日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG45] Science of slow-to-fast earthquakes

2025年5月27日(火) 09:00 〜 10:30 国際会議室 (IC) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:加藤 愛太郎(東京大学地震研究所)、山口 飛鳥(東京大学大気海洋研究所)、中田 令子(東京大学大学院理学系研究科)、大久保 蔵馬(防災科学技術研究所)、座長:松澤 孝紀(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、佐藤 大祐(海洋研究開発機構)

10:15 〜 10:30

[SCG45-18] 房総半島Slow slip eventと誘発される地震活動度変化に見られる特徴

*堀 高峰1佐藤 大祐1加納 将行2,1、青地 秀雄3 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構、2.東北大学理学研究科、3.フランス地質調査所)

キーワード:ゆっくり滑り、余効滑り、誘発地震活動、断層構成則

Slow slip event(以下SSE)の始まりと終わりは、必ずしも滑らかな加速と減速をしていない。同じ領域で起きる繰り返しSSEでも、急加速を伴って開始する場合もあれば、急に滑りが停止しているかのような場合もあることが指摘されている(Fukuda, 2018)。このFukuda (2018)の報告は、1996年から2014年までに5回発生した房総沖のSSEに対する地殻変動データの解析にもとづいており、この房総沖SSEを見直すことは、SSEの初期・終期過程の多様さを読み解くうえで重要と考えられる。房総沖ではSSEに誘発される地震活動があり、ここでもSSEの加減速に相関した明瞭な特徴が読み取れる。。SSEが急加速をする場合には、地震活動度が1-2日程度中に活発化するのに対して、滑らかな加速をする場合は、活発化まで6-20日程度を要する(Fukuda, 2018)。

地震活動の空間分布に着目すると、陸の下と沖合との2つのクラスタに分かれるようにも見える。SSEが発生する以前から、陸の下では低いながらも地震活動があり、沖合ではほとんど活動がない。SSEが発生すると、それに近いタイミングでまず沖合の地震活動度が高まる。その後、陸域の地震活動が、余震活動のように活発化する傾向がある。そして、沖合の活動はSSE後にはほぼ無くなるのに対して、陸域ではSSE前と同程度の低調な地震活動に戻るようだ。SSEと地震活動の活発化は2018年と2024年にも発生しており、いずれもSSEの加速と沖合の地震活動の活発化が時間的に近い場合と類似の傾向であり、2つのクラスタの活動度変化の特徴も同様である。

このようなSSEや地震活動度の変化はどのように理解することができるだろうか。我々はこれまで、多様な断層すべりの振る舞いをできるだけ単純なモデルで調べるために、1 自由度のバネーブロックシステムを用いたシミュレーションを行ってきた。弾性体中の円形クラックのすべりに伴う見かけのバネ定数を仮定し、radiation dampingをし、direct effectは考慮しない。また強度発展則として滑り弱化とlog-time healingを仮定する。シミュレーション結果の中で、SSEに相当する固着・ゆっくり滑りの繰り返しが見られる場合、滑りの立ち上がりは滑らかな加速をするのに対して、滑り速度の最大値を超えた後により早く減速し、その後固着する振る舞いが見られた。これは沖合の地震活動変化の特徴に近い。一方、定常滑りに対して応力擾乱を与えたことで生じるゆっくり滑り(いわゆる余効滑り)の場合には、急な加速をした後に、徐々に減速して定常滑りに戻る振る舞いが見られた。これは陸の下の地震活動度変化の特徴に近い。ただし、シミュレーションでは応力擾乱を地震のように短時間で起こしているのに対して、房総の場合に起きているのはSSEである。SSEの発生している最中に余効滑りのような振る舞いが見られることは、佐藤・他が豊後水道のSSEの中で示している。この発生メカニズム解明は今後の課題だが、我々の数値計算が示唆するように、自発的SSEと誘発SSEの活動の違いと理解できるかもしれない