日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG53] 岩石・鉱物・資源

2025年5月28日(水) 13:45 〜 15:15 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:野崎 達生(早稲田大学 理工学術院 創造理工学研究科 地球・環境資源工学専攻)、西原 遊(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、纐纈 佑衣(名古屋大学大学院 環境学研究科)、座長:野崎 達生(早稲田大学 理工学術院 創造理工学研究科 地球・環境資源工学専攻)

14:00 〜 14:15

[SCG53-02] 東青ヶ島海丘カルデラ熱水サイトにおけるナノコロイド粒子由来の金の沈殿機構

*岡田 賢1、鳥本 淳司2、栗林 貴弘3、長瀬 敏郎3、大和田 朗4石橋 純一郎5、眞壁 明子1高谷 雄太郎2,6野崎 達生2,6 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構、2.早稲田大学、3.東北大学、4.日本薄片(株)、5.神戸大学、6.東京大学)

キーワード:目に見えない金、海底熱水鉱床、東青ヶ島海丘カルデラ、伊豆・小笠原弧、乾式研磨、FIB-SEM

金 (gold) は、主に熱水鉱床の石英脈や硫化鉱物中あるいは漂砂鉱床 (砂金) として産出する。硫化鉱物を含む熱水鉱床において自然金 (もしくは20%以上銀を含んだ合金であるエレクトラム) が晶出するプロセスとして、[Au(HS)2]や[AuCl2]の錯体イオンを含む熱水が沸騰し、コロイド状粒子に還元されたのち集積・結晶化することが重要であると考えられている。金コロイド状粒子は、これまでに径10 nm程度の粒子がヒ素を含む黄鉄鉱中や炭素の包有物中および熱水中から、より大きなコロイド粒子が石英の流体包有物中からそれぞれ報告されていた。しかし、コロイド状の金微粒子が光学顕微鏡で観察できない「目に見えない金」として存在する一方で、コロイド状粒子がどのように凝集し、最終的に百mmを超えるような金粒子の成長に関わるかは明らかになっていなかった。そこで本研究では、東青ヶ島東方沖の海底熱水サイトから採取された硫化物鉱石中に含まれる金について電子顕微鏡を用いた多角的分析を行い、nmサイズの金コロイド粒子がμmサイズの金粒子へと成長すること、およびその過程で銀に乏しい部分が生成することを明らかにした。
東京都青ヶ島は伊豆七島の1つを構成する島であり、その東約12 kmの海底に海丘カルデラ熱水域が存在する。カルデラ中にはこれまでに4箇所の熱水噴出サイトが確認されている。中でもCentral Cone (CC) サイトでは、海底下で沸騰した熱水が噴出しており、そのマウンド鉱石中には金、銀がそれぞれ平均102、432 ppm含まれていることが先行研究により報告されている。本研究では,このCCサイトの金に富むマウンド鉱石試料を無人探査機ハイパードルフィンにより採取し、各種記載と電子顕微鏡による分析を行った。
マウンド試料は、閃亜鉛鉱 (Sp)、重晶石 (Brt)、方鉛鉱 (Gn)、黄銅鉱 (Ccp),黄鉄鉱 (Py) 等の硫化鉱物および硫酸塩鉱物から構成され、少量のオパール (Opl) や粘土鉱物を含む。金は、閃亜鉛鉱結晶中の周縁部あるいは閃亜鉛鉱とオパールの境界において多く観察され、その一般的なサイズは10 μm程度であった。産状は薄片・研磨片観察により行われるが、金は延性が高く、通常の湿式研磨では金周辺の空隙を埋めてしまうなどの損傷を与えてしまうことが明らかとなった。そこで我々は、試料の研磨中にかかる荷重を最小限にし、また一切水を使わない乾式研磨法を用いることで、金粒子周辺に存在する空隙構造や金粒子のオリジナルな内部構造を保持できることを明らかにした。空隙はオパールに接する側の面で顕著であり、閃亜鉛鉱に接する面ではまれであった。EPMAおよびSEM-EDS分析より、金粒子中の金含有量は90%を超え、鉱物学的には自然金に分類された。
収束イオンビーム (FIB)-SEMにより三次元構造を分析し、金粒子に取り込まれている方鉛鉱粒子や、金表面を薄く被覆するように成長した黄銅鉱など、金が低温で成長した後、熱水の温度が一時的に上昇したことを示唆する構造が観察された (図A、B)。さらに、20 nm程度の微粒子が金粒子端面に付着していることが確認された。また、断面のSEM-EDS分析から、銀が金粒子のオパール側端面に局在していることが明らかとなった (図B)。FIBにより超薄膜を作成し、TEMおよびSTEM-EDSにより微細構造を詳細に分析した結果、端面には10 nm前後の粒子が付着しており、銀が約40%程度含まれていた。これらの結果は、初生的なコロイド状粒子は金と銀の合金 (エレクトラム) であり、結晶成長する過程で熱水側に銀が溶出して最終的に金に富む粒子が生成したことを示唆している。この金粒子の生成メカニズムは、輝銀鉱などの銀を主成分とする鉱物が別途観察されていること、HS錯体の溶解度が金よりも銀のほうが高いことなどと調和的である。
本研究は科研費JP23K13211、JP23H03812、JP23H01914、JSPS二国間交流事業JPJSBP120229945およびキャノン財団助成の支援を受けた。
図 (A) 金粒子周りのFIB-SEMによる三次元再構築像。 (B) (A)の一断面におけるEDS分析。赤三角は金に付着したコロイド粒子を示す。黄矢印はSEMとEDSで同じ位置を示す。スケールバーは2 μm。