日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG55] 海洋底地球科学

2025年5月28日(水) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:飯沼 卓史(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、藤井 昌和(国立極地研究所 / 総合研究大学院大学)、尾張 聡子(東京海洋大学)、山本 揚二朗(海洋研究開発機構)


17:15 〜 19:15

[SCG55-P05] 駿河湾安倍川沖表層堆積物に含まれる珪藻種の特徴

*池田 芽生1、金子 響生2、柴尾 創士1横山 由香2平 朝彦2坂本 泉2 (1.東海大学大学院海洋学研究科、2.東海大学海洋学部)

キーワード:珪藻、安倍川、堆積物

駿河湾は,南北約60 km,東西約56 km,最大水深は約2,500 mと日本で最も深い湾である.駿河湾には大井川,安倍川,富士川および狩野川の4つの一級河川が流入している.そのうち,静岡西岸を流れる安倍川 (流路延長約51 km) は,大谷崩れに端を発し,大量に土砂を供給する河川である.安倍川沖に発達する大陸棚は,北東(三保沖)-南西(焼津)方向に軸を有し,その距離は約20 kmに渡って発達している.その最大幅は約5 km (久能山沖) であり,三保半島 (大陸棚北東端) に向かって幅を減している.静岡県静岡市にある三保半島は複合砂嘴であり,上部の砂層と下部の砂礫層からなる.そのため,三保半島を形成する堆積物の供給源は,安倍川と有度丘陵とされている(木村ほか,2005).海洋地質研究室では,安倍川が駿河湾へ与える影響と堆積物の供給およびそれらの堆積物移動過程解明を目的に調査を行っている.調査は,2024年8月23日に安倍川沖の南北方向 (河口-沖合)に向かうライン (L-1) 上の水深10 m,20 m,40 m,100 m,450 mと,三保半島沖との中間にあたる久能山沖水深10 m地点で採泥調査を行った.また,比較として三保半島沖 (本大陸棚の影響のない) の水深585 m,635 m地点で行った.本報告では,安倍川河口~三保半島沖にかけての底質移動過程を明らかにするため,堆積物組成と共に珪藻過程に注目し分析を行った.堆積物試料の採取には,スミスマッキンタイヤ式グラブ採泥器を使用し,採取された堆積物の表層 (0~3 cm層) を対象に分析を行った.
L-1上で採取した表層堆積物は,水深約10 m地点では細粒砂からなり,貝殻片と植物片が確認された.水深約20 m地点では暗灰色の極細粒砂からシルトからなり数mm程度の植物片が混在していた.L-1上の水深40 m,100 m,450 m地点では,暗灰色のシルトが採取された.久能山沖 (水深約10 m) で採取された堆積物は,中粒砂から細粒砂からなる.そして,三保半島沖 (水深585 m,635 m)では,暗灰色のシルトが確認された.
珪藻分析の結果から,海水,汽水および淡水生種が確認された.海水生種では浮遊性種のThalassionema mitzschioidesThalassiothrix frauenfeldiiThalassiosira lineataおよびRhizosolenia spp. が確認された.特に,Thalassionema nitzschioides がほとんどの地点で優占した.淡水生種では,Achnanthes lanceolataCocconeis placentula var. euglyputa,Nitzschia paleaが全ての地点で確認された.最も安倍川河口に近いL-1上の水深約10 m地点では,汽水生種であるCocconeis scutellum (汽水域において海藻に着生している種として知られている) の産出が最も多く優占的に確認できたが,水深約450 m地点からはほとんど確認されなかった.久能山沖 (水深10 m) 地点では,安倍川沖に比べ堆積物の粒度が粗く,珪藻がほとんど産出しなかった.また,三保半島沖 (水深585 m,635 m) の2地点で産出した珪藻種は,海水生種,淡水生種ともに安倍川沖で確認された種と大きな違いは見られなかったが,汽水生種であるCocconeis scutellumは数個体産出するのみでほとんど見られなかった. この種は,安倍川沖水深約10 m以外での産出がほとんど見られないことから,河口付近で発生したものであると推察した.安倍川沖で確認された珪藻のうち,海水生種の割合は,水深10 mで約17 %,水深20 mで約26 %,水深40 mと100 mで約35 %,最も沖合の水深約450 m地点で約45 %であった.一方,三保半島沖 (水深585 m,635 m地点) では海水生種は,どちらの地点でも約70 %と安倍川沖よりも高い割合を示した.
以上の結果より,L-1上では沖にかけて海水生種が増加することにより,安倍川の影響が小さくなっていることが推察される.また,三保半島沖 (水深585 m,635 m地点) で見られた淡水生種が,安倍川沖とほぼ同じであることから,この地点においても,安倍川の影響を受けている可能性がある.今後,継続的でより密な調査・研究によって,安倍川沖および三保半島沖の堆積環境の解明に取り組む予定である.
参考文献:木村ほか(2005)海洋開発論文集, 21.柴ほか(2016)Journal of Fossil Research,49(1).稲葉ほか(2001),Deep ocean water research 2(1).依田ほか(2000)Journal of the Japan Society for Marine Surveys and Technology12(2)