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[SCG54-P13] 野母変成岩類における交代作用を被ったテクトニックメランジュの構造岩石学的・地球化学的解析

キーワード:交代作用、長崎変成岩類、テクトニックメランジュ、溶解-析出クリープ
沈み込み帯のスラブ・マントル境界域は,沈み込む海洋地殻とマントルウェッジを構成する岩石が機械的に混合する場所であることが知られている(Bebout and Penniston-Dorland, 2016; Mori et al 2014).そのようなプレート境界域では,スラブとマントルウェッジ起源の岩石がブロックとして産する一方,ブロック周辺のマトリックス部分にはスラブ由来の流体の存在下における交代作用に起因して生成した含水鉱物が存在する(Bebout and Penniston-Dorland, 2016; Tarling et al, 2019).また,交代作用は脱水反応であるため,間隙流体圧の上昇に伴った水圧破砕が生じた可能性も指摘されている(Nishiyama et al., 2017).九州西部の野母変成岩類に分布する蛇紋岩体と結晶片岩類との境界部には,CaO・Na2O交代作用に起因して形成されたテクトニックメランジュが幅数mから数10mにわたって存在する(西山ほか, 1997).本研究では,野母変成岩類のテクトニックメランジュの形成過程を明らかにする目的で,構造岩石学的および地球化学的研究を行った.
野母変成岩類のテクトニックメランジュは,塩基性片岩を主体とするレンズ状ブロックと葉片状をなすマトリックスからなるblock-in-matrix構造を呈する.各ブロックは六角形状あるいは菱形状をなし,ブロックの長軸方向は片理面に調和的である.このような産状はfault-fracture mesh 構造に類似すると考えられ,静岩圧を超える間隙流体圧下において開口破壊と開口-剪断破壊が同時的に発生したことにより形成されたと考えられる(Sibson, 2017).マトリックスは主にアクチノ閃石,緑泥石,緑簾石,曹長石からなり,一部のアクチノ閃石と緑泥石は破壊面に沿って定向配列し,剪断帯を形成している.また,マトリックスに見られる細粒なアクチノ閃石群に対して結晶方位解析を行った結果,(100)の極が面構造に垂直な方向に,(010)の極が面構造に平行で線構造と垂直な方向に,[001]が線構造方向に配向していた.さらに,亜粒界や波動消光が認められるほか,15°未満の方位差角をもつ隣接粒子ペアが高頻度に見られた.これらの微細構造的特徴は,亜粒界回転による動的再結晶の進行を示唆する.一方,これらのアクチノ閃石群に対して元素マッピングを行った結果, Alがコアからリムにかけて減少するゾーニングが確認された.このことは,アクチノ閃石が転位クリープに加えて溶解-析出クリープによって変形したことを示唆する.角閃石の溶解-析出クリープの進行の際には粒子回転に加えて選択的な配向成長が起こることで,強い結晶方位定向配列が生じることが知られている(Lee et al., 2022).
塩基性片岩とマトリックスに富むメランジュ試料について全岩主要・微量元素組成分析を行い,アイソコン法によるマスバランス計算を行った.その結果,マトリックスに富むメランジュは塩基性片岩と比較してCaOが低く,Cr,MgO,Na2Oが高いことがわかった.さらに,主要元素組成分析の結果,ブロック中の緑泥石のCrとMgOがマトリックス中のものと比較して明瞭に高いことがわかった.CrとMgOはかんらん岩中に多く含まれることから,これらの地球化学的特徴はマントルウェッジかんらん岩の蛇紋岩作用に由来するCr・Mg流体が塩基性片岩に付加されたことを示唆する.このような流体はfault-fracture meshの発達によって形成された割れ目に沿って流入し,母岩に比べてよりCr・MgOに富む緑泥石を沈殿させたかもしれない.
引用文献:Bebout and Penniston-Dorland (2016), Lithos, 240-243, 228-258. Lee et al. (2022), J. Struct. Geol., 155, 104505. Mori et al. (2014), Earth Planets Space, 66, 47. 西山ほか (1997), 日本地質学会104年学術大会見学旅行案内書, 131-162. Nishiyama et al. (2017), Prog. Earth Planet. Sci., 4, 1-17. Sibson (2017), Earth Planets Space, 69, 113. Tarling et al. (2019), Nat. Geosci., 12, 1034-1042.
野母変成岩類のテクトニックメランジュは,塩基性片岩を主体とするレンズ状ブロックと葉片状をなすマトリックスからなるblock-in-matrix構造を呈する.各ブロックは六角形状あるいは菱形状をなし,ブロックの長軸方向は片理面に調和的である.このような産状はfault-fracture mesh 構造に類似すると考えられ,静岩圧を超える間隙流体圧下において開口破壊と開口-剪断破壊が同時的に発生したことにより形成されたと考えられる(Sibson, 2017).マトリックスは主にアクチノ閃石,緑泥石,緑簾石,曹長石からなり,一部のアクチノ閃石と緑泥石は破壊面に沿って定向配列し,剪断帯を形成している.また,マトリックスに見られる細粒なアクチノ閃石群に対して結晶方位解析を行った結果,(100)の極が面構造に垂直な方向に,(010)の極が面構造に平行で線構造と垂直な方向に,[001]が線構造方向に配向していた.さらに,亜粒界や波動消光が認められるほか,15°未満の方位差角をもつ隣接粒子ペアが高頻度に見られた.これらの微細構造的特徴は,亜粒界回転による動的再結晶の進行を示唆する.一方,これらのアクチノ閃石群に対して元素マッピングを行った結果, Alがコアからリムにかけて減少するゾーニングが確認された.このことは,アクチノ閃石が転位クリープに加えて溶解-析出クリープによって変形したことを示唆する.角閃石の溶解-析出クリープの進行の際には粒子回転に加えて選択的な配向成長が起こることで,強い結晶方位定向配列が生じることが知られている(Lee et al., 2022).
塩基性片岩とマトリックスに富むメランジュ試料について全岩主要・微量元素組成分析を行い,アイソコン法によるマスバランス計算を行った.その結果,マトリックスに富むメランジュは塩基性片岩と比較してCaOが低く,Cr,MgO,Na2Oが高いことがわかった.さらに,主要元素組成分析の結果,ブロック中の緑泥石のCrとMgOがマトリックス中のものと比較して明瞭に高いことがわかった.CrとMgOはかんらん岩中に多く含まれることから,これらの地球化学的特徴はマントルウェッジかんらん岩の蛇紋岩作用に由来するCr・Mg流体が塩基性片岩に付加されたことを示唆する.このような流体はfault-fracture meshの発達によって形成された割れ目に沿って流入し,母岩に比べてよりCr・MgOに富む緑泥石を沈殿させたかもしれない.
引用文献:Bebout and Penniston-Dorland (2016), Lithos, 240-243, 228-258. Lee et al. (2022), J. Struct. Geol., 155, 104505. Mori et al. (2014), Earth Planets Space, 66, 47. 西山ほか (1997), 日本地質学会104年学術大会見学旅行案内書, 131-162. Nishiyama et al. (2017), Prog. Earth Planet. Sci., 4, 1-17. Sibson (2017), Earth Planets Space, 69, 113. Tarling et al. (2019), Nat. Geosci., 12, 1034-1042.