日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG56] 地殻流体と地殻変動

2025年5月28日(水) 10:45 〜 12:15 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:北川 有一(産業技術総合研究所地質調査総合センター地震地下水研究グループ)、小泉 尚嗣(滋賀県立大学)、角森 史昭(東京大学大学院理学系研究科地殻化学実験施設)、笠谷 貴史(海洋研究開発機構)、座長:北川 有一(産業技術総合研究所地質調査総合センター地震地下水研究グループ)、角森 史昭(東京大学大学院理学系研究科地殻化学実験施設)

11:30 〜 11:45

[SCG56-04] 微動アレイ探査によるいわき市常磐地区周辺の中低温地熱資源の評価のための地下構造の推定

★招待講演

*岡本 京祐1石橋 琢也1、青栁 直樹1浅沼 宏1、神 薫2小西 千里2 (1.産業技術総合研究所、2.応用地質)

キーワード:微動アレイ探査、地震観測、地下水、地熱資源

福島県いわき市には,豊富な中低温地熱資源が存在しており,特にいわき湯本温泉が位置する常磐地区においては,源泉で毎分5トン程度の温泉水が湧出している。本地区周辺には,井戸沢断層,および湯ノ岳断層といった,2011年4月11日に発生した福島県浜通り地震 (Mj 7.0) の震源断層が存在しているほか,複数の断層が存在しており,地熱資源の賦存状況に大きな影響を与えていると考えられる。実際,浜通りの地震後には,主に湯ノ岳断層の東側の領域において,地下水位の上昇や新たな地下水の湧出等が発生している。一方で,より深部に目を向けると,Togo et al. (2014) らは,湧出水の起源の一部が海洋プレートの沈み込みに起因していることを指摘したほか,Sato et al. (2020) では,地下40 km程度の深さに高圧の熱水貯留層が存在し得ることを指摘している。また,浜通りの地震後に,深さ10 km程度で群発地震が発生しており,この事実も地下深部で何らかの流体活動があったこと示唆する。
しかし,本地区の市街地では大規模な反射法地震探査等は行われておらず,現在に至るまで,地下深部(~10 km程度)と,地下浅部の間の流体活動の関係性を,物理探査等に基づき明らかにした研究は存在しない。本研究では,臨時のローカル地震観測と,複数の直線アレイを用いた大規模な微動探査(総延長30 km程度)を通じて,地下深部から浅部に至る流体活動のつながりを明らかとし,常磐地区周辺の中低温地熱システムの理解を進めることを目的とした。
 ローカル地震観測の結果からは,頻度は少ないものの,浜通りの地震後に群発地震が生じた領域付近で,地震活動が存在していることが明らかとなり,何らかの流体活動と関係している可能性も考えらえる。また,微動探査の結果では,深さ1 km程度までのS波速度構造と基盤面が求まり,断層に対応すると考えられる基盤深度の変位が複数推定された。この推定された断層のうちの一つは,浜通り地震後に地下水の湧出が始まった地点の近傍に位置しており,流体経路になった可能性が考えられる。
 本研究では大規模な微動アレイ探査の実施により,流体経路となり得る浅部での断層位置を明らかとした。今後は,ローカル地震観測を継続することで,震源分布に関する知見を増やし,深部~浅部の包括的な流体活動,ひいては当該地域の中低温地熱システムの理解をより深めることを目指す。

本研究は,福島国際研究教育機構(F-REI)の委託研究費 (JPFR23070103, JPFR24070103) により実施した。本研究の実施にあたり,コンソーシアム参画各社にご助言,ご協力頂いた。関係各位に感謝申し上げる。