日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG54] 岩石―流体相互作用の新展開:表層から沈み込み帯深部まで

2025年5月30日(金) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:岡本 敦(東北大学大学院環境科学研究科)、武藤 潤(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、片山 郁夫(広島大学大学院先進理工系科学研究科地球惑星システム学プログラム)、中島 淳一(東京科学大学理学院地球惑星科学系)

17:15 〜 19:15

[SCG54-P12] かんらん岩と蛇紋岩の結晶方位解析と弾性波速度の多成分測定の比較

*伊藤 禎宏1片山 郁夫1道林 克禎2,3松山 和樹2,4 (1.広島大学大学院 先進理工系科学研究科、2.名古屋大学大学院 環境学研究科、3.JAMSTEC海洋研究開発機構 海域地震火山部門 火山・地球内部研究センター、4.モンペリエ大学 地球科学部門)

キーワード:超塩基性岩、地震波速度、異方性、結晶選択配向

沈み込み帯で起こるさまざまな現象には水が関わっている.蛇紋岩の形成もそのうちの一つである.地球深部における水は地震波速度などの地球物理観測によって近年明らかになっている.これらの結果の解釈には等方的な岩石の物性値が使われており,岩石の異方性は考慮されていない.また,かんらん岩の弾性波速度異方性は走査型電子顕微鏡による後方散乱電子回折 (SEM-EBSD)によって評価されてきたが,その異方性にはクラックの影響が含まれていない.そのため本研究では,片理の発達したかんらん岩の弾性波速度の多成分測定とSEM-EBSDによる結晶方位定向配列 (CPO)の測定を行い,その比較からクラックが弾性波速度異方性に与える影響を明確にすることを目的とする.
本研究で用いた岩石試料は,愛媛県東赤石山保土谷で採取されたかんらん岩と長崎県野母半島で採取された蛇紋岩であり,偏光顕微鏡下でも強い鉱物の定向配列を持っている.かんらん岩の主要構成鉱物はかんらん石,アンチゴライト,蛇紋岩の主要構成鉱物はアンチゴライトである.測定する方向を決めるために,線構造に平行な方向をX軸,片理面に垂直な方向をZ軸とした.これら岩石について,実験室での弾性波速度の測定を行い,岩石のバルクの弾性波速度異方性を評価した.弾性波速度の測定には,容器内透水変形試験機を用いた.実験条件は封圧を5 MPaから200 MPaまで段階的に加圧・制御し,圧力効果を調べた.流体には0.5 mol/LのNaCl溶液を用い,流体圧は1 MPaに制御して室温下で実験を行った.また,名古屋大学の走査型電子顕微鏡による後方散乱電子回折(SEM-EBSD)によってかんらん石とアンチゴライトの結晶方位定向配列(CPO)の測定を行い,鉱物の弾性波速度の異方性を評価した.かんらん石CPOはVp-Flinn diagramを用いて定量的なタイプ分類を行った.
実験の結果として蛇紋岩,かんらん岩のP波速度はX軸,Y軸方向が,片理面にZ軸方向よりも速い傾向を示した.蛇紋岩は,X軸,Y軸方向でのP波速度がほぼ同じ値であることに対し,かんらん岩はX軸方向が最もP波速度が速い傾向を示した.S波速度は片理面に平行に伝播振動する成分が,片理面を横切る伝播方向や振動方向に比べて速い傾向を示した.200 MPa下では,弾性波速度の異方性が15%程度のこり,これは鉱物の結晶選択配向によるものだと考えられる.この実験から得られた多成分の弾性波速度から,弾性定数テンソルを計算し,岩石のバルクの弾性波速度極図を作成した.SEM-EBSDのかんらん岩の結果として,かんらん石CPOはVp-Flinn diagram からBタイプに分類された.アンチゴライトCPOはb軸がX軸に強い集中,c軸がZ軸とY軸に弱い集中が見られた.蛇紋岩の結果として,アンチゴライトはb軸がX軸に弱い集中,c軸がZ軸に強い集中が見られた.これらのCPOと各鉱物の弾性定数を基に弾性波速度極図を作成し,鉱物による弾性波速度異方性を評価した.その結果,かんらん岩の弾性波速度はAタイプのようなふるまいをすることが分かった.これはアンチゴライトの影響だと考えられる.これらの結果を基にクラックが弾性波速度異方性に与える影響を議論する.