日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG54] 岩石―流体相互作用の新展開:表層から沈み込み帯深部まで

2025年5月30日(金) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:岡本 敦(東北大学大学院環境科学研究科)、武藤 潤(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、片山 郁夫(広島大学大学院先進理工系科学研究科地球惑星システム学プログラム)、中島 淳一(東京科学大学理学院地球惑星科学系)

17:15 〜 19:15

[SCG54-P04] 有限要素法による離散亀裂ネットワークを含む岩盤の弾性係数テンソル評価

*竿本 英貴1 (1.産業技術総合研究所)

キーワード:有限要素法、離散亀裂ネットワーク、弾性係数テンソル、平均化

岩盤内に存在する亀裂群は,その力学特性や透水性に大きな影響を与えるため,正確なモデル化が求められている.その中で,Discrete Fracture Network(DFN)は亀裂群を模擬する有効な手法として広く採用されている.また,DFNからDershowitzのPij値を算出することで亀裂密度や配置を幾何学的に定量評価できる.従来,亀裂群の配置が岩盤全体の巨視的特性に与える影響については,国内外で多くの研究が進められ,国内においても亀裂のフラクタル特性 [4][5]やトレース長,開口幅についての統計結果 [6][7][8] が蓄積されている.これらの研究は亀裂配置の重要性を早くから指摘しており,岩盤工学的設計における亀裂モデリングを実施する上で必要不可欠な知見である.
 本研究では,2 mから100 mの範囲で亀裂のトレース長を確率密度関数に基づき設定し,この分布に従ってDFNを生成した.生成されたDFNに対し,有限要素法を用いた解析を行い,巨視的な弾性係数テンソルを評価した.本解析では周期境界条件を適用し,解析モデル内の応力-ひずみ関係を考慮することで巨視的な等価弾性係数テンソルを算出する平均化法を採用した.DershowitzのPij値をDFNについて別途計算し,これと弾性係数テンソルの成分との関係性を調べた結果,Pij値が増加するに従い,弾性係数テンソルの成分が多くの場合反比例的に減少する傾向が確認された.これは,亀裂の密度が増加することで岩盤全体の剛性が低下する現象を反映している.また,亀裂が完全にランダムな方位を有している場合のほか,特定の方位に集中する場合についても併せて検討した.一連の有限要素解析については,汎用工学ソフトウェア COMSOL Multiphysics上で実装した.
 本研究で採用したDFNを用いた解析手法は,亀裂部とマトリクス部の物性値が既知である場合,巨視的な異方弾性係数だけでなく,透水係数や熱伝導係数といった他の物性についても定量的に評価することが可能である.今後は,亀裂群生成のためのパラメータの調整や異なるスケールでの解析を実施し,実測値と比較することで本手法の精度を検証したい.

参考文献
[1] W. S. Dershowitz and H. H. Herda, “Interpretation of Fracture Spacing and Intensity,” in Proc. 33rd U.S. Symp. Rock Mechanics (USRMS), 1992.
[2] D. Gottron and A. Henk, “Upscaling of Fractured Rock Mass Properties – An Example Comparing Discrete Fracture Network (DFN) Modeling and Empirical Relations Based on Engineering Rock Mass Classifications,” Eng. Geol., vol. 294, Dec. 2021, Art. no. 106382.
[3] Q. D. Boersma, “Natural Fracture Network Characterisation: Numerical Modelling, Outcrop Analysis and Subsurface Data,” Delft University Publishers, Delft, Netherlands, 2020.
[4] 大野博之 , 小島圭二, “岩盤割れ目のフラクタル (その 1)― フラクタル分布―,” 応用地質, vol. 33, no. 3, pp. 133–146, 1992.
[5] 大野博之, 小島圭二, “岩盤割れ目のフラクタル (その2)―フラクタル特性と分布のばらつき,” 応用地質, vol. 34, no. 2, pp. 58–72, 1993.
[6] 井尻裕二, 澤田淳, 赤堀邦晃, “我が国の岩盤における亀裂特性について,” 核燃料サイクル開発機構東海事業所研究報告, JNC TN8400 99-091, 1999.
[7] 井尻裕二, 澤田淳, 赤堀邦晃, “我が国の岩盤の水理特性について,” 核燃料サイクル開発機構東海事業所研究報告, JNC TN8400 99-090, 1999.
[8] 井尻裕二, 深田淳, 坂本和彦, 内田雅大, 石黒勝彦, 梅木博之, 大西有三, “割れ目ネットワークモデルの水理特性に及ぼす割れ目スケール効果の影響,” 土木学会論文集, no. 694, pp. 179–194, 2001.