09:00 〜 09:15
[SCG55-12] 古フィリピン海プレート地殻構造・年代の全容解明に向けて:KH-23-10航海の予察的報告
典型的な海洋性島弧とされてきた伊豆小笠原マリアナ(IBM)弧は、約5,200万年前の始新世に、太平洋プレートがフィリピン海プレートの下に沈み込みを開始したことにより形成が始まった(Ishizuka et al., 2011)。しかし、初期IBM弧の基盤として存在していた始新世以前の古フィリピン海プレートには、大東海嶺群・伊豆前弧・九州パラオ海嶺南端部において、ジュラ紀から白亜紀のジルコン年代を示す花崗岩や変成岩を主体とする大陸地殻の断片が確認されている。一方、確実に始新世よりも古い海洋地殻は発見されていない。これは古フィリピン海プレートが中生代の大陸地殻から構成され、そのような地殻を上盤側プレートとして初期IBM弧が形成された可能性を示唆している。
しかし、古フィリピン海プレート全体像を解明するには未解明の海域が残されており、その一つがフィリピン海プレート北西部を構成する花東海盆とGagua海嶺である。
花東海盆では、東西方向の磁気縞異常が観測されていることから、南北方向の海洋底拡大によって形成されたと考えられている。しかし、その形成時期は制約されていない。Deschamps et al. (2000) は磁気異常と海盆南部から採取された斑レイ岩のAr-Ar年代から、花東海盆が前期白亜紀に拡大したと解釈している。一方、Doo et al. (2014) は磁気異常パターンのマッチング結果から、始新世に拡大したと主張している。また、地震波構造から得られたリソスフェアの厚さも、始新世以降の若い年代を示唆している(Kuo et al., 2009)。
花東海盆が白亜紀に形成された場合、古フィリピン海プレートの一部として海洋地殻が存在していたことを意味する。一方、始新世に形成された場合、西フィリピン海盆と同時期に形成された背弧海盆である可能性が高い。
Gagua海嶺についても解釈が分かれている。Deschamps et al. (1998) は、Gagua海嶺がトランスフォーム断層沿いで海盆地殻が圧縮場によって隆起したものであると解釈している。一方、Qian et al. (2021) は、海嶺頂部で採取された島弧的地球化学特徴を持つ玄武岩質安山岩から白亜紀の年代を報告している。また、この火山岩には原生代の年代を示すジルコンが含まれており、Gagua海嶺が南中国地塊から切り離された大陸地殻である可能性を指摘している。
花東海盆の形成時期が白亜紀か始新世か、Gagua海嶺が隆起した海洋地殻か、それとも古い大陸地殻かという問題は、IBM弧沈み込み開始時のテクトニック環境を理解する上で決定的に重要である。しかしながら、これまで両地域の詳細な地質学的調査は行われていなかった。このため、白鳳丸KH-23-10航海では、花東海盆とGagua海嶺の地史解明を目的とし、地球物理航走観測および海盆と海嶺からの系統的な岩石サンプリングを目的とした調査を目指した。また花東海盆は古海洋環境復元、黒潮流域の生物相解明、台湾本島から琉球海溝への堆積物流入プロセス解明においても非常に重要な海域であり、海底堆積物のコア採取や底生生物の分類学的研究も計画した。
KH-23-10航海は、当初2023年12月13日から24日までの12日間(那覇出入港)を予定していた。しかし、強い冬型の気圧配置による悪天候のため、調査は大幅に短縮されてしまった。しかし花東海盆とGagua海嶺において、計7回の岩石ドレッジを行い、花東海盆内からは玄武岩、Gagua海嶺からは花崗岩・珪長質火山岩類などの火成岩類を採取することに成功した。さらには海盆内において2回のピストンコア、1回のマルチコアラー、1回のVMPS観測と、260海里にわたる地球物理航走調査を行い、海底地形、磁気、重力データを取得した。本発表では、KH-23-10航海の成果概要と採取試料から得られつつある結果について報告する。
しかし、古フィリピン海プレート全体像を解明するには未解明の海域が残されており、その一つがフィリピン海プレート北西部を構成する花東海盆とGagua海嶺である。
花東海盆では、東西方向の磁気縞異常が観測されていることから、南北方向の海洋底拡大によって形成されたと考えられている。しかし、その形成時期は制約されていない。Deschamps et al. (2000) は磁気異常と海盆南部から採取された斑レイ岩のAr-Ar年代から、花東海盆が前期白亜紀に拡大したと解釈している。一方、Doo et al. (2014) は磁気異常パターンのマッチング結果から、始新世に拡大したと主張している。また、地震波構造から得られたリソスフェアの厚さも、始新世以降の若い年代を示唆している(Kuo et al., 2009)。
花東海盆が白亜紀に形成された場合、古フィリピン海プレートの一部として海洋地殻が存在していたことを意味する。一方、始新世に形成された場合、西フィリピン海盆と同時期に形成された背弧海盆である可能性が高い。
Gagua海嶺についても解釈が分かれている。Deschamps et al. (1998) は、Gagua海嶺がトランスフォーム断層沿いで海盆地殻が圧縮場によって隆起したものであると解釈している。一方、Qian et al. (2021) は、海嶺頂部で採取された島弧的地球化学特徴を持つ玄武岩質安山岩から白亜紀の年代を報告している。また、この火山岩には原生代の年代を示すジルコンが含まれており、Gagua海嶺が南中国地塊から切り離された大陸地殻である可能性を指摘している。
花東海盆の形成時期が白亜紀か始新世か、Gagua海嶺が隆起した海洋地殻か、それとも古い大陸地殻かという問題は、IBM弧沈み込み開始時のテクトニック環境を理解する上で決定的に重要である。しかしながら、これまで両地域の詳細な地質学的調査は行われていなかった。このため、白鳳丸KH-23-10航海では、花東海盆とGagua海嶺の地史解明を目的とし、地球物理航走観測および海盆と海嶺からの系統的な岩石サンプリングを目的とした調査を目指した。また花東海盆は古海洋環境復元、黒潮流域の生物相解明、台湾本島から琉球海溝への堆積物流入プロセス解明においても非常に重要な海域であり、海底堆積物のコア採取や底生生物の分類学的研究も計画した。
KH-23-10航海は、当初2023年12月13日から24日までの12日間(那覇出入港)を予定していた。しかし、強い冬型の気圧配置による悪天候のため、調査は大幅に短縮されてしまった。しかし花東海盆とGagua海嶺において、計7回の岩石ドレッジを行い、花東海盆内からは玄武岩、Gagua海嶺からは花崗岩・珪長質火山岩類などの火成岩類を採取することに成功した。さらには海盆内において2回のピストンコア、1回のマルチコアラー、1回のVMPS観測と、260海里にわたる地球物理航走調査を行い、海底地形、磁気、重力データを取得した。本発表では、KH-23-10航海の成果概要と採取試料から得られつつある結果について報告する。
