日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG53] 岩石・鉱物・資源

2025年5月28日(水) 15:30 〜 17:00 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:野崎 達生(早稲田大学 理工学術院 創造理工学研究科 地球・環境資源工学専攻)、西原 遊(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、纐纈 佑衣(名古屋大学大学院 環境学研究科)、座長:西原 遊(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、纐纈 佑衣(名古屋大学大学院 環境学研究科)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)

16:00 〜 16:15

[SCG53-09] ALCHEMIによるオリビン結晶内での陽イオンのサイト選択性と冷却速度の推定

*伊神 洋平1無盡 真弓2秋澤 紀克3三宅 亮1 (1.京都大学、2.東北大学、3.広島大学)

キーワード:オリビン、陽イオンサイト分配、分析電子顕微鏡、冷却速度

オリビン[Mg,Fe]2SiO4は結晶構造中に二種類の酸素八面体サイト(M1, M2)を持つ。MgとFeはおおざっぱにはM1, M2サイトに同程度に分布するが、実際にはFeは僅かにM1サイトへの配置を好む性質があり高温ほどその傾向は顕著になるとされる(e.g., Heinemann et al. 2006)。こうしたオリビンにおけるFeのM1-M2サイト間分配挙動は、高温下で一般に生じる配列無秩序化と比べて一見反する挙動であり興味が持たれてきた (e.g., Aikawa et al., 1985)。Heinemann et al. (2007) はこの問題に対して高温X線回折実験に基づく研究を行い、Fe濃度(Fo#)と温度に対するFeのM1-M2席分配との関係を定式化している。
地球惑星科学的応用の観点では、オリビンのM1-M2 サイト間の元素交換速度が比較的速いために高温時の情報は消失してしまいやすいと思われるが、その反面で高温時のM1-M2サイト間分配の残存(凍結)程度が冷却速度をよく反映することが期待される(e.g., Redfern et al., 1996)。そこで我々は岩石組織内のオリビン結晶一粒子に応用可能な冷却履歴評価法の構築を目指し、オリビン中の陽イオンのサイト分配に関する実験的研究を行っている。
分析手法には、集束イオンビーム装置(FIB)を用いたマイクロサンプリングと、TEM-EDS装置を用いて行うALCHEMI (Atom-location by channeling-enhanced microanalysis, Spence & Taftø, 1983)を採用した。この手法をとることで、岩石片の組織観察をしたうえで特定のオリビン粒子の評価につなげることができ、地質学的応用が期待できる。また、ALCHEMIは微量かつ複数元素のサイト分配の決定が得意であり(Spence & Taftø, 1983; Motoyama et al., 1995)、オリビンのCa、Mn、Niなどの微量元素の挙動をFeに加えて得られれば全く新たな熱履歴情報源にもなりえる。
実験試料にはSan Carlos産オリビンを用い、FIBで薄膜試料を作成した。薄膜はTEM内加熱用のMEMSチップに設置し、真空(~1×10-5 Pa)内で1000℃, 5 h保持した後に、一定の速度(~10-3–102 °C /s)に制御して室温まで冷却した。ALCHEMIでは00l系統列反射条件下で多くのビーム傾斜に対する各元素の特性X線強度変化プロファイルを収集した(e.g., Soeda et al., 2000; Muto & Ohtsuka, 2017; Igami et al., 2018)。得られたX線強度プロファイルとICSC (Oxley & Allen, 2003)で得たサイト毎の理論プロファイルとの線形回帰によって、各元素の結晶内分布を決定した。また、他の天然オリビン試料のALCHEMI分析も行った。
分析の結果、各元素のサイト選択性は先行研究同様の傾向、すなわちFeは多くの場合でわずかにM1サイトへ、Niは強くM1サイトへ、MnやCaは強くM2サイトへ集中する結果を示した。Ca, Mn, Niのサイト間分配と冷却速度との関係は今回の実験で明瞭に確認できなかったが、Feについては冷却速度が大きいほどM1への集中が現れた。天然試料では火山噴出物由来のオリビンのFeが全てM1に集中する反面、岩体として徐冷を受けたと考えられる幌満産オリビンのみFeがM2に集中する結果となった。こうした天然のオリビン一粒子のFeのM1-M2間サイト分配係数を本実験結果と比較することで冷却速度推定につなげられる可能性がある。現状では、ALCHEMI一点での計測では冷却速度推定値の誤差が大きいといった問題が残るが、複数のオリビン粒子の計測などにより応用に展開できるかもしれない。