日本地球惑星科学連合2025年大会

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[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG46] Uncovering stress accumulation and fault strengthening of megathrust earthquakes

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:小平 秀一(海洋研究開発機構)、氏家 恒太郎(筑波大学生命環境系)、久保田 達矢(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、日野 亮太(東北大学大学院理学研究科)

17:15 〜 19:15

[SCG46-P13] 接触面における固着状態の時間発展を記述する上下負荷面摩擦構成式を用いた単純せん断場でのすべり伝播解析

*安池 亮1豊田 智大1野田 利弘1 (1.名古屋大学大学院工学研究科土木工学専攻)


キーワード:摩擦、固着、動的変形解析、すべり伝播、弾塑性、単純せん断

断層面の力学状態を記述する固体摩擦構成則の多くは,①動摩擦の速度弱化や②静止摩擦の停止時間依存を速度Vや時間tを陽に含む形で記述している(例:RSF則).これに対し,著者らはこれまで,速度や時間を変数として陽に取ることなく①②を説明可能な「弾塑性」摩擦構成則として「上下負荷面摩擦モデル」1)を提案してきた.同モデルは,接触面の「固着の程度」を内部状態変数にとり,その発展則として,静止摩擦~動摩擦間での固着状態の遷移をa)塑性すべりに伴う破壊とb)時間経過に伴う回復で表現したものである.また,同モデルは動力学解析に搭載すればstick-slip現象を記述可能である2).本稿では,提案モデルを導入した動的微小変形弾性有限要素解析3)を用いて,接触面での法線応力分布が大域的なすべり挙動に与える影響について考察する.
 動的変形解析の単純せん断場への適用事例を示す.解析手法の詳細は既報3)に譲る.有限要素メッシュおよび境界条件は図1のとおり設定した.接触力境界である底面の法線応力分布は,図2のような一様分布(Case 1)と三角形分布(Case 2)を与えた.また,各種パラメータは既報3)に準拠し,接触面での固着の破壊と回復をともに考慮した.初期条件は弾性体が静止状態にあり,接触面全域で固着状態とした.
 Case 1,2について,図1に示した節点1~6における水平変位,領域A~Fにおける摩擦力(接線応力を面積積分した値),固着の程度1/R(既報1)~3)では「構造」の程度と呼んでいる)の時刻歴をそれぞれ図3,図4に示す.なお,固着の程度1/Rについて,1/R=1は固着が完全に破壊された状態を表し,また,固着の回復上限は,今回設定したパラメータの下では1/R=2である.一様な法線応力分布を与えたCase 1では,接触面全域(領域A~F)の固着がほぼ同様の破壊と再生を繰り返す(図3(c))とともに,間欠的なすべりと摩擦力減少が全域で発生した(図3(a),(b)).
これに対し,三角形の法線応力分布を与えたCase 2では,図4(a)のように,すべりの様相も非一様となる.すなわち,法線応力が小さい左端側(節点1)では小さなすべりが高頻度で生じ(せん断開始から1000秒間で5回),接触面の固着が十分に回復しきらない状態(1/Rがおよそ1.5)で次のすべりが起きる(図4(c)).一方,法線応力が大きい右端側(節点6)では大きなすべりが低頻度で生じ(せん断開始から1000秒間で1回),接触面の固着が十分に回復した状態(1/Rがおよそ1.9)で,次のすべりが起きる(図4(c)).以上の結果は,Frohlich4)が示した拘束圧の大きな地殻深部ほど地震発生頻度が減少するという事実に符合する.また,法線応力の小さな接触面左側(領域A,B)で起きたすべりは中央領域で止まる(図4(b)の時間帯(1))が,法線応力の大きな接触面右側(領域E, F)で起きたすべりは必ず左側まで伝播する(図4(b)の時間帯(2)).図4(a), (b)における(1)の時間帯に着目すると,領域A,Bのすべりに伴う摩擦力低下は,周辺領域(主に領域C)の摩擦抵抗により受け持たれてバランスするため,接触面全域にすべりは伝播することはない.しかし,(2)の時間帯では,領域E, Fでのすべりに伴う摩擦力低下は非常に大きいため,周辺領域の摩擦抵抗ではその荷重増分を受け持てず,すべりは留まることなく接触面左端へ伝播してゆく.つまり,法線応力の小さな領域でのすべりは局所的であるが,法線応力が大きな領域でのすべりは周囲へ伝播し大域的にすべる様子が解かれた.
 本研究では,簡単な条件を設定したが,今後,温度や拘束圧の大小が固着状態の発展則に与える影響を調査・考慮することで断層面でのすべり伝播や断層変位による地震波生成,周辺地殻の応力再配置についても分析したい.

(謝辞)本研究の実施にあたり,科学研究費補助金(基盤研究(B):課題番号22H01586)の助成を受けた.

1) Toyoda, T. et al.(2024): Super/sub-loading surface model…, Tribol. Int., 191, 109080.
2) 安池 亮 他(2024): 上下負荷面弾塑性摩擦モデルの提案…, JpGU2024, SSS05-P10.
3) 安池 亮 他(2024): 上下負荷面摩擦モデルによるstick-slip現象…, 第36回中部地盤工学シンポジウム.
4) Frohlich, C.(1989): The nature of deep-focus earthquake, Ann. Rec. Earth Planet. Sci, 17, 227-254.