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[PPS07-23] 昇温過程での蒸発がタイプB CAI形成に与える影響:蒸発−結晶化実験による評価

キーワード:難揮発性包有物、溶融、蒸発、結晶成長、原始太陽系円盤
隕石中の難揮発性包有物 (CAI) は,太陽系で形成された最古の物質であり,原始太陽系円盤の初期進化の過程を記録している.タイプB CAIは円盤ガス中での溶融を経験し,その際にMgとSiの蒸発が起こったと考えられている (e.g., Grossman et al., 2000; Richter et al., 2002; Mendybaev et al., 2021).タイプB CAIは,その組織から,メリライト (ゲーレナイト(Ca2Al2SiO7)–オケルマナイト(Ca2MgSi2O7)) のマントル構造を持つタイプB1とそれを持たないタイプB2の2つに分類される (e.g., Wark & Lovering, 1982).低圧の水素ガス中でのCAIメルトの溶融–蒸発–結晶化実験 (Kamibayashi et al., 2021) により,水素ガス圧が1 Pa以上の場合,蒸発が促進され,メルトの表面付近がMgとSiに枯渇することで,タイプB1 CAIに類似したメリライトマントルが形成されることが示された.しかし,Kamibayashi et al. (2021) は,最高温度からの冷却過程における蒸発に注目しており,昇温過程で起こりうる蒸発については考慮していない.タイプB CAIの加熱メカニズムは判明しておらず,昇温と冷却のタイムスケールが同程度だった場合 (e.g., McNally et al., 2014),昇温時の蒸発により,最高温度到達前にメルトがMgとSiに枯渇し,メリライトの結晶化に影響した可能性がある.本研究では,CAIメルトの蒸発−結晶化実験を行い,昇温時の蒸発によるタイプB CAI形成への影響について議論した.
CAIχ組成 (Grossman et al., 2002) のメルトの蒸発−結晶化実験を,真空炉 (Takigawa et al., 2009; Mendybaev et al., 2021; Kamibayashi et al., 2021) を用いて行った.ガラスとスピネルからなる出発物質を,水素ガス圧0.1, 1, 10 Pa下で,1100°Cから1420°Cまで20°C hr-1で昇温し,1420°Cで1時間加熱した後,1100°Cまで20°C hr-1で冷却した.また,先行研究 (Kamibayashi et al., 2021) と同様に,1420°Cから水素ガスを導入し,1時間加熱した後,20°C hr-1で冷却した試料も作成した.実験前後に試料の重量を測定し,蒸発量を決定した.走査電子顕微鏡 (SEM) とエネルギー分散型X線分光 (EDS) 装置,電子線後方散乱回折(EBSD) 装置を用いて,試料断面の組織観察と元素分析,結晶方位解析を行った.
昇温時から水素を流した試料は,水素ガス圧によらず,メリライトマントルが形成された.マントルの組成は,中心に向かって徐々にオケルマナイト (Åk) 含有量が増加する傾向を示し,先行研究 (Kamibayashi et al., 2021) と同条件の試料に見られる組成がほぼ均質な部分は見られなかった.昇温時から水素を流した試料のうち,水素ガス圧0.1, 10 Paの試料のコア領域には,マントルと同様にÅk含有量の低いメリライトが見られた.
昇温時の水素ガスの有無によるマントルの組成プロファイルの違いは,メリライトの結晶化のタイミングに起因すると考えられる.昇温時から水素を流した場合,昇温中のメルト組成変化や結晶成長により,早期に形成したマントルが蒸発を抑制することで,最高温度付近で組成がほぼ均質な部分があまり成長せず,冷却に伴って徐々にÅk含有量が増加するマントルが形成されたと考えられる.似たようなマントル組成を持つCAIは天然に見られるため (e.g., Simon & Grossman, 2006; Bullock et al., 2013),タイプB CAIの加熱中には,昇温時の蒸発の程度が多様であったと考えられる.
コア領域にÅk含有量の低いメリライトが見られた試料は,昇温中に試料の中心部までMgとSiに枯渇したと考えられる.天然のタイプB1 CAIのコア領域のメリライトは,マントルよりもÅk含有量の高い組成を示す傾向があることから (Simon & Grossman, 2006),これらの実験試料は,昇温中に過度な蒸発を経験したと考えられる.蒸発を抑制するために,20°C hr-1よりも速い昇温や,MgやSiの再凝縮が必要であることが示唆される.
今回,昇温中の蒸発の程度の違いが天然のメリライトマントルの特徴を説明しうることを明らかにした.今後は,再凝縮の効果も含め,メリライトマントル形成に対する昇温中の蒸発の効果を理解し,原始太陽系円盤でのCAI形成過程の解明を目指す.
CAIχ組成 (Grossman et al., 2002) のメルトの蒸発−結晶化実験を,真空炉 (Takigawa et al., 2009; Mendybaev et al., 2021; Kamibayashi et al., 2021) を用いて行った.ガラスとスピネルからなる出発物質を,水素ガス圧0.1, 1, 10 Pa下で,1100°Cから1420°Cまで20°C hr-1で昇温し,1420°Cで1時間加熱した後,1100°Cまで20°C hr-1で冷却した.また,先行研究 (Kamibayashi et al., 2021) と同様に,1420°Cから水素ガスを導入し,1時間加熱した後,20°C hr-1で冷却した試料も作成した.実験前後に試料の重量を測定し,蒸発量を決定した.走査電子顕微鏡 (SEM) とエネルギー分散型X線分光 (EDS) 装置,電子線後方散乱回折(EBSD) 装置を用いて,試料断面の組織観察と元素分析,結晶方位解析を行った.
昇温時から水素を流した試料は,水素ガス圧によらず,メリライトマントルが形成された.マントルの組成は,中心に向かって徐々にオケルマナイト (Åk) 含有量が増加する傾向を示し,先行研究 (Kamibayashi et al., 2021) と同条件の試料に見られる組成がほぼ均質な部分は見られなかった.昇温時から水素を流した試料のうち,水素ガス圧0.1, 10 Paの試料のコア領域には,マントルと同様にÅk含有量の低いメリライトが見られた.
昇温時の水素ガスの有無によるマントルの組成プロファイルの違いは,メリライトの結晶化のタイミングに起因すると考えられる.昇温時から水素を流した場合,昇温中のメルト組成変化や結晶成長により,早期に形成したマントルが蒸発を抑制することで,最高温度付近で組成がほぼ均質な部分があまり成長せず,冷却に伴って徐々にÅk含有量が増加するマントルが形成されたと考えられる.似たようなマントル組成を持つCAIは天然に見られるため (e.g., Simon & Grossman, 2006; Bullock et al., 2013),タイプB CAIの加熱中には,昇温時の蒸発の程度が多様であったと考えられる.
コア領域にÅk含有量の低いメリライトが見られた試料は,昇温中に試料の中心部までMgとSiに枯渇したと考えられる.天然のタイプB1 CAIのコア領域のメリライトは,マントルよりもÅk含有量の高い組成を示す傾向があることから (Simon & Grossman, 2006),これらの実験試料は,昇温中に過度な蒸発を経験したと考えられる.蒸発を抑制するために,20°C hr-1よりも速い昇温や,MgやSiの再凝縮が必要であることが示唆される.
今回,昇温中の蒸発の程度の違いが天然のメリライトマントルの特徴を説明しうることを明らかにした.今後は,再凝縮の効果も含め,メリライトマントル形成に対する昇温中の蒸発の効果を理解し,原始太陽系円盤でのCAI形成過程の解明を目指す.