日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG55] 海洋底地球科学

2025年5月28日(水) 09:00 〜 10:30 コンベンションホール (CH-A) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:飯沼 卓史(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、藤井 昌和(国立極地研究所 / 総合研究大学院大学)、尾張 聡子(東京海洋大学)、山本 揚二朗(海洋研究開発機構)、座長:谷 健一郎(国立科学博物館地学研究部)、小野 誠太郎(産業技術総合研究所)


10:15 〜 10:30

[SCG55-17] 鹿児島県トカラ列島南西沖における海底火山の分布: 背弧海盆の伸張による応力場との関係

*加持 恵達1古山 精史朗1,2石野 沙季2高下 裕章2石塚 治2 (1.東京海洋大学、2.産業技術総合研究所 地質調査総合センター)

キーワード:トカラ列島、海底火山、島弧-海溝系、沖縄トラフ、島弧平行ストレッチング、島弧横断火山活動

島弧―海溝系の進化について明らかにする上で, 背弧海盆発達の初期段階にあるとされる沖縄トラフは, 背弧リフティングの過程と火山活動を支配するテクトニクスの関係について重要な手がかりを得ることが期待される地域である. 沖縄トラフの北東に位置する鹿児島県トカラ列島は, 琉球海溝での沈み込みに対応したNNE-SSW方向に並ぶ火山フロントの一部を構成する. 加えてこの海域の西側には, WNW-ESE方向に密集する火山群が分布している. これらの複雑に配列した火山群は, 沖縄トラフの発達初期段階における火山活動について鍵となる情報を提供し得る. 一方で, この地域における火成活動の時空間変化については, 体系的な理解が進んでいない.
 本研究では, マルチチャンネル反射法地震波探査によって得られた断面に基づいて, 対象地域内に分布する海底火山を記載した. これによってまず本海域における火成活動の空間情報を整理した. そしてその結果, 海底火山は2種類の方向に配列することが明らかとなった. 加えて, これらの火山の配列と, 先行研究において確認されたリニアメントの走向(石野ほか, 2022; 2023)を比較し, 両者が同様の2種類の方向性を持つことを発見した.
 まず1つめの火山群の配列として, ENE-WSW方向に分布するVA1(横当雁行海丘群を含む)が認められる. この火山群の周囲には, 同様の走向をもったリニアメント群が存在し, これらは沖縄トラフ東縁部付近において顕著に確認される. 2つめの火山群は, 島弧を横断するWNW-ESE方向に配列しており, これをVA2とする. このVA2には2つの火山帯が含まれ, 北側のものは小宝島北方から, 南側のものは横当島北方から, それぞれWNW方向へと延びている. そしてその西端は沖縄トラフ東縁付近まで達する. またVA2を構成するこれらの火山帯の前弧側には, 同様の走向をもつリニアメント群が, 北側の列と南側の列にそれぞれ対応して分布する.
 以上のような火山の配列とリニアメントとの関係は, VA1およびVA2と同様の方向性を持った断層や地殻の脆弱な部分が, マグマの経路として利用された可能性を示唆している.
この2種類の方向を持つ断層はそれぞれ, 島弧に垂直な方向の伸張と, 島弧に平行な方向の伸張に対応している. そしてこのような2つの方向性を持つ伸張応力場は, 湾曲した島弧のリフティングと関連して形成される可能性が支持されている(Koge et al., 2024). そのため, 本研究のこれらの結果は, 北部琉球弧における火山活動について, 沖縄トラフのリフティングに伴う2つの方向性を持った伸張応力場が重要な役割を果たしていることを示すものである.

石野沙季・三澤文慶・有元純・井上卓彦, 2022. トカラ列島南西沖におけるGB21-1航海の反射法音波探査概要. 地質調査研究報告, 73(5/6), 219-234.
石野沙季・針金由美子・三澤文慶・井上卓彦, 2023. 2021年度海域地質図航海で行ったトカラ列島周辺海域の反射法音波探査及びドレッジ調査の概要. 地質調査研究報告, 74(5/6), 211-230.
Koge, H., Sato, T., Arimoto, J., Otsubo, M., Ishino, S., Suzuki, Y., Ishizuka, O., Harigane, Y., Misawa, A., Inoue, T., Yamashita, M., Furuyama, S., Yokoyama, Y., Sato, Y., Mori, T., Minami, H., Tamura, C., 2024. Inception of ridge-ridge-ridge triple junction: Morphostructural analysis and dynamics in the early back-arc extension of the northern Okinawa Trough. Geology.