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[SCG55-P08] 炭酸塩に着目した南部マリアナ前弧域における蛇紋岩ホストアルカリ性湧水域の探索
キーワード:炭酸塩、蛇紋岩、かんらん岩、南部マリアナ前弧域
蛇紋岩ホストのアルカリ性湧水域では、湧水に豊富に含まれる水素やメタンによって化学合成生態系が支えられており、初期生命圏や地球外生命圏のアナログサイトとして注目されてきた [1]。2010年に南部マリア前弧域約5,700 mで発見されたしんかい湧水域(Shinkai Seep Field:SSF)は、このタイプの湧水域としては最も深い場所に位置し、ブルーサイトや炭酸塩から構成されるチムニーやシロウリガイコロニーが分布している [2]。このサイトは、北部マリアナ前弧域で多数報告されている蛇紋岩海山群 [3]とは異なり、蛇紋岩化したかんらん岩が露出する陸側斜面に分布している。南部マリアナ海溝の陸側斜面では、比較的若い前弧リフティングが海溝陸側斜面に分布する比較的古い火山岩の列を割るように発生する特異的なテクトニクスセッティングで、このリフティングがSSFの成り立ちに重要な役割を果たしている可能性がある。本研究では、南部マリアナ前弧域の東西約300 mで行われたドレッジ調査で採集された岩石試料中の炭酸塩に着目し、この地域における、同様の湧水域の広がりを検討することを目的とした。
研究対象とした試料は、2023年に実施されたKH-23-09航海にて採集された合計24試料である。全18カ所で行われたドレッジ試料のうち、D03、D12、D14、D15の4か所から採取された、炭酸塩を含むと考えられる白色部を含む岩石サンプル24試料を対象とした。これらの試料について、X線回折法(XRD)により鉱物の同定を行うとともに、薄片による組織観察から、堆積プロセスを検討した。
試料の肉眼観察の結果、調べた試料は以下の4つのタイプに分類された。
I) 約4,000mと6,700m付近で採取された脈状の白色沈殿物(D03, D12)
II) 約1,800mと6,700m付近で採取された生物骨格を含む白色堆積物(D14, D15)
III) 約6,700m付近で採取された白色堆積物を含む角礫岩(D14)
IV) 約6,700m付近で採取された白色沈殿物のマトリックスを持つ礫岩(D14)
XRD解析と組織観察の結果から、II)やIII)のタイプの白色堆積物は、浮遊性有孔虫の殻や造礁性サンゴ骨格で構成される炭酸塩堆積物であることが明らかとなった。また、IV)の白色沈殿物は炭酸塩ではなく、細粒な珪酸塩鉱物であった。I)の白色沈殿物は、概ね珪酸塩鉱物で構成されていた。方解石で構成されている脈を持つ試料は2試料のみ認定されたが、一方はモザイク状結晶およびミクライトから構成されるMgカルサイトから構成されており、他方は浮遊性有孔虫の殻を含むマッドストーンから構成されているとともに、いずれも超苦鉄質岩中には含まれていなかった。SSFと同様の湧水域を探索するにあたって、割れ目内にアラゴナイトの脈を含むかんらん岩や蛇紋岩、ブルーサイトや炭酸塩から構成される白色チムニーの破片、シロウリ貝の貝殻などがあると近隣に同タイプの湧水の存在が示唆される。本研究の結果から、少なくとも今回検証をした試料の採集地点では、ターゲットとしたSSFと同タイプの湧水域の存在は示されず、浅場で形成された石灰岩体がさまざまな深さに分布していること明らかとなった。
引用
[1] Kelley et al. (2005) Science, 307, 1428-1434.
[2] Ohara et al. (2012) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 109, 2831–2835.
[3] Fryer et al. (2012) Annu. Rev. Mar. Sci., 4:345-373.
研究対象とした試料は、2023年に実施されたKH-23-09航海にて採集された合計24試料である。全18カ所で行われたドレッジ試料のうち、D03、D12、D14、D15の4か所から採取された、炭酸塩を含むと考えられる白色部を含む岩石サンプル24試料を対象とした。これらの試料について、X線回折法(XRD)により鉱物の同定を行うとともに、薄片による組織観察から、堆積プロセスを検討した。
試料の肉眼観察の結果、調べた試料は以下の4つのタイプに分類された。
I) 約4,000mと6,700m付近で採取された脈状の白色沈殿物(D03, D12)
II) 約1,800mと6,700m付近で採取された生物骨格を含む白色堆積物(D14, D15)
III) 約6,700m付近で採取された白色堆積物を含む角礫岩(D14)
IV) 約6,700m付近で採取された白色沈殿物のマトリックスを持つ礫岩(D14)
XRD解析と組織観察の結果から、II)やIII)のタイプの白色堆積物は、浮遊性有孔虫の殻や造礁性サンゴ骨格で構成される炭酸塩堆積物であることが明らかとなった。また、IV)の白色沈殿物は炭酸塩ではなく、細粒な珪酸塩鉱物であった。I)の白色沈殿物は、概ね珪酸塩鉱物で構成されていた。方解石で構成されている脈を持つ試料は2試料のみ認定されたが、一方はモザイク状結晶およびミクライトから構成されるMgカルサイトから構成されており、他方は浮遊性有孔虫の殻を含むマッドストーンから構成されているとともに、いずれも超苦鉄質岩中には含まれていなかった。SSFと同様の湧水域を探索するにあたって、割れ目内にアラゴナイトの脈を含むかんらん岩や蛇紋岩、ブルーサイトや炭酸塩から構成される白色チムニーの破片、シロウリ貝の貝殻などがあると近隣に同タイプの湧水の存在が示唆される。本研究の結果から、少なくとも今回検証をした試料の採集地点では、ターゲットとしたSSFと同タイプの湧水域の存在は示されず、浅場で形成された石灰岩体がさまざまな深さに分布していること明らかとなった。
引用
[1] Kelley et al. (2005) Science, 307, 1428-1434.
[2] Ohara et al. (2012) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 109, 2831–2835.
[3] Fryer et al. (2012) Annu. Rev. Mar. Sci., 4:345-373.
