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[SCG54-P05] 野母半島長崎変成岩類における緑泥石-アクチノ閃石片岩の変形機構

キーワード:アクチノ閃石、長崎変成岩類、転位クリープ、溶解-沈殿クリープ、沈み込み帯、レオロジー
沈み込み帯の浅部スラブ-マントル境界域のレオロジー的性質を調べることは,プレート境界における粘性デカップリングの程度やスロースリップに代表される深部スロー地震の発生機構を理解する上で重要である(Tarling et al., 2019; Tulley et al., 2022; Nishiyama et al., 2023).Nishiyama et al. (2023)は西彼杵変成岩類におけるテクトニックメランジュ(Mie mélange)について構造地質学的および地球化学的研究を行い,マントルウェッジ起源の蛇紋岩と沈み込んだ海洋地殻起源の塩基性片岩との間の高い化学ポテンシャル勾配に起因して起こる交代作用の結果,緑泥石-アクチノ閃石片岩(chlorite-actinolite schist; CAS)からなる剪断帯がスラブ-マントル境界域に形成されることを明らかにした.Nishiyama et al. (2023)は,CAS中のアクチノ閃石に化学的ゾーニングやゾーニングを切る構造(truncation)が認められることから,CASの主要な変形機構が溶解-沈殿クリープであったと結論付けている.しかし,CASの変形機構を明らかにするための構造岩石学的研究は,西彼杵変成岩類のCASを除いてほとんど行われていない.そこで本研究では,長崎県野母変成岩類に分布するCASを研究対象として,微細構造解析を行った.
野母変成岩類には,蛇紋岩体と塩基性片岩の間の岩相境界に沿って超塩基性メランジュ(西山ほか, 1997)が数mから数10 mの幅にわたって分布する.CASは超塩基性メランジュに発達する片理と平行な開口割れ目を充填する形で産する.CASに見られる片理は,針状アクチノ閃石粒子(長軸長さ50〜200 μm)の集合体が形態定向配列することによって形成されている.さらに,CASには細粒緑泥石の集合体で構成されるレンズ状部が存在し,レンズ状部の長軸方向を線構造として規定することができる.アクチノ閃石粒子群はこれらのレンズ状部を取り囲むように存在する.また,長軸長さ1 mmを超える粗粒なアクチノ閃石の集合体も認められ,片理に沿った開口割れ目を充填する形で産する.
細粒アクチノ閃石集合体について電子後方散乱回折法を用いた結晶方位解析を行った結果,[100]軸が片理面に垂直な方向に,[010]軸が片理面に平行で線構造に垂直な方向に,[001]軸が線構造に平行な方向に配向する顕著な結晶方位定向配列が認められた.逆極点図方位マップを見ると,波動消光や結晶の長軸方向に平行な亜粒界が存在する.さらに,15°未満の方位差角をもつ隣接粒子ペアが高頻度に見られた.これらの微細構造的特徴は,CAS中のアクチノ閃石が亜粒界回転による動的再結晶による結晶内変形を被った可能性を示唆する.今後は,アクチノ閃石に転位クリープに加えて溶解-沈殿クリープの痕跡がないか調べるために,細粒アクチノ閃石集合体に対して元素マッピングを実施する予定である.
引用文献:Tarling et al. (2019), Nature Geoscience, 12, 1034-1042. Tulley et al. (2022), Geophysical Research Letters, 49, e2022GL098945. Nishiyama et al. (2023), Lithos, 446-447, 107115. 西山ほか(1997),日本地質学会104年学術大会見学旅行案内書,131-162.
野母変成岩類には,蛇紋岩体と塩基性片岩の間の岩相境界に沿って超塩基性メランジュ(西山ほか, 1997)が数mから数10 mの幅にわたって分布する.CASは超塩基性メランジュに発達する片理と平行な開口割れ目を充填する形で産する.CASに見られる片理は,針状アクチノ閃石粒子(長軸長さ50〜200 μm)の集合体が形態定向配列することによって形成されている.さらに,CASには細粒緑泥石の集合体で構成されるレンズ状部が存在し,レンズ状部の長軸方向を線構造として規定することができる.アクチノ閃石粒子群はこれらのレンズ状部を取り囲むように存在する.また,長軸長さ1 mmを超える粗粒なアクチノ閃石の集合体も認められ,片理に沿った開口割れ目を充填する形で産する.
細粒アクチノ閃石集合体について電子後方散乱回折法を用いた結晶方位解析を行った結果,[100]軸が片理面に垂直な方向に,[010]軸が片理面に平行で線構造に垂直な方向に,[001]軸が線構造に平行な方向に配向する顕著な結晶方位定向配列が認められた.逆極点図方位マップを見ると,波動消光や結晶の長軸方向に平行な亜粒界が存在する.さらに,15°未満の方位差角をもつ隣接粒子ペアが高頻度に見られた.これらの微細構造的特徴は,CAS中のアクチノ閃石が亜粒界回転による動的再結晶による結晶内変形を被った可能性を示唆する.今後は,アクチノ閃石に転位クリープに加えて溶解-沈殿クリープの痕跡がないか調べるために,細粒アクチノ閃石集合体に対して元素マッピングを実施する予定である.
引用文献:Tarling et al. (2019), Nature Geoscience, 12, 1034-1042. Tulley et al. (2022), Geophysical Research Letters, 49, e2022GL098945. Nishiyama et al. (2023), Lithos, 446-447, 107115. 西山ほか(1997),日本地質学会104年学術大会見学旅行案内書,131-162.