日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS08] 月の科学と探査

2025年5月30日(金) 15:30 〜 17:00 302 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:仲内 悠祐(立命館大学)、小野寺 圭祐(岡山大学惑星物質研究所)、石原 吉明(宇宙航空研究開発機構)、池田 あやめ(産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、座長:小野寺 圭祐(岡山大学惑星物質研究所)、石原 吉明(宇宙航空研究開発機構)

16:30 〜 16:45

[PPS08-23] ボルダートラックを用いた月表層レゴリスの機械特性の制約

*原 久人1宮本 英昭1清水 雄太1 (1.東京大学)


キーワード:月、レゴリス、揮発性成分、ボルダートラック

月極域に存在する永久影領域(PSR)では、月面に供給された水分子を長期間に渡り保持できると理論的に指摘され、過去の観測でもその存在が示唆されている。しかしPSR内部は十分な日照が得られず、高い空間解像度で分光観測などにより物質的な情報を直接獲得することは難しい。そこで高精度な情報の獲得を目指す着陸探査計画が急速に進んでいるが、同時に水氷の水平分布の理解も重要なためリモートセンシングによる広域探査も必要であり、限られた日照条件でもPSR内を詳細に観測する新たな手法が求められている。
近年、探査機Danuri搭載の超高感度カメラShadowCamがPSR内部の高解像度画像の獲得に初めて成功した。この画像を用いて月南極域の観察を進めたところ、岩塊が移動した痕跡(ボルダートラック)が多数発見できた。トラックの間隔や形態は地球での観測や実験により、落石の運動形態や斜面の機械特性などのパラメータにより変化するとされる。つまり月表層でのトラックの特徴の違いの把握は、月面上での落石の運動形態や月面を覆う岩石砕屑物(レゴリス)の機械特性を理解する上で重要であり、特に後者はPSR内で水氷の存在可能性の高い領域を制約する重要な鍵となりうる。そこで本研究では、ShadowCam画像を用いて月南極域に存在するボルダートラックの位置や形態について統計的に分析する。さらにこの観測結果を、離散要素法(DEM)を用いた数値計算で再現し、月表層物質の機械特性の制約と水氷の存在領域に関する示唆を得る。
Shackletonクレーター全域のShadowCam高解像度画像 (1.7 m/pix) を用いてボルダートラックのマッピングを進め、計22本、最長7 kmのトラックを発見した。領域によりトラックの形状には変化が見られ、アスペクト比に基づき2種類に大別できた。一部ではトラック内でアスペクト比が変化すると判明した。加えて数値計算でトラックを再現し、落石の速度によりボルダートラックの形態に違いが出ることを確認した。さらに、摩擦係数の変化でもアスペクト比が変化することが判明した。すなわち機械特性を決定する構成物質の違いでもトラックのアスペクト比は変化しうるとわかり、今後ボルダートラックの観測を広範囲に進めることで、月表層の水氷の分布に関する有用な情報の獲得を目指す。