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[PPS08-22] LIBSを用いた月レゴリス試料の水分量測定における空隙率の影響
キーワード:月、レーザー誘起ブレークダウン分光法、レゴリス
これまでの月面探査により、月に水が存在する可能性が示唆されてきた。水の分布を調べることで、月の形成・進化の手がかりを得られ、特に、マグマオーシャンの進化、マントルの揮発性物質の含有量、衝突の歴史、太陽風との相互作用の解明につながる(Dhingra et al, (2009))。また、月の水の起源を明らかにすることで、地球を含む惑星への水供給の仕組みや、太陽系初期の揮発性物質の移動プロセスを推測でき、太陽系全体の進化理解にも貢献する(Albarède et al, (2009))。さらに、水資源は将来の宇宙探査における利用が期待され、人類の長期的な宇宙活動の基盤となる可能性がある。
月の水を探査する際、水素の検出が重要である。H₂Oは真空の表面環境では揮発しやすく、鉱物に取り込まれて安定化するため、OHとして残ることが多い。そのため、リモートセンシングではOHの2.7µmの吸収帯が水の指標としてよく利用される。
初期の探査では月は極めて乾燥していると考えられていた(Gibson et al, (1971))。しかし、1998年にLunar Prospectorの中性子分光計が極域の永久影領域を中心に水素の存在を検出した(Feldman et al, (2001))。その後、Chandrayaan-1のMoon Mineralogy Mapper (M3)などの観測により、月表面に水が存在する可能性が示唆された(Pieters et al, (2009))。2009年のLCROSSミッションでは、永久影領域において水の存在が直接確認され(Colaprete et al, (2010))、アポロサンプル分析では鉱物中の水も明らかとなった(Saal et al, (2008))。
これまでの探査では、リモートセンシングが中心であり、現場での直接測定やサンプル分析は不足している。さらに、リモートセンシングには空間分解能の制約があり、小規模な分布や深さ方向の分析には不確実性が残る。この問題を解決するため、レーザー誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を用いた水素含有物質の現地分析が提案されている。LIBSの利点は、フットプリントが小さく、物理的破壊が少なく、表面層を掘削して地下の分析が可能な点である(Yumoto et al, (2023))。
先行研究では、非圧縮試料の方が圧縮試料よりHスペクトルの強度が高く、岩石に近い密度や高空隙率のサンプルで0.4 wt% H₂Oの水素輝線が測定可能であることが示されている。しかし、ここでは密度とHスペクトル強度の関係は定量的に明らかにされていなかった。本研究ではこの関係を解明し、LIBSの月面探査への搭載判断に貢献することを目指す。これはJAXAのH₂Oの検出限界(LOD)基準に対し、2倍以上の精度が求められているためである。
そこで、本研究ではLIBS測定におけるHスペクトルの強度と密度の関係を定量的に評価する。特に月面の低密度環境での検出精度向上を検討し、アルテミス計画や他の大気のない惑星探査への応用を目指す。アプローチとして、含水物質を玄武岩質の月模擬物質に混合し、LIBSを用いてH輝線強度を測定し、水分量をどの程度定量的に評価できるかを検証する。また、試料の空隙率を変化させ、その影響を調査することで、LIBSの適用可能性を探る。
具体的な実験手順として、LMS-1(月の海の模擬物質)に水酸化マグネシウムを混合し、4 wt% H₂Oを含むサンプルを作成した。試料は乳鉢で均一に混合し、4 gずつ成形後、顕微鏡で高さを測定し密度を算出した。密度は約1280 kg/m³から1780 kg/m3の範囲で4種類作成し、誤差範囲内で調整した。この範囲は、過去の研究で報告された最小1150 kg/m³、最大1820 kg/m3の範囲を考慮したものである(Matsushima et al,(2021))。最小密度はほぼ押し固めない状態で作成したが、それ以下にはならなかった。LIBS測定は真空チャンバー内で実施した。レーザー設定は露光時間500マイクロ秒、照射頻度1秒間に2回、電流250Aとした。1回の測定で100ショットを行い、カメラ感度を24、背景ノイズレベルを50に設定した。各密度試料につき5回測定し、全スペクトルの和を取り規格化し、Hのピーク強度から背景強度を差し引いた。
その結果、密度1784 kg/m3では強度1.28×10-4、1633 kg/m3では2.68×10-4、1405 kg/m3では2.96×10-4、1282 kg/m3では3.02×10-4となり、密度とHスペクトル強度には明確な相関があり、月面の最小密度と最大密度の範囲内で、密度が低くなるほどHスペクトル強度が増加することが確認された。
ここから、月面の低密度環境ではHスペクトルの輝線がより強く観測される可能性が示唆され、LIBSによる低水分量の検出能力が向上することが期待される。さらに、岩石に対して低密度のレゴリスではHスペクトルの挙動が異なる可能性があるため、月面探査における水分量解析の際にはこの影響を考慮する必要がある。
月の水を探査する際、水素の検出が重要である。H₂Oは真空の表面環境では揮発しやすく、鉱物に取り込まれて安定化するため、OHとして残ることが多い。そのため、リモートセンシングではOHの2.7µmの吸収帯が水の指標としてよく利用される。
初期の探査では月は極めて乾燥していると考えられていた(Gibson et al, (1971))。しかし、1998年にLunar Prospectorの中性子分光計が極域の永久影領域を中心に水素の存在を検出した(Feldman et al, (2001))。その後、Chandrayaan-1のMoon Mineralogy Mapper (M3)などの観測により、月表面に水が存在する可能性が示唆された(Pieters et al, (2009))。2009年のLCROSSミッションでは、永久影領域において水の存在が直接確認され(Colaprete et al, (2010))、アポロサンプル分析では鉱物中の水も明らかとなった(Saal et al, (2008))。
これまでの探査では、リモートセンシングが中心であり、現場での直接測定やサンプル分析は不足している。さらに、リモートセンシングには空間分解能の制約があり、小規模な分布や深さ方向の分析には不確実性が残る。この問題を解決するため、レーザー誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を用いた水素含有物質の現地分析が提案されている。LIBSの利点は、フットプリントが小さく、物理的破壊が少なく、表面層を掘削して地下の分析が可能な点である(Yumoto et al, (2023))。
先行研究では、非圧縮試料の方が圧縮試料よりHスペクトルの強度が高く、岩石に近い密度や高空隙率のサンプルで0.4 wt% H₂Oの水素輝線が測定可能であることが示されている。しかし、ここでは密度とHスペクトル強度の関係は定量的に明らかにされていなかった。本研究ではこの関係を解明し、LIBSの月面探査への搭載判断に貢献することを目指す。これはJAXAのH₂Oの検出限界(LOD)基準に対し、2倍以上の精度が求められているためである。
そこで、本研究ではLIBS測定におけるHスペクトルの強度と密度の関係を定量的に評価する。特に月面の低密度環境での検出精度向上を検討し、アルテミス計画や他の大気のない惑星探査への応用を目指す。アプローチとして、含水物質を玄武岩質の月模擬物質に混合し、LIBSを用いてH輝線強度を測定し、水分量をどの程度定量的に評価できるかを検証する。また、試料の空隙率を変化させ、その影響を調査することで、LIBSの適用可能性を探る。
具体的な実験手順として、LMS-1(月の海の模擬物質)に水酸化マグネシウムを混合し、4 wt% H₂Oを含むサンプルを作成した。試料は乳鉢で均一に混合し、4 gずつ成形後、顕微鏡で高さを測定し密度を算出した。密度は約1280 kg/m³から1780 kg/m3の範囲で4種類作成し、誤差範囲内で調整した。この範囲は、過去の研究で報告された最小1150 kg/m³、最大1820 kg/m3の範囲を考慮したものである(Matsushima et al,(2021))。最小密度はほぼ押し固めない状態で作成したが、それ以下にはならなかった。LIBS測定は真空チャンバー内で実施した。レーザー設定は露光時間500マイクロ秒、照射頻度1秒間に2回、電流250Aとした。1回の測定で100ショットを行い、カメラ感度を24、背景ノイズレベルを50に設定した。各密度試料につき5回測定し、全スペクトルの和を取り規格化し、Hのピーク強度から背景強度を差し引いた。
その結果、密度1784 kg/m3では強度1.28×10-4、1633 kg/m3では2.68×10-4、1405 kg/m3では2.96×10-4、1282 kg/m3では3.02×10-4となり、密度とHスペクトル強度には明確な相関があり、月面の最小密度と最大密度の範囲内で、密度が低くなるほどHスペクトル強度が増加することが確認された。
ここから、月面の低密度環境ではHスペクトルの輝線がより強く観測される可能性が示唆され、LIBSによる低水分量の検出能力が向上することが期待される。さらに、岩石に対して低密度のレゴリスではHスペクトルの挙動が異なる可能性があるため、月面探査における水分量解析の際にはこの影響を考慮する必要がある。