日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG55] 海洋底地球科学

2025年5月28日(水) 10:45 〜 12:15 コンベンションホール (CH-A) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:飯沼 卓史(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、藤井 昌和(国立極地研究所 / 総合研究大学院大学)、尾張 聡子(東京海洋大学)、山本 揚二朗(海洋研究開発機構)、座長:佐藤 暢(専修大学経営学部)、沢田 輝(富山大学)


11:30 〜 11:45

[SCG55-21] Marie Celesteトランスフォーム断層から採取されたドレッジ試料の物性測定に基づく海洋地殻の変質

*伊藤 禎宏1片山 郁夫1、森下 亮佑2松山 和樹3,4藤井 昌和5,6沖野 郷子7 (1.広島大学大学院 先進理工系科学研究科、2.広島大学 理学部地球惑星システム学科、3.名古屋大学大学院 環境学研究科、4.モンペリエ大学 地球科学部門、5.国立極地研究所、6.総合研究大学院大学、7.東京大学 大気海洋研究所)


キーワード:海洋地殻、変質、地震波速度、電気比抵抗

地球深部における水は含水化した海洋プレートによって供給されるため,プレートの含水化過程の解明は地球の水循環を理解する上で不可欠である.プレートの含水化は地震波速度の低下によって特徴づけられるが,地殻の含水化は地震波速度の変化に乏しく,地球物理観測からの推定が難しいと考えられている.また,岩石が変質すると同時に空隙率が変化するため,地震波速度から変質と空隙の効果を見分けることは困難である.そこで本研究では,地震波速度に加えて空隙の構造に敏感な電気比抵抗を測定することにより,海洋地殻の含水化プロセスにより,物理特性がどのように応答するかを検証した.
本研究では2024年10月から11月にかけてインド洋中央海嶺Marie Celesteトランスフォーム断層にて実施されたKH-24-4航海で得られたドレッジ試料を用いた.各試料に対して地震波速度,電気比抵抗の測定を乾燥条件および含水条件の2つの条件下で行った.また、密度と空隙率を計算するために、質量と固相体積を測定した。測定に用いた岩石は,インド洋中央海嶺に位置するMarie Celesteトランスフォーム断層でのドレッジにより採取された玄武岩,ドレライト,はんれい岩とそれらの岩石が強く変質を受けた岩石である.これらの岩石は空隙率や変質に大きなバリエーションを持つ.これらの岩石をcmサイズのコア状,キューブ状に成形し,物性測定に用いた.地震波速度の測定にはファンクションジェネレーターとオシロスコープを用いてパルス透過法により算出し,電気比抵抗の測定にはLCRメーターを用いて2端子により算出した.
地震波速度は岩相によって大きな差はみられず,含水条件は乾燥条件と比べて速度がやや速い傾向を示した.含水条件でのP波速度は4.0-6.0 km/s,S波速度は2.0-3.5 km/sを示し同じ岩相でもバリエーションが見られた.空隙率の上昇に伴って地震波速度が低下する傾向が見られた. Vp/Vs比は岩相による違いはみられず,含水条件は乾燥条件と比べてVp/Vs比が高い傾向を示した.含水条件でのVp/Vs比はおよそ2.0であった.電気比抵抗についても岩相による違いはみられず,含水条件は乾燥条件と比べて電気比抵抗が低い傾向を示した.特に空隙率が高い試料では,空隙率と電気比抵抗の間にべき乗の関係を持つアーチ―則にほぼ従うことが確認された.これらの物理特性には、岩石中の空隙の効果と岩石の変質の効果の両者が含まれる.空隙の効果については,有効媒質理論により岩石中の空隙形状を推定すると,玄武岩がほかの岩相に比べて空隙のアスペクト比が高い傾向を示した.このような高いアスペクト比をもつ空隙は,変質の影響ではなく岩石形成時の初生的な空隙と考えられる.一方岩石の変質の効果は固相密度の違いに現れるが,高温の変質により形成されるエピドートや角閃石は,輝石などと同程度の固相密度を持つためその評価が難しい.そのため岩石の全岩化学組成を測定することにより変質の程度を調べる必要がある.現時点では全岩化学組成のデータはないが,今後試料の全岩化学組成を測定し,統計的解析である主成分分析を用いて海洋地殻の空隙の効果と変質の効果を分けて評価する予定である.