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[PPS08-P11] 宇宙プラズマに曝された月の粗面に形成される微視スケール静電構造
キーワード:月、宇宙プラズマ、表面帯電、静電環境
着陸機を用いた月面探査の準備が急速に進む中、月面の静電環境を正確な理解に立脚した、潜在的リスク評価の重要性が高まっている。月昼側の表面平衡電位は、太陽風プラズマ照射と光電子放出の電荷蓄積効果により、平均して数Vから10Vの正電位となる。しかし、近年の予測研究では、絶縁性で粗いレゴリス表面が帯電条件を大幅に変化させる可能性が指摘されている。とりわけ特定の表層形状は月面電位を決定づける電流平衡状態の成り立ち自体を大きく変化させる可能性がある。例えば、電荷のない表面に対する光電子電流、背景電子電流、イオン電流をそれぞれ Jpe、Je、Ji と表すとき、一般的に受け入れられているプラズマ電流の粒子種間大小関係、すなわち Jpe > Je > Ji も、特定の表面形状では破綻することを示すことができる。実際に我々の最近の研究では深い窪みにおいて Ji > Je となる「イオン駆動型の」帯電状態が成立することが示された [Miyake and Nishino, 2015; Nakazono and Miyake, 2023; Nakazono and Miyake, 2025]。
イオン駆動型帯電の特徴は、正電荷を持つ表面パッチが窪みの奥にのみ形成されることである。窪みの近くの浅い表面では、入射電子が優先的に捕集されるため、負電荷の顕著な蓄積が観察される。これは、粗い表面形態上に形成される局所的な荷電分離効果を示している。この結果に基づき、私たちは、月面付近の静電環境は、空間的に平均化された電位からの局所的な偏差によって特徴づけられると予測している。この帯電偏差は物理現象論上の興味に留まらず、それ自身が実際上の重要性を持つ。異なる地点に電位偏差が生じる際にその間には静電場が生じる。宇宙機の障害につながる放電現象や、月面上の帯電レゴリスを直接駆動し得るのは、この静電場であり、「帯電に偏差が生じること」が、問題の本質と考えられるためである。本講演では、月面の静電帯電環境に関する現在の理解をまとめ、今後の月面ミッションに向けた帯電研究の方向性について議論する。
イオン駆動型帯電の特徴は、正電荷を持つ表面パッチが窪みの奥にのみ形成されることである。窪みの近くの浅い表面では、入射電子が優先的に捕集されるため、負電荷の顕著な蓄積が観察される。これは、粗い表面形態上に形成される局所的な荷電分離効果を示している。この結果に基づき、私たちは、月面付近の静電環境は、空間的に平均化された電位からの局所的な偏差によって特徴づけられると予測している。この帯電偏差は物理現象論上の興味に留まらず、それ自身が実際上の重要性を持つ。異なる地点に電位偏差が生じる際にその間には静電場が生じる。宇宙機の障害につながる放電現象や、月面上の帯電レゴリスを直接駆動し得るのは、この静電場であり、「帯電に偏差が生じること」が、問題の本質と考えられるためである。本講演では、月面の静電帯電環境に関する現在の理解をまとめ、今後の月面ミッションに向けた帯電研究の方向性について議論する。