日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS07] 太陽系物質進化

2025年5月29日(木) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:松本 徹(京都大学白眉センター)、川崎 教行(北海道大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門)、橋口 未奈子(名古屋大学)、竹之内 惇志(京都大学)

17:15 〜 19:15

[PPS07-P09] Beardsleyコンドライト(H5)における衝撃溶融の痕跡

*小西 里空1新原 隆史1三澤 啓司2 (1.岡山理科大学、2.国立極地研究所)

キーワード:Hコンドライト、岩石・鉱物学、衝撃溶融岩、アルカリ物質、高カリウムガラス

はじめに: Beardsleyコンドライトは岩石・鉱物学的研究によって初期分類では均質なH5とされているが、通常のHコンドライトに比べアルカリ元素存在量が多く、特に全岩化学組成としてRbの存在量が多いことやマトリクスにK2Oの濃集相があること(最大~8 wt.%)が報告されている [1,2]。Hidaka et al. [3]は、BeardsleyとZag (H5)のCs/Ba同位体分析を行い、これらの隕石が炭素質コンドライトに含まれるCAIと同様の同位体比を示すことを報告し、原始太陽系星雲の元素組成を保存している可能性を示唆した。Beardsleyは、他のHコンドライトに比べて特異な化学的特徴を示しているにもかかわらず、詳細な岩石・鉱物学的研究が行われていないため、本研究では、岩石・鉱物学的研究を行い、地史、特に衝撃変成作用による影響を評価する。
サンプルと方法: Beardsleyの切片はアリゾナ州立大学より貸与し、研磨片を作製した [4]。研磨片は偏光顕微鏡および走査型電子顕微鏡を用いて岩石組織を観察した。エネルギー分散型X線分析装置および電子線プローブマイクロアナライザーを用いて、鉱物の化学組成を分析した。全ての観察・分析は岡山理科大学で行った。
結果: Beardsleyには、茶色岩相と灰色岩相が存在する [4]。いずれの岩相も、主要構成物はかんらん石、輝石、Fe-Ni合金、トロイライト、またそれらの間隙を埋めるガラスであった。また、コンドリュールも形状を保って観察された。
茶色岩相には、粗粒の鉱物(約430 µm)や周囲に錆を持つFe-Ni合金が多く存在している。粗粒のケイ酸塩鉱物にみられる一部の亀裂は、錆びによって埋められていた。ガラス質のマトリクス中の細粒のかんらん石および輝石(約30 µm)は、粗粒鉱物の間隙を埋めており、亀裂はほとんど観察されなかった。さらに、粗粒および細粒の輝石は、それぞれEn45.7-84.0Fs5.9-19.4Wo0.8-44.6、En47.4-83.9Fs5.4-22.1Wo1.3-45.6の組成範囲を示した。同様に粗粒および細粒のかんらん石は、それぞれFa16.9-20.0およびFa17.0-19.8の組成範囲を示した。輝石およびかんらん石とも、粒径による組成の違いは見受けられなかった。鉱物の間隙を埋めるガラスは長石質の組成(Ab23.4-83.5An11.0-74.0Or2.6-7.5)であった。
灰色岩相は、主に亀裂を含まない細粒の輝石やかんらん石(約30 µm)、ガラス質のマトリクスからなる。灰色岩相にも粗粒の輝石やかんらん石が存在し、亀裂が多く存在していた。偏光顕微鏡下では、灰色岩相においてショックダークニングが確認された。後方散乱電子像では、Fe-Ni合金に引き伸ばされたように変形した組織が観察された。細粒および粗粒を示す輝石の化学組成は、それぞれ、En48.8-84.0Fs5.2-15.6Wo1.2-45.6およびEn49.9-84.1Fs5.7-16.2Wo1.0-44.4であった。いくつかの粗粒の輝石はCaに富むリム(Wo41.9-46.0)が伴っていた。細粒および粗粒のかんらん石は、それぞれFa16.8-18.8およびFa16.3-18.1の組成範囲を示しており、組成の違いは見られなかった。鉱物の間隙を埋めるガラスは、長石質の組成(Ab27.7-83.0An8.0-70.3Or2.0-63.8)であった。さらに、マトリクス中にK2O含有量が11.5 wt.%のカリウムに富む物質が確認できた。
議論とまとめ: 茶色岩相は主に粗粒鉱物から構成されているのに対し、灰色岩相は主に細粒鉱物と間隙ガラスから構成されている。茶色岩相に見られる粗粒のかんらん石と輝石の組成については、わずかにFeに富んでいるが、これらは錆びによって埋められた亀裂の近くを計測したことが影響していると考えられる。これらのデータを除き、かんらん石および輝石の組成は両岩相で違いは見られないことから、茶色岩相と灰色岩相は同じ起源であると考えられる。両岩相の違いは衝撃溶融物質の存在度の違いによって形成された可能性があり、灰色岩相は茶色の岩相よりも溶融物が多く存在しており、衝撃溶融の不均質さを示している。
引用文献: [1] Gast P. W. (1962) GCA. 26, 927-943. [2] Niihara T. et al. (2023) LPSC LIV, Abstract#2052. [3] Hidaka H. et al. (2001) EPSL. 193, 459 466. [4] Konishi R. et al. (2024) LPSC LV, Abstract#2037.