日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS07] 太陽系物質進化

2025年5月29日(木) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:松本 徹(京都大学白眉センター)、川崎 教行(北海道大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門)、橋口 未奈子(名古屋大学)、竹之内 惇志(京都大学)

17:15 〜 19:15

[PPS07-P14] 金星クレーターのエジェクタ地形形成に及ぼす大気の影響:大気中での高速度斜め衝突実験

*澤 みゆう1荒川 政彦1保井 みなみ1豊田 優佳里1豊嶋 遥名1 (1.神戸大学大学院)

キーワード:衝突実験、大気、クレーター、金星

大気を持つ天体での衝突現象では、大気と衝突体の相互作用が地形の形成過程に大きな影響を及ぼすことが知られている。これらの現象を解明することは、地球のみならず、火星や金星といった他の天体の地形や進化を理解する手がかりとなる。金星のランパートクレーターの一部では、エジェクタ堆積物に欠損が見られる。このような形態は、金星の持つ高い気圧と低角度の斜め衝突によるものと考えられている。エジェクタの欠損角度は衝突角度に依存しており、衝突角度が小さいほど消失角度が増加すると過去の研究から示唆されている[1]。このような衝突地形から衝突条件を推定する研究は数多く行われているが[1,2,3]、衝突速度、インパクター密度、衝突角度といった複数の仮定に基づいており、正確な推定は困難である。しかし、大気中での衝突実験の多くは低速度領域に集中しており、高速度衝突における大気と弾丸の相互作用やそれらの地表への影響に着目した実験的研究は少ない。そこで本研究では、大気中で高速度衝突実験を行い、シャドウグラフを用いて詳細な観測を行った。そして金星クレーターとの比較から、クレーター地形に対する大気の影響を評価した。
 衝突実験には神戸大の横型二段式軽ガス銃を用い、350Pa〜70kPaの周囲圧力下で弾丸速度を2km/s〜5km/sと変化させて実験を行った。弾丸は直径4.7mmのポリカーボネート球で、標的は固体天体表面を模擬した粒径100µmの石英砂を用い、斜めに設置した。衝突の様子は高速カメラ2台で撮影し、一方は可視光、もう一方は密度差を可視化するシャドウグラフ法で観察を行った。形成されたクレーターは二次元変位計でクレーター直径と深さを計測した。一部の実験では,高速赤外線カメラによる温度観測も行った。
 30kPa以上の気圧下での実験では、シャドウグラフ法により弾丸周囲の大気中に衝撃波が形成される様子が観察された。しかし,衝撃波が標的表面に直接影響を与えることは確認できなかった。衝撃波が発生した後,弾道に沿って後続流が形成された。後続流の幅は衝突速度が増加するにつれて大きくなり、周囲気圧が高いほど狭くなる傾向が見られた。衝突後〜1ms以降から成長するエジェクタカーテンは、真空中では同心円状に広がるのに対し,大気中では上流側の弾道付近に穴が生じた。シャドウグラフ法では後続流は弾丸通過約2ms後までしか確認できないが、可視光観測により、後続流のエジェクタカーテンへの影響はクレーター形成の後期段階まで及んでいることが示唆された。エジェクタカーテンを真横から観察すると、その上流側の角度は衝突速度の増加に伴い減少した。金星のクレーターと比較を行うため、ランパートクレーターの堆積物欠損幅を衝突体直径で規格化した。この値と、本研究で得られた後続流の幅を弾丸直径で規格化した値と値に整合性が見られた。

[1] Schultz. (1992) Journal of Geophysical Research, 97, 11623-11662
[2] Ivanov. (1986) Journal of Geophysical Research, 91(B4), 413–430
[3] Tauber & Kirk. (1976) Icarus, 28(3), 351–357