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[SCG55-16] 沖縄トラフ南部,八重山海底地溝・与那国海底地溝における地殻の伸長変形の空間的不均一

キーワード:背弧海盆、伸長変形、正断層運動、地殻の薄化、火山性貫入、リフティング
1.はじめに
背弧海盆は,リソスフェア(岩石圏)の進化,プレート運動の変化,および沈み込み帯の動態を理解するための重要なテクトニック環境であるが,その発達メカニズムについて,特に形成初期段階での力学的な特徴は詳しくは分かっていない.私たちは,背弧拡大が始まる直前のリフトスケール(1~10 km)の浅部地殻(深さ2 km以浅)における断層発達の空間的不均一性に注目した.リフトスケールでの断層発達は,断層間の相互作用やセグメントの連結メカニズムを詳細に検討することで,断層システムの進化とダイナミクスに関する新たな知見を得ることができる.海洋性玄武岩が海底に露出していない大陸地殻が薄化するステージの背弧海盆である沖縄トラフ南部の八重山海底地溝・与那国海底地溝は,Sibuet et al. (1998) によって示された約0.1 Maから現在に至る南北方向の伸長変形によって形成されたと考えられる.しかし,同時期に形成されたと考えられるこれらの地溝において,地殻の伸長変形を制御する正断層などの力学的構造がどのように形成され,空間分布にどのような差異が生じるのかについては十分に把握されていない.そこで,本研究では背弧拡大の初期段階にある沖縄トラフ南部の2つのリフト帯を比較し,正断層の空間分布の特徴(断層の広がり,密度,条数など)を検討した.
2.使用データおよび解析方法
本研究では,2023年12月から2024年1月にかけて八重山海底地溝・与那国海底地溝周辺で実施された白鳳丸KH-23-11航海(大坪ほか, 2024)で得られた地形探査および反射法地震探査データを主に使用した.これらの両海底地溝周辺の海底地形図と,複数測線で得られたリフトを縦断する地震波探査断面を用いて,海底地形に表れる正断層による構造を抽出し,その空間分布を検討した.
3.結果および議論
八重山海底地溝および与那国海底地溝周辺の地形図では,明瞭な海底面の高度差を示す崖が長さ約5〜10 kmのリニアメントとして確認された.地震波探査断面では地溝周辺に正断層群が確認された.正断層は一部海底面まで達しており,海底を変形させて崖を形成していた.以上の結果から大きく2点を議論する.議論①八重山海底地溝・与那国海底地溝周辺での正断層群の形成:八重山海底地溝・与那国海底地溝周辺での正断層群の走向はほぼ東西走向を示しており,沖縄トラフ南部での現在(約0.1 Ma以降)の南北の伸長方向(Sibuet et al., 1998)に調和的である.また,地震波探査断面では,トラフを充填する堆積層が地溝軸部に向かって厚くなる.また,これらの正断層の一部は断層面が海底まで達し,かつ海底を変形させていることなどから,これらの断層が活断層であると考えられる.このことから,八重山海底地溝および与那国海底地溝周辺の正断層が,現在進行中の引張応力によるリフティングの結果として形成されたものであることが示唆される.議論②八重山海底地溝・与那国海底地溝周辺での浅部地殻の変形構造の違い:正断層の活動により,両海底地溝の地形は地溝軸に沿ったグラーベンを形成している.正断層群が両海底地溝周辺の浅部地殻に集中して発達し,地溝軸を挟んでほぼ対称的に分布しているものの,両海底地溝では変形構造に違いが認められる.海底地形図からは,八重山海底地溝では与那国海底地溝に比べて比較的段差が多く密度が高いことが読み取れる.一方,地震波探査断面からは,八重山海底地溝での発達する正断層が与那国海底地溝でのそれらと比較して多く認められる.さらに,与那国海底地溝では,正断層は南北方向に広く分布しており,リフティングに伴う海底面の沈降量は少ないことが特徴であった.これらの違いは,伸長変形に対する硬さ(柔らかさ)の違いなどの浅部地殻の変形様式の違いを示す可能性がある.
背弧海盆は,リソスフェア(岩石圏)の進化,プレート運動の変化,および沈み込み帯の動態を理解するための重要なテクトニック環境であるが,その発達メカニズムについて,特に形成初期段階での力学的な特徴は詳しくは分かっていない.私たちは,背弧拡大が始まる直前のリフトスケール(1~10 km)の浅部地殻(深さ2 km以浅)における断層発達の空間的不均一性に注目した.リフトスケールでの断層発達は,断層間の相互作用やセグメントの連結メカニズムを詳細に検討することで,断層システムの進化とダイナミクスに関する新たな知見を得ることができる.海洋性玄武岩が海底に露出していない大陸地殻が薄化するステージの背弧海盆である沖縄トラフ南部の八重山海底地溝・与那国海底地溝は,Sibuet et al. (1998) によって示された約0.1 Maから現在に至る南北方向の伸長変形によって形成されたと考えられる.しかし,同時期に形成されたと考えられるこれらの地溝において,地殻の伸長変形を制御する正断層などの力学的構造がどのように形成され,空間分布にどのような差異が生じるのかについては十分に把握されていない.そこで,本研究では背弧拡大の初期段階にある沖縄トラフ南部の2つのリフト帯を比較し,正断層の空間分布の特徴(断層の広がり,密度,条数など)を検討した.
2.使用データおよび解析方法
本研究では,2023年12月から2024年1月にかけて八重山海底地溝・与那国海底地溝周辺で実施された白鳳丸KH-23-11航海(大坪ほか, 2024)で得られた地形探査および反射法地震探査データを主に使用した.これらの両海底地溝周辺の海底地形図と,複数測線で得られたリフトを縦断する地震波探査断面を用いて,海底地形に表れる正断層による構造を抽出し,その空間分布を検討した.
3.結果および議論
八重山海底地溝および与那国海底地溝周辺の地形図では,明瞭な海底面の高度差を示す崖が長さ約5〜10 kmのリニアメントとして確認された.地震波探査断面では地溝周辺に正断層群が確認された.正断層は一部海底面まで達しており,海底を変形させて崖を形成していた.以上の結果から大きく2点を議論する.議論①八重山海底地溝・与那国海底地溝周辺での正断層群の形成:八重山海底地溝・与那国海底地溝周辺での正断層群の走向はほぼ東西走向を示しており,沖縄トラフ南部での現在(約0.1 Ma以降)の南北の伸長方向(Sibuet et al., 1998)に調和的である.また,地震波探査断面では,トラフを充填する堆積層が地溝軸部に向かって厚くなる.また,これらの正断層の一部は断層面が海底まで達し,かつ海底を変形させていることなどから,これらの断層が活断層であると考えられる.このことから,八重山海底地溝および与那国海底地溝周辺の正断層が,現在進行中の引張応力によるリフティングの結果として形成されたものであることが示唆される.議論②八重山海底地溝・与那国海底地溝周辺での浅部地殻の変形構造の違い:正断層の活動により,両海底地溝の地形は地溝軸に沿ったグラーベンを形成している.正断層群が両海底地溝周辺の浅部地殻に集中して発達し,地溝軸を挟んでほぼ対称的に分布しているものの,両海底地溝では変形構造に違いが認められる.海底地形図からは,八重山海底地溝では与那国海底地溝に比べて比較的段差が多く密度が高いことが読み取れる.一方,地震波探査断面からは,八重山海底地溝での発達する正断層が与那国海底地溝でのそれらと比較して多く認められる.さらに,与那国海底地溝では,正断層は南北方向に広く分布しており,リフティングに伴う海底面の沈降量は少ないことが特徴であった.これらの違いは,伸長変形に対する硬さ(柔らかさ)の違いなどの浅部地殻の変形様式の違いを示す可能性がある.
