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[PPS07-16] Hf同位体変動が示唆する惑星物質における熱外中性子スペクトルの深さ・化学組成依存性
キーワード:中性子捕獲、ハフニウム同位体、宇宙線、隕石
惑星表層数メートルでは、銀河宇宙線が引き起こす核破砕反応によって中性子(>1 MeV)が発生している。これらの中性子が原子核に捕獲されることで、SmやGd等のいくつかの元素では容易に検出可能なほどの顕著な同位体変動が起こることが知られている(e.g., Lingenfelter et al. 1972)。中性子捕獲反応は、放射壊変と元素合成成分の不均質をはじめとする、惑星物質の同位体変動の要因となる基礎プロセスの1つであるため、その理解は重要である(e.g., Leya & Masarik 2013)。また、同位体変動から中性子の情報を読み取ることで、惑星物質が宇宙線を浴びていた期間や環境の推定に応用することができる(e.g., Hidaka et al. 2000)。従来、同位体変動を用いた惑星物質中の中性子研究は、Sm, Gd同位体による熱中性子(E < 0.1 eV)の研究にその対象が限られていたが、近年の分析機器・分析技術の進歩により比較的高エネルギーな熱外中性子(0.1 eV < E < 0.1 MeV)の情報を持つ元素の分析が可能になってきた(Er, Yb: Hidaka et al. 2020; Hf: Sprung et al. 2010)。しかしながら、これらの初期的な熱外中性子研究においては、測定データの蓄積量が十分でなく、データ解析方法の詳細な検討も為されていなかったため、熱外中性子のエネルギー分布(スペクトル)に関する考察を展開するには至っていない。本研究では、それぞれ1–3 eVと8 eVに顕著な中性子捕獲の共鳴を示す177Hfと178Hfを同位体に持つHfについて、月隕石とアポロ試料の同位体分析を実施した。Hf同位体データを用いて、1–10 eVのエネルギー範囲における熱外中性子の解析を行い、スペクトル形状の多様性とその要因について考察した。
フッ酸分解した後に塩酸–フッ酸溶液とした試料から、陽イオン交換樹脂とLnレジンを用いた2段階の化学分離によりHfを単離し、韓国地質資源研究院にてMC-ICP-MS(Neptune Plus)による同位体分析を実施した。また、熱外中性子スペクトルをΨepi(E) = A/Ep(Eは中性子エネルギー、Aとpは定数; e.g., Ryves 1969)と仮定し、スペクトル形状を特徴づけるp値と中性子捕獲による同位体変動の関係をHf同位体の反応断面積データ(ENDF/B-VIII.0; Brown et al., 2018)に基づいて計算した。
アポロのコア試料(深さ40–240 cm; 15001–15006)のHf同位体データから導かれたp値(0.93–1.06)は、深さ80–120 cmに極小値を持つ明確な深さ依存性を示した。低いp値は高エネルギー熱外中性子が卓越していることを表す。p値が極小となる深さは熱外中性子フルエンスが極大となる深さと一致しており、中性子フルエンスが高い深さにおいては核破砕反応により供給される速中性子(E > 1 MeV)の寄与により高エネルギーな熱外中性子が卓越するとものと解釈できる。本研究と先行研究(Sprung et al. 2010; 2013; Dauphas et al. 2025)のHf同位体データをコンパイルして、化学組成から算出される各試料の熱外中性子捕獲能力のパラメータ(ΣRI/ξΣs)とp値の関係を調べたところ、両者には負の相関があることが分かった。一般に中性子捕獲断面積は低エネルギーの中性子に対して大きいため(1/v依存性)、捕獲能力の高い試料においては低エネルギー中性子が効率的に取り除かれることでp値が低くなる(高エネルギー熱外中性子が卓越する)と解釈できる。
フッ酸分解した後に塩酸–フッ酸溶液とした試料から、陽イオン交換樹脂とLnレジンを用いた2段階の化学分離によりHfを単離し、韓国地質資源研究院にてMC-ICP-MS(Neptune Plus)による同位体分析を実施した。また、熱外中性子スペクトルをΨepi(E) = A/Ep(Eは中性子エネルギー、Aとpは定数; e.g., Ryves 1969)と仮定し、スペクトル形状を特徴づけるp値と中性子捕獲による同位体変動の関係をHf同位体の反応断面積データ(ENDF/B-VIII.0; Brown et al., 2018)に基づいて計算した。
アポロのコア試料(深さ40–240 cm; 15001–15006)のHf同位体データから導かれたp値(0.93–1.06)は、深さ80–120 cmに極小値を持つ明確な深さ依存性を示した。低いp値は高エネルギー熱外中性子が卓越していることを表す。p値が極小となる深さは熱外中性子フルエンスが極大となる深さと一致しており、中性子フルエンスが高い深さにおいては核破砕反応により供給される速中性子(E > 1 MeV)の寄与により高エネルギーな熱外中性子が卓越するとものと解釈できる。本研究と先行研究(Sprung et al. 2010; 2013; Dauphas et al. 2025)のHf同位体データをコンパイルして、化学組成から算出される各試料の熱外中性子捕獲能力のパラメータ(ΣRI/ξΣs)とp値の関係を調べたところ、両者には負の相関があることが分かった。一般に中性子捕獲断面積は低エネルギーの中性子に対して大きいため(1/v依存性)、捕獲能力の高い試料においては低エネルギー中性子が効率的に取り除かれることでp値が低くなる(高エネルギー熱外中性子が卓越する)と解釈できる。