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[SCG55-29] 飛行艇型UAVを用いた高精度GNSS-A観測の実現

キーワード:GNSS-A、音響測距、海底地殻変動観測、UAV、飛行艇
GNSSと音響測距を組み合わせて海底地殻変動を観測するGlobal Navigation Satellite System – Acoustic combination (GNSS-A) と呼ばれる手法がある。GNSSと海上プラットフォームの姿勢情報から絶対位置が定まっているトランスデューサと、あらかじめ水深1,000 m以深の海底に設置されている海底局との音響測距を繰り返すことで、海底局の位置を特定する。特に、海上保安庁は、Seafloor Geodetic Observation – Array (SGO-A) と呼ばれるGNSS-A観測網を日本海溝と南海トラフを中心に展開しており、海底の地殻変動を継続的にモニタリングしている。
GNSS-A観測データは、防災科学的に有益なデータを提供する一方で、船舶による観測が中心で、観測コストの高さから観測頻度が限られる。GNSS-A観測の省力化と地震直後の即応的な観測などにも対応できる新たな海上プラットフォームとして飛行艇型Unmanned Arial Vehicle (UAV) を利用したGNSS-A観測に関する研究が展開されている。プロトタイプによる試験観測の結果、サブメートルレベルでの海底位置決定が行われた (Yokota et al., 2023)。本研究では、センチメートルレベルでの海底位置決定を目指し、プロトタイプより得られた知見をもとに再構築された新たな観測システムを用いたUAVベースのGNSS-A観測システムの性能評価を行った。そのうえで、実際のSGO-A観測点でGNSS-A観測を行い、その結果を評価した。
UAVに搭載されている機器について、GNSS、IMU機器と音響測距機器のそれぞれの性能を評価した。特に、音響測距機器については、試験水槽において真の距離を把握している状態で音響測距を行いその精度を検証した。その結果、測距誤差をセンチメートルレベルに抑えて音響測距をすることができた。また、既存のバイアス補正手法AAR法 (Yokota et al., 2024) で修正することができない搬送波分数波長分の音響測距バイアスが存在することが示唆された。
UAVベースのGNSS-A観測は、静岡県伊東沖の実際のSGO-A観測点「SAGA」で2024年1月に行った。観測中のUAVの機体のエンジントラブルによって測線の半分で実験を中断したため、取得したデータ数は測量船で通常取得されるデータ数の半分程度にとどまった。GARPOS v.1.0.1 (Watanabe et al., 2020) を利用してGNSS-A解析を行い、測量船による海底決定位置と比較をした結果、決定された海底位置の水平方向は概ね測量船の結果と整合した。少ないデータ数でセンチメートルレベルでの観測に成功した背景として、UAVはGNSSアンテナ位置からソナーまでのオフセット距離が短く、姿勢情報のバイアスがソナー位置に与える影響が小さいことにより高精度なデータが収集できた可能性がある。
一方で、垂直方向には10 – 15 cmのずれが生じた。これの原因として、SGO-Aで想定しているトランスデューサの位相中心が実際と異なる可能性や、測量船側のTake-off angle依存の読み取りバイアスが原因として考えられ、測量船側の決定位置全てが真値からずれていることが示唆された。
以上より、UAVベースのGNSS-A観測は省力化を達成できることにとどまらず、迅速に高品質なデータを取得できることに強みを持つ可能性が示された。しかし、測量船とのバイアスの統合など新たな課題も明らかになった。
謝辞:本研究は地震研究所共同利用ERI JURP 2024-Y-KOBO12、SECOM 科学技術財団、科研費学術変革領域 (A) "Science of Slow-to-Fast Earthquakes"のJP21H05200の助成を受けました。
GNSS-A観測データは、防災科学的に有益なデータを提供する一方で、船舶による観測が中心で、観測コストの高さから観測頻度が限られる。GNSS-A観測の省力化と地震直後の即応的な観測などにも対応できる新たな海上プラットフォームとして飛行艇型Unmanned Arial Vehicle (UAV) を利用したGNSS-A観測に関する研究が展開されている。プロトタイプによる試験観測の結果、サブメートルレベルでの海底位置決定が行われた (Yokota et al., 2023)。本研究では、センチメートルレベルでの海底位置決定を目指し、プロトタイプより得られた知見をもとに再構築された新たな観測システムを用いたUAVベースのGNSS-A観測システムの性能評価を行った。そのうえで、実際のSGO-A観測点でGNSS-A観測を行い、その結果を評価した。
UAVに搭載されている機器について、GNSS、IMU機器と音響測距機器のそれぞれの性能を評価した。特に、音響測距機器については、試験水槽において真の距離を把握している状態で音響測距を行いその精度を検証した。その結果、測距誤差をセンチメートルレベルに抑えて音響測距をすることができた。また、既存のバイアス補正手法AAR法 (Yokota et al., 2024) で修正することができない搬送波分数波長分の音響測距バイアスが存在することが示唆された。
UAVベースのGNSS-A観測は、静岡県伊東沖の実際のSGO-A観測点「SAGA」で2024年1月に行った。観測中のUAVの機体のエンジントラブルによって測線の半分で実験を中断したため、取得したデータ数は測量船で通常取得されるデータ数の半分程度にとどまった。GARPOS v.1.0.1 (Watanabe et al., 2020) を利用してGNSS-A解析を行い、測量船による海底決定位置と比較をした結果、決定された海底位置の水平方向は概ね測量船の結果と整合した。少ないデータ数でセンチメートルレベルでの観測に成功した背景として、UAVはGNSSアンテナ位置からソナーまでのオフセット距離が短く、姿勢情報のバイアスがソナー位置に与える影響が小さいことにより高精度なデータが収集できた可能性がある。
一方で、垂直方向には10 – 15 cmのずれが生じた。これの原因として、SGO-Aで想定しているトランスデューサの位相中心が実際と異なる可能性や、測量船側のTake-off angle依存の読み取りバイアスが原因として考えられ、測量船側の決定位置全てが真値からずれていることが示唆された。
以上より、UAVベースのGNSS-A観測は省力化を達成できることにとどまらず、迅速に高品質なデータを取得できることに強みを持つ可能性が示された。しかし、測量船とのバイアスの統合など新たな課題も明らかになった。
謝辞:本研究は地震研究所共同利用ERI JURP 2024-Y-KOBO12、SECOM 科学技術財団、科研費学術変革領域 (A) "Science of Slow-to-Fast Earthquakes"のJP21H05200の助成を受けました。
