日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG55] 海洋底地球科学

2025年5月28日(水) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:飯沼 卓史(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、藤井 昌和(国立極地研究所 / 総合研究大学院大学)、尾張 聡子(東京海洋大学)、山本 揚二朗(海洋研究開発機構)


17:15 〜 19:15

[SCG55-P15] 南海トラフ海底下に発達する充填鉱物帯の分布と形成過程の検討

*野村 夏希1,2弓井 浩暉2,3藤内 智士2 (1.西日本技術開発株式会社、2.高知大学、3.広建コンサルタンツ株式会社)

キーワード:南海トラフ、X線コンピュータートモグラフィー、充填鉱物、重晶石、菱マンガン鉱、熱水鉱物

海洋地殻は,中央海嶺で作られてプレート収束域で沈み込むまでの間に,様々な作用を経験する(例えば,Underwood and Pickering, 2018).その中で,流体循環に伴って形成される充填鉱物帯は,強度と応力の不均質を生み,海洋地殻の変形様式に影響を与える.しかし,物質的な証拠の報告が少ないことから,その広域的な分布はよく分かっていない.
 南海トラフは,これまでに多くの科学調査航海が実施され,地質データが世界で最も充実しているプレート収束域の1つである.さらに,高知県室戸沖で1991年に実施された国際深海掘削計画(Ocean Drilling Program: ODP)第131次航海808サイトや2016年に実施された国際深海科学掘削計画(International Ocean Discovery Program: IODP)第370次航海のC0023サイトのコア試料では,プレート境界断層であるデコルマン直下の半遠洋性堆積物から充填鉱物が報告されている(Kastner et al., 1993;Tsang et al., 2020).そこで本研究では,南海トラフおよび四国海盆において,国際海洋科学掘削によって採取されたコア試料(四国海盆:DSDP(Deep Sea Drilling Program)297,442,443,444サイト,四国沖:ODP 808,1173,1174,1177,IODP C0023サイト,熊野沖:IODP C0011,C0012サイト)のXCT(X線コンピュータートモグラフィー)データを用いて地下の充填鉱物帯の空間分布を調べた.また,XRD(X線回折解析),CT画像解析,肉眼観察に基づいて,充填鉱物の同定と形成過程の考察を行った.
 四国海盆で掘削された3サイトのコア試料では,充填鉱物が持つ大きい密度に起因する高いCT値はあまり見らなかった.一方で,四国沖で掘削された5サイトのコア試料では,半遠洋性泥相を中心に高いCT値が集中しており,熊野沖で掘削された2サイトのコア試料では,C0012サイトの一部にスパイクの集中が見られた.また,このような高いCT値を示す鉱物はロードクロサイト(MnCO3)とバライト(BaSO4)であることが分かった.
 以上の結果より,南海トラフ海底下の充填鉱物帯の分布を描いた.すなわち,充填鉱物帯はプレート収束域の半遠洋性泥相に集中して分布する.また,その量は場所によって大きく異なる.そして充填鉱物は,四国海盆での堆積時及びその後に熱水活動でMnやBaが提供され,収束域に近づいた時に,陸側からの高温流体が提供する炭酸イオンや硫酸イオンと結びついて形成したというモデルを提案した(図1).晶出の時期は,半遠洋性泥相の最上部が堆積した3.9–2.0 Ma以降と考えられる.ただし,高温流体に炭酸イオンや硫酸イオンが豊富に含まれていたかは不明で,今後は地球化学的なデータを使った検討も必要である.