熱が考えられる[6]。またアルデヒドが存在していると推測され、ホルモース型反応が起こった可能性がある。これまでの研究により放射線によってアミノ酸[7]や糖類[3]が生成することが示されている。
我々はこれまで、γ線がラジカル反応を介して、ホルモース(型)反応の律速段階であるグリコールアルデヒドの生成を促進する[8]ために、糖の生成に有効であることを示した。本研究では、γ線に誘発されるホルモース型反応によって2-deoxyriboseの生成を検討した。
実験方法
隕石母天体内部の模擬として、HCHOとCH3OHの混合水溶液と、HCHO+CH3OH混合水溶液に塩基性触媒としてNH3またはCa(OH)2 を混合した系を用いた。これらの試料(300 μL)に東京科学大の60Co線源を用いてγ線照射(総線量90 kGy)を行い、照射後の試料200 μLを誘導体化[3]させ、GCMSにより分析した。以降は各試料を、γ-FMW (Formaldehyde + Methanol + Water), γ-FMAW (Formaldehyde + Methanol + Ammonia + Water), γ-FMCW (Formaldehyde + Methanol + Calcium hydroxide + Water) と呼ぶ。各サンプルは以下のモル比率で混合した。FMWの場合; HCHO : CH3OH : H2O = 5 : 0.83 : 100, FMAWの場合; HCHO : CH3OH : NH3 : H2O = 5 : 0.83 : 1 : 100, FMCWの場合; FWサンプル(300 μL)に約 3 mg のCa(OH)2 を加えた。対照実験として、同じ出発物質を加熱(50℃, 72 h)したサンプルを同様の手順で分析した。さらにすべてのサンプルについて、アセトアルデヒドの生成を2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)誘導体化法による逆相分析によって検証した。
結果と考察
γ-FMAW, γ-FMCWの系で2-deoxyriboseが生成し、さらに2-deoxyriboseの異性体が存在する可能性も確認された。一方でγ-FMWや加熱サンプルからの生成はなかった。Acetaldehydeはすべてのγ線照射サンプルから生成し、加熱サンプルでは生成しなかった。
先行研究からグリセルアルデヒド(またはホルムアルデヒド)とアセトアルデヒドの水溶液をCaO の存在下で加熱(50℃)することで2-deoxyriboseが生成することが示唆されている[9]。グリセルアルデヒドは塩基性触媒によって促進されるホルモース型反応によって[3]、アセトアルデヒドはメタノールからγ線照射によって生成する[7]ことも示唆されている。メタノールはホルムアルデヒドのカニッツァロ反応によっても生成する。実際に本研究においても、これらの物質がサンプルから検出されている。したがって本研究でも先行研究[9]と同様の反応が進行することで2-deoxyriboseが生成した可能性がある。
以上のことから、2-deoxyriboseの生成においては、塩基性触媒と、アセトアルデヒドの生成のためのγ線が必要であると考えられる。この反応は隕石母天体内部で起こる可能性があり、riboseとともに2-deoxyriboseが得られ、これらが地球に運ばれて生命の材料となった可能性がある。
参考文献
[1] Z. Iqbal et al., Curr. Org. Chem., 2012, 16, 769−788.
[2] Y. Furukawa et al., PNAS, 2019, 116, 24440-24445.
[3] S. Abe et al., ACS Earth Space Chem., 2024, 8, 1737–1744.
[4] C. Ono et al., Astrobiology, 2024, 24, 489-497.
[5] G. Cooper et al., Nature, 2001, 414, 879-883.
[6] A. Brearley, In Meteorites and the Early Solar System II, 2006, 587-624.
[7] Y. Kebukawa et al., ACS Cent. Sci., 2022, 8, 1664-1671.
[8] A. López-Islas et al., Int. J. Astrobiol., 2018, 18, 420-425.
[9] J. Oró and A. C. Cox, Fed. Proc., 1962, 21, 80.
生命の化学進化を考える上RNA, DNAの構成要素である糖類の起源を知ることは重要である。糖類の前生物的な生成反応としてホルモース型反応が知られており[1,2]、RNA仮説により、riboseの生成が主に注目されてきた。様々な条件によりリボースを含むアルドースの生成が確認されている[3,4]。ただし、DNAの構成要素である2-deoxyriboseはHCHOやCH3OHのみを炭素源とした熱ホルモース型反応からの生成は確認されていない。
リボースを含む糖類は隕石中から発見されている[2,5]ことから地球外環境で生成したこれらの物質が隕石などを介して原始の地球に運搬された可能性がある。宇宙空間での有機物生成の場として隕石母天体内部が考察されている。ここではエネルギー源として26Alなどの放射性崩壊により生じたγ線などの放射線や崩壊熱が考えられる[6]。またアルデヒドが存在していると推測され、ホルモース型反応が起こった可能性がある。これまでの研究により放射線によってアミノ酸[7]や糖類[3]が生成することが示されている。
我々はこれまで、γ線がラジカル反応を介して、ホルモース(型)反応の律速段階であるグリコールアルデヒドの生成を促進する[8]ために、糖の生成に有効であることを示した。本研究では、γ線に誘発されるホルモース型反応によって2-deoxyriboseの生成を検討した。
実験方法
隕石母天体内部の模擬として、HCHOとCH3OHの混合水溶液と、HCHO+CH3OH混合水溶液に塩基性触媒としてNH3またはCa(OH)2 を混合した系を用いた。これらの試料(300 μL)に東京科学大の60Co線源を用いてγ線照射(総線量90 kGy)を行い、照射後の試料200 μLを誘導体化[3]させ、GCMSにより分析した。以降は各試料を、γ-FMW (Formaldehyde + Methanol + Water), γ-FMAW (Formaldehyde + Methanol + Ammonia + Water), γ-FMCW (Formaldehyde + Methanol + Calcium hydroxide + Water) と呼ぶ。各サンプルは以下のモル比率で混合した。FMWの場合; HCHO : CH3OH : H2O = 5 : 0.83 : 100, FMAWの場合; HCHO : CH3OH : NH3 : H2O = 5 : 0.83 : 1 : 100, FMCWの場合; FWサンプル(300 μL)に約 3 mg のCa(OH)2 を加えた。対照実験として、同じ出発物質を加熱(50℃, 72 h)したサンプルを同様の手順で分析した。さらにすべてのサンプルについて、アセトアルデヒドの生成を2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)誘導体化法による逆相分析によって検証した。
結果と考察
γ-FMAW, γ-FMCWの系で2-deoxyriboseが生成し、さらに2-deoxyriboseの異性体が存在する可能性も確認された。一方でγ-FMWや加熱サンプルからの生成はなかった。Acetaldehydeはすべてのγ線照射サンプルから生成し、加熱サンプルでは生成しなかった。
先行研究からグリセルアルデヒド(またはホルムアルデヒド)とアセトアルデヒドの水溶液をCaO の存在下で加熱(50℃)することで2-deoxyriboseが生成することが示唆されている[9]。グリセルアルデヒドは塩基性触媒によって促進されるホルモース型反応によって[3]、アセトアルデヒドはメタノールからγ線照射によって生成する[7]ことも示唆されている。メタノールはホルムアルデヒドのカニッツァロ反応によっても生成する。実際に本研究においても、これらの物質がサンプルから検出されている。したがって本研究でも先行研究[9]と同様の反応が進行することで2-deoxyriboseが生成した可能性がある。
以上のことから、2-deoxyriboseの生成においては、塩基性触媒と、アセトアルデヒドの生成のためのγ線が必要であると考えられる。この反応は隕石母天体内部で起こる可能性があり、riboseとともに2-deoxyriboseが得られ、これらが地球に運ばれて生命の材料となった可能性がある。
参考文献
[1] Z. Iqbal et al., Curr. Org. Chem., 2012, 16, 769−788.
[2] Y. Furukawa et al., PNAS, 2019, 116, 24440-24445.
[3] S. Abe et al., ACS Earth Space Chem., 2024, 8, 1737–1744.
[4] C. Ono et al., Astrobiology, 2024, 24, 489-497.
[5] G. Cooper et al., Nature, 2001, 414, 879-883.
[6] A. Brearley, In Meteorites and the Early Solar System II, 2006, 587-624.
[7] Y. Kebukawa et al., ACS Cent. Sci., 2022, 8, 1664-1671.
[8] A. López-Islas et al., Int. J. Astrobiol., 2018, 18, 420-425.
[9] J. Oró and A. C. Cox, Fed. Proc., 1962, 21, 80.