14:30 〜 14:45
[SCG54-16] レシーバー関数イメージングによるマントル遷移層までの新しい流体輸送モデル
★招待講演
キーワード:太平洋プレート、蛇紋岩層、沈み込み
地球物理学的観測から、東北日本のような沈み込み帯深部のマントル遷移層には大量の水が存在することが明らかになっている(例えば、Kelbert et al., 2009)。この水は海洋プレートの沈み込みによってもたらされると考えられているが、その輸送メカニズムはよくわかっていない。海洋プレートによって地下へもたらされた流体は、主に海洋地殻の相転移に伴って脱水し大部分がマントルウェッジへと放出される。この脱水深度はプレートの温度に依存し、低温なスラブほど深部まで流体を供給できるが、東北日本のような冷たいプレートであっても深さ95 km程度までに主要な脱水反応が完了すると考えられている (例えば、片山他 2010)。一方で地殻から放出された水はマントルウェッジのかんらん岩と反応し、スラブ直上に蛇紋岩層を形成する。この蛇紋岩層はスラブと共に沈み込み、深さ200 kmを越える深部への水の供給源となる(例えば、Iwamori 2000)。さらに、プレートが低温状態を維持できる場合、蛇紋岩はPhase Aという新たな含水層に相転移し、より深部まで水を輸送することが可能になる(Iwamori 2000, Komabayashi et al., 2005)。しかし、これらのスラブ直上の蛇紋岩層やPhase A層の存在を直接的に捉えた研究は非常に少ない。既存の研究も特定の測線における観測結果に基づくものであり、含水層の空間的な分布は十分に解明されていない (Kawakatsu and Watada 2007; Tonegawa et al., 2008)。そこで本研究では傾斜面構造の解析に特化した新しいレシーバー関数イメージング手法を用いて、東北日本沈み込み帯におけるスラブ直上の含水層の空間的な分布を網羅的に調査した。
本研究では、2005年4月から2023年3月までに発生した地震のうち、マグニチュード5.5以上で震央距離が30-90°の範囲にある1086個の地震波形を解析に使用した。まずMaeda et al. (2011)の手法に基づいて機器補正を行った。その後、SN比の良い波形について0.1-0.5 Hzの周波数帯域においてウォーターレベル法 (water level =0.001)を適用してレシーバー関数を計算した。得られたレシーバー関数はIASP91一次元速度モデル(Kennett and Engdahl, 1991)を用いて断面に投影した。この過程で、太平洋プレートの形状(Nakajima et al., 2009)を考慮し、プレート表面における屈折の影響を数学的に評価した。さらにRadial 成分とTransverse成分を合成することで振幅を補正する手法を開発し、解析に適用した。最終的に、東北日本沈み込み帯において17本の測線を設定し、各測線についてプレート形状を考慮した新しいスタッキング手法を用いて断面イメージを作成した。
解析の結果、ほぼ全ての測線において、浅部ではスラブ表面と海洋モホ面、深部ではスラブ直上の含水層の底面(スラブ表面)に対応する明瞭な速度境界面がイメージされた。スラブ表面と海洋モホ面の速度コントラストは深さ90~160 kmの範囲で消失し、これはエクロジャイト相転移とそれに伴う脱水現象の深さを反映していると考えられる。このエクロジャイト相転移の発生深さには地域性が存在し、特に関東地方の下では東北地方と比較して約30 km深い位置で反応が生じることが明らかになった。この現象は、フィリピン海プレートの重なりよって太平洋プレートが低温状態を維持するという従来のモデル(例えば、Hasegawa et al., 2007)と整合的である。さらにスラブ直上の含水層がマントル遷移層まで連続的に存在することが明らかになった。一方で、深さ300~400 kmにおいてスラブ内部にオリビン準安定領域(Metastable olivine wedge)と解釈される速度コントラストがイメージされた。この結果は、この地域においてスラブマントルによる水輸送が遷移層へ及んでいないことを示唆している。本研究の結果は、マントル遷移層への流体輸送を担っているのはスラブではなく、その頂上に形成される含水層であることを強く示唆している。講演ではマントル遷移層への新しい水輸送モデルを提案する。
本研究では、2005年4月から2023年3月までに発生した地震のうち、マグニチュード5.5以上で震央距離が30-90°の範囲にある1086個の地震波形を解析に使用した。まずMaeda et al. (2011)の手法に基づいて機器補正を行った。その後、SN比の良い波形について0.1-0.5 Hzの周波数帯域においてウォーターレベル法 (water level =0.001)を適用してレシーバー関数を計算した。得られたレシーバー関数はIASP91一次元速度モデル(Kennett and Engdahl, 1991)を用いて断面に投影した。この過程で、太平洋プレートの形状(Nakajima et al., 2009)を考慮し、プレート表面における屈折の影響を数学的に評価した。さらにRadial 成分とTransverse成分を合成することで振幅を補正する手法を開発し、解析に適用した。最終的に、東北日本沈み込み帯において17本の測線を設定し、各測線についてプレート形状を考慮した新しいスタッキング手法を用いて断面イメージを作成した。
解析の結果、ほぼ全ての測線において、浅部ではスラブ表面と海洋モホ面、深部ではスラブ直上の含水層の底面(スラブ表面)に対応する明瞭な速度境界面がイメージされた。スラブ表面と海洋モホ面の速度コントラストは深さ90~160 kmの範囲で消失し、これはエクロジャイト相転移とそれに伴う脱水現象の深さを反映していると考えられる。このエクロジャイト相転移の発生深さには地域性が存在し、特に関東地方の下では東北地方と比較して約30 km深い位置で反応が生じることが明らかになった。この現象は、フィリピン海プレートの重なりよって太平洋プレートが低温状態を維持するという従来のモデル(例えば、Hasegawa et al., 2007)と整合的である。さらにスラブ直上の含水層がマントル遷移層まで連続的に存在することが明らかになった。一方で、深さ300~400 kmにおいてスラブ内部にオリビン準安定領域(Metastable olivine wedge)と解釈される速度コントラストがイメージされた。この結果は、この地域においてスラブマントルによる水輸送が遷移層へ及んでいないことを示唆している。本研究の結果は、マントル遷移層への流体輸送を担っているのはスラブではなく、その頂上に形成される含水層であることを強く示唆している。講演ではマントル遷移層への新しい水輸送モデルを提案する。