日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG54] 岩石―流体相互作用の新展開:表層から沈み込み帯深部まで

2025年5月30日(金) 13:45 〜 15:15 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:岡本 敦(東北大学大学院環境科学研究科)、武藤 潤(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、片山 郁夫(広島大学大学院先進理工系科学研究科地球惑星システム学プログラム)、中島 淳一(東京科学大学理学院地球惑星科学系)、座長:宮崎 一希(東京工業大学理学院地球惑星科学系)、畠山 航平(明星大学教育学部教育学科)

14:45 〜 15:00

[SCG54-17] マルチスケールグローバルトモグラフィーによる日本海とその周辺地域下のマントル構造

*佐藤 匠1豊国 源知1趙 大鵬1 (1.東北大学 大学院理学研究科 地震・噴火予知研究観測センター)


キーワード:日本海、地震波トモグラフィー、上部マントル、沈み込み帯、ビッグマントルウェッジ

日本海の拡大は,太平洋プレートの沈み込みに伴って引き起こされた現象であり,東アジア東縁部の太平洋スラブ上に存在するBig Mantle Wedge (BMW)の活動の一環として説明される (e.g. Zhao et al., 2004).BMWでは,沈み込む太平洋スラブからの脱水によって誘発されたマントル上昇流によって,沈み込み帯から遠く離れた東アジア内陸部の火山活動やプレート内地震の発生を説明可能である.しかし日本海とその周囲については,十分な観測点数がないため,陸域と比較して地下構造に不明な点が多い.
日本海を対象とした地震波トモグラフィー研究ではこれまで,主に近地地震と遠地地震を用いたリージョナルトモグラフィーが行われてきた.遠地地震を用いた解析では,対象領域外の構造不均質の影響を,研究領域内にある全観測点に共通と仮定して差し引く,相対走時が用いられる.一方,絶対走時を用いるグローバルトモグラフィーでは,こうした仮定を必要としないが,領域が大きいため分解能が相対的に落ちるデメリットがあった.Zhao et al. (2017) は,対象領域のみグリッドを細かく配置する新たなグローバルトモグラフィー手法(=マルチスケールトモグラフィー)を開発し,リージョナルトモグラフィーと同等の分解能を実現した.
本研究では,マルチスケールトモグラフィー法を日本海とその周辺地域下に適用し,上部マントルにおける詳細な3次元P波速度構造モデルを構築する.データとして2種類のデータセットを構築した.1つ目は,ISC-EHBカタログによる14,286個の地震と14,145点の観測点による,6,408,268個の P,pP,PP波の到着時刻データである(=データセット1).2つ目は,Chen et al. (2017) で用いられたNECESSArrayによるデータセットのうち,絶対走時で計算が可能な近地地震のデータのみを抽出したもので, 228個の地震と,中国・韓国・日本に分布する683点の観測点による15,769個のP波到着時刻データからなる(=データセット2).計算の対象領域は,緯度 [30°N, 50°N],経度 [120°E, 145°E],深さ [0 km, 950 km] とした.初期速度構造モデルにはIASP91 (Kennett & Engdahl, 1991) を使用した.
データセット1のみを用いた計算では,以下のような構造が明らかとなった.(1) 日本海下の深さ100 kmにおける速度構造が,北緯約40°を境に南北で変化している.特に南側では,BMWを反映すると思われる明瞭な低速度域が確認された.(2) ウラジオストク近郊下の深さ500 km付近に,太平洋スラブからの脱水とみられる低速度域が見いだされた.(3) ユーラシア大陸下の上部マントルには,スポット状の高速度域が見いだされた.これは高密度化した大陸リソスフェアのデラミネーション等を反映している可能性がある.
本発表では,以上の結果に加え,データセット2と組み合わせた結果や,PcPやPdiffの到着時刻を加えた結果も紹介する予定である.