16:30 〜 16:45
[SCG55-34] Is the small shortening of the baseline length detected by Acoustic Distance Meter significant?

千島海溝南西部では、太平洋プレートがオホーツクプレートの下に年間80 -90 mm/yrの速度で南東から走向方向に対し斜行して沈み込んでいる。そのプレート運動に伴い、千島前弧域がスリバーとして西進していると考えられている。また、千島海溝では、過去200年で1973年の根室半島地震や2003年の十勝沖地震のような、M8クラスの海溝型巨大地震が複数回発生している。本観測領域では約350年前にあたる17世紀にM9クラスの超巨大地震が発生していることが津波堆積物調査(Nanayama et al., 2003)、海水準調査といった古地震の調査から明らかにされてきた。地震調査委員会による試算では、M8.8以上の超巨大地震が発生する確率が、ここ30年以内で7-40%であり、その発生間隔は340年-380年であると試算されている。その上、前回発生した17世紀型地震では海溝軸近傍まで断層破壊が及んでいた可能性が指摘されている (Ioki and Tanioka, 2016).同様のすべり様式は、日本海溝で発生した2011年東北地方太平洋沖地震でも確認されているが、こうした浅部の大すべり域の地震間の固着状態は必ずしも明らかになっていない。
こうした背景のもと、東北大学、北海道大学はプレート境界および海溝軸近傍の力学的挙動を明らかにすることを目的として、千島海溝根室沖を対象としたGNSS-Acousitc観測 (GNSS-A) および海底間音響測距観測から構成される複合海底測地観測網を2019年に新たに整備した。
複合海底測地観測網のうち、海底間音響測距観測点N-ADMは、根室沖の海溝軸を挟んで陸側プレート上に1点 (u1)、太平洋プレート上に2点 (u2, u3) の海底局で構成される。2019年7月-2021年3月の約1年8ヶ月の間、音響測距を実施し、往復走時に加え、各観測機での海底温度・圧力・測器姿勢の連続観測データが取得された。
音響通信によって計測された各観測局間の往復走時は基準音速との積の半分を取ることで基線長に変換される。しかし、海中音速が圧力と温度に依存することから、これらの影響の補正が必要である。また、設置面から音響トランスデューサまでの高さが3.5mあることから、機器の姿勢変化も大きく基線長に影響するため、機器の姿勢変化についても補正が必要であり、今回は海中音速と機器の姿勢変化による成分を補正した。そして観測期間中の変位速度が一定であると仮定し、各種補正後の基線長の時系列変化に対し重みつき線形回帰を行い、基線長変化速度を推定するとともに、その誤差推定を行った。各基線で得られた基線長変化の値は基線u1-u2で-5.81±2.69 mm/yr、基線u1-u3で-5.52±3.01 mm/yr、基線u2-u3で-0.85±1.04 mm/yr である(負の値は基線の短縮を示す)。
基線u1-u2が海溝軸と成す角度は時計まわりに84.8度、基線u1-u3が成す角度は54.6度である。これらの海溝軸と斜交する2つの基線配置から、海溝を挟んだtrench-normalとtrench-parallel方向成分の相対変位速度を求めた。その際得られた誤差伝搬行列に先述の各基線の誤差を掛けて推定誤差楕円を得た。両基線間の誤差が無相関だとすると、その配置からtrench-parallel方向の誤差が大きくなりtrench-normal方向で5.70±3.15 mm/yrの短縮、trench-parallel方向で1.50±7.38 mm/yrの右横ずれであった。実際には両基線の誤差は共通する音速場の擾乱など相関を持つと考えられ、仮に両基線間の誤差の相関が+0.75だとすると、誤差楕円の扁平率改善し、trench-normal方向で5.70±2.72 mm/yrの短縮、trench-parallel方向で1.50±3.94 mm/yrの右横ずれとなった。いずれにしても、trench-parallel方向には有意に変位しているとは言えないが、trench-normal方向の短縮は有意なように見受けられる。また、同一プレート上にあるu2-u3基線で得られた相対変位速度も精度の範囲内で0と見做せることから、未計測の塩分・温度センサのドリフト・圧力補正での強制ドリフト除去の影響が無いと考えられる。GNSS-A観測だけでは詳細な固着率の数値にまでは言及できないが、海底間音響測距観測のデータから、根室沖の海溝軸の固着は100%より若干小さい可能性が指摘される。
こうした背景のもと、東北大学、北海道大学はプレート境界および海溝軸近傍の力学的挙動を明らかにすることを目的として、千島海溝根室沖を対象としたGNSS-Acousitc観測 (GNSS-A) および海底間音響測距観測から構成される複合海底測地観測網を2019年に新たに整備した。
複合海底測地観測網のうち、海底間音響測距観測点N-ADMは、根室沖の海溝軸を挟んで陸側プレート上に1点 (u1)、太平洋プレート上に2点 (u2, u3) の海底局で構成される。2019年7月-2021年3月の約1年8ヶ月の間、音響測距を実施し、往復走時に加え、各観測機での海底温度・圧力・測器姿勢の連続観測データが取得された。
音響通信によって計測された各観測局間の往復走時は基準音速との積の半分を取ることで基線長に変換される。しかし、海中音速が圧力と温度に依存することから、これらの影響の補正が必要である。また、設置面から音響トランスデューサまでの高さが3.5mあることから、機器の姿勢変化も大きく基線長に影響するため、機器の姿勢変化についても補正が必要であり、今回は海中音速と機器の姿勢変化による成分を補正した。そして観測期間中の変位速度が一定であると仮定し、各種補正後の基線長の時系列変化に対し重みつき線形回帰を行い、基線長変化速度を推定するとともに、その誤差推定を行った。各基線で得られた基線長変化の値は基線u1-u2で-5.81±2.69 mm/yr、基線u1-u3で-5.52±3.01 mm/yr、基線u2-u3で-0.85±1.04 mm/yr である(負の値は基線の短縮を示す)。
基線u1-u2が海溝軸と成す角度は時計まわりに84.8度、基線u1-u3が成す角度は54.6度である。これらの海溝軸と斜交する2つの基線配置から、海溝を挟んだtrench-normalとtrench-parallel方向成分の相対変位速度を求めた。その際得られた誤差伝搬行列に先述の各基線の誤差を掛けて推定誤差楕円を得た。両基線間の誤差が無相関だとすると、その配置からtrench-parallel方向の誤差が大きくなりtrench-normal方向で5.70±3.15 mm/yrの短縮、trench-parallel方向で1.50±7.38 mm/yrの右横ずれであった。実際には両基線の誤差は共通する音速場の擾乱など相関を持つと考えられ、仮に両基線間の誤差の相関が+0.75だとすると、誤差楕円の扁平率改善し、trench-normal方向で5.70±2.72 mm/yrの短縮、trench-parallel方向で1.50±3.94 mm/yrの右横ずれとなった。いずれにしても、trench-parallel方向には有意に変位しているとは言えないが、trench-normal方向の短縮は有意なように見受けられる。また、同一プレート上にあるu2-u3基線で得られた相対変位速度も精度の範囲内で0と見做せることから、未計測の塩分・温度センサのドリフト・圧力補正での強制ドリフト除去の影響が無いと考えられる。GNSS-A観測だけでは詳細な固着率の数値にまでは言及できないが、海底間音響測距観測のデータから、根室沖の海溝軸の固着は100%より若干小さい可能性が指摘される。
