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[SCG53-07] 低結晶化度炭質物のラマンスペクトル解析にレーザー強度が与える影響の評価

キーワード:炭質物、ラマン分光法、炭質物ラマン温度計、レーザー照射
炭質物ラマン温度計[1][2][3]は岩石中の炭質物のラマンスペクトルを取得し、その結晶構造情報から炭質物の最高被熱温度を推定する手法である。近年、この手法を用いて変成岩体の詳細な温度構造の推定が行われている。炭質物は分析時に照射されるレーザーの影響を受けることで、比較的低いレーザー強度であってもラマンスペクトルの形が変化することが報告されている。一方で、十分なレーザー強度がない場合、得られるラマンスペクトルのシグナルに対するノイズが大きくなり、測定の誤差が大きくなることが知られている。先行研究では高結晶化度の炭質物(=石墨)を対象としており、低結晶化度の炭質物へのレーザー照射の影響は十分に評価されていない[4][5]。そこで、本研究では低結晶化度の炭質物を測定する適切なレーザー強度とその他測定条件を明らかにするために、ノイズやレーザー照射による炭質物のラマンスペクトルの変化について評価を行った。
低結晶化度の炭質物ラマンスペクトルの変化の評価を行うため、南部北上帯稲井層群大沢層(下部三畳系)、九頭竜層群(中部ジュラ系)、三波川帯汗見川地域緑泥石帯(白亜紀)の3つの時代と続成史が異なる地質体から採取した泥質岩または泥質片岩を用いた。それぞれの炭質物ラマン温度計の推定続成・変成温度は、約250 ℃、270 ℃、300 ℃であった。レーザーが低出力条件下と高出力条件下のそれぞれの場合において、炭質物ラマンスペクトルに与える影響を評価するため、下記の点について評価を行った。
(1)低出力条件下:ノイズがスペクトルパラメーターや見積り温度の誤差に与える影響を評価するため、SNR(Signal-to-Noise Ratio)[YK1] を算出し、複数回同じ炭質物を測定することで得られた測定誤差と比較した。SNRはラマンスペクトルのピーク強度とバックグランドノイズの標準偏差から算出した。また、露光時間を変化させたときのSNRの変化を求めた。
(2)高出力条件下:レーザー強度や露光時間を変えて測定し、比較を行なった。また、異なる対物レンズや分光装置を用いた測定でもレーザー強度を変えて比較を行なった。
上記の評価を行った結果、(1)ではSNRが20以上のとき十分なスペクトルの強度が得られ、誤差が小さくなることが分かった。本研究で用いたラマン分光装置ではレーザー強度が0.5 mW程度でSNRが20以上のスペクトルを検出できた。(2)では50倍の対物レンズを使用し、露光時間10秒×3回の測定において、2 mW以上の測定で炭質物のラマンスペクトルに変化が見られた。以上の結果から、低変成度の炭質物に対して炭質物ラマン温度計を適用する場合、0.5–2 mWが測定時の適切なレーザー強度であることが示された。これはKouketsu et al. (2014)[3]で経験則的に決定されていた1–3 mWと異なる結果であり、低結晶化度の炭質物ではよりレーザー強度を抑えて測定する必要があると考えられる。
[1] Beyssac et al. (2002) J. Metamorph. Geol., 20, 858–871. [2] Aoya et al. (2010) J. Metamorp. Geol., 28, 895–914. [3] Kouketsu et al. (2014) Isl. Arc, 52, 33–50. [4] Kagi et al. (1994) Geochim. Cosmochim. Acta, 58, 3527–3530. [5] Niwase (1995) Phys. Rev. B, 23, 15785–15798.
低結晶化度の炭質物ラマンスペクトルの変化の評価を行うため、南部北上帯稲井層群大沢層(下部三畳系)、九頭竜層群(中部ジュラ系)、三波川帯汗見川地域緑泥石帯(白亜紀)の3つの時代と続成史が異なる地質体から採取した泥質岩または泥質片岩を用いた。それぞれの炭質物ラマン温度計の推定続成・変成温度は、約250 ℃、270 ℃、300 ℃であった。レーザーが低出力条件下と高出力条件下のそれぞれの場合において、炭質物ラマンスペクトルに与える影響を評価するため、下記の点について評価を行った。
(1)低出力条件下:ノイズがスペクトルパラメーターや見積り温度の誤差に与える影響を評価するため、SNR(Signal-to-Noise Ratio)[YK1] を算出し、複数回同じ炭質物を測定することで得られた測定誤差と比較した。SNRはラマンスペクトルのピーク強度とバックグランドノイズの標準偏差から算出した。また、露光時間を変化させたときのSNRの変化を求めた。
(2)高出力条件下:レーザー強度や露光時間を変えて測定し、比較を行なった。また、異なる対物レンズや分光装置を用いた測定でもレーザー強度を変えて比較を行なった。
上記の評価を行った結果、(1)ではSNRが20以上のとき十分なスペクトルの強度が得られ、誤差が小さくなることが分かった。本研究で用いたラマン分光装置ではレーザー強度が0.5 mW程度でSNRが20以上のスペクトルを検出できた。(2)では50倍の対物レンズを使用し、露光時間10秒×3回の測定において、2 mW以上の測定で炭質物のラマンスペクトルに変化が見られた。以上の結果から、低変成度の炭質物に対して炭質物ラマン温度計を適用する場合、0.5–2 mWが測定時の適切なレーザー強度であることが示された。これはKouketsu et al. (2014)[3]で経験則的に決定されていた1–3 mWと異なる結果であり、低結晶化度の炭質物ではよりレーザー強度を抑えて測定する必要があると考えられる。
[1] Beyssac et al. (2002) J. Metamorph. Geol., 20, 858–871. [2] Aoya et al. (2010) J. Metamorp. Geol., 28, 895–914. [3] Kouketsu et al. (2014) Isl. Arc, 52, 33–50. [4] Kagi et al. (1994) Geochim. Cosmochim. Acta, 58, 3527–3530. [5] Niwase (1995) Phys. Rev. B, 23, 15785–15798.