11:45 〜 12:00
[SCG56-05] 富士山麓の地下水観測孔で検出された神奈川県西部地震時の温度変化
★招待講演
キーワード:孔内温度計測、神奈川県西部地震
2024年8月8日~10日に、河口湖の南にある地下水観測井戸(標高862m、孔底深度121m、地下水位32.8m、ケーシング、95-115mにスクリーン)において、孔内温度観測を実施した。山梨県富士山科学研究所により、深度115.5mに水位計が設置され、モニターされている(ただし本観測中は中断)。近傍の孔から推定した地質構成は、深度60mまでは溶岩、その下が火山砂礫層(古富士火山噴出物相当層)と考えられる。
サーミスタ温度計をゆっくり下降させながら孔内温度プロファイルを得た。地下約40m~60mでは10.7℃程度、地下90m以深では9.8℃程度と、透水層(地下水脈)と思われる2層が検出された(図1)。これは以前の観測結果と整合的である。また深さ60m〜90m区間では温度が線形に低下していた。60mより上部と90mより下部の地下水脈の温度を境界とした熱拡散方程式の定常解であると解釈できる.
観測中、2024年08月09日 19時57分、神奈川県西部を震源とするM5.3の地震が発生した(35.41°N, 139.17°E, 深さ約14㎞)。我々の観測サイト(震央のWNW、水平距離40㎞)でも震度3程度の揺れを感じた。観測孔では、4台の自己記録式温度計で連続観測中であった。温度データを調べたところ、深さ66mと81mにおいて,地震に応答する形で2~3mKのオーダーでの温度上昇が見られた(図2).一方深さ95.5mと51mにおいては,地震に応答する形での温度の変化は見られなかった.温度の変化は2段階に分かれて現れた。1段階目の変化は,地震波到達直後から4分間でのステップ状の温度上昇で,深さによって振幅が異なる.2段階目の変化は,地震波到達後から30分〜1時間が経過してから現れた.変化は滑らかな形で継続時間は30分〜1時間であり、その後元のレベルまで戻っているようである.
地震応答による温度上昇の原因として,地震動による孔内の水と孔壁の熱交換・水分子同士の摩擦熱,あるいは孔内の水の攪拌や移動(例えばShimamura & Watanabe, 1981 Nature; Kitagawa & Koizumi, 2000 JGR)などが考えられる.いずれの場合でも、熱伝導による熱交換可能な距離は、4分間では数㎜、1時間では数cmであることから,孔(直径20.4cm)のごく近傍からの影響に限定される。一方、孔内で水が移動したと考えると、深度66mと81mの周辺では地温(水温)勾配が逆転していることから,地震時の温度上昇は、計測地点よりも浅部から水が下降したはずである。温度勾配(-30mK/m)から考えて、温度計に対して孔内の水が7㎝下降したと解釈できる。地震に伴い、孔底のスクリーン部から周囲に水が流出した可能性がある。ただし観測孔では当時は地下水位を観測しておらず、確認はできなかった。地震応答が66mと81mの2つの深さにおいてのみ見られる理由は,51mと95.5mにおいては水温が一定の地下水脈の中に存在したため,たとえ孔内の水の下降があったとしても水温が一定に保たれていたためであろう.特に51mでは他の地点に比べて温度変動の振幅がかなり大きい(5mK程度)ことから、仮にcoseimic変化があったとしても検出できなかったのであろう。
二度目の温度上昇は、そのスピードがゆっくりであることから,地震動や余震等により地下水脈が影響を受け、スクリーンを通じて孔内の水が再度下降した可能性が考えられる。上昇した温度は下降後,地震前よりも高い温度で安定した.温度上昇前の温度への温度下降は,より長い時間スケールで現れると考えられるが,今回の観測では時間が足りないことから,データを得ることができなかった.ただし、温度上昇前の温度まで水温が下降せず,地震による永久的な温度変化である可能性も考えられる.本講演では、観測された温度変化に、地震動による加速度情報や周囲の地質構造を考慮し、多孔質媒質の挙動についても検討し、発表する予定である。
本研究は、東京大学理学部地球惑星物理学科の観測実習の一環として行わた。今回の観測にあたっては、孔の所有者であるホテルレジーナ様の許可をいただきました。孔で観測を行っている、山梨県富士山科学研究所の内山高氏には、孔の情報をいただき、また計測にあたって便宜を図っていただきました。
サーミスタ温度計をゆっくり下降させながら孔内温度プロファイルを得た。地下約40m~60mでは10.7℃程度、地下90m以深では9.8℃程度と、透水層(地下水脈)と思われる2層が検出された(図1)。これは以前の観測結果と整合的である。また深さ60m〜90m区間では温度が線形に低下していた。60mより上部と90mより下部の地下水脈の温度を境界とした熱拡散方程式の定常解であると解釈できる.
観測中、2024年08月09日 19時57分、神奈川県西部を震源とするM5.3の地震が発生した(35.41°N, 139.17°E, 深さ約14㎞)。我々の観測サイト(震央のWNW、水平距離40㎞)でも震度3程度の揺れを感じた。観測孔では、4台の自己記録式温度計で連続観測中であった。温度データを調べたところ、深さ66mと81mにおいて,地震に応答する形で2~3mKのオーダーでの温度上昇が見られた(図2).一方深さ95.5mと51mにおいては,地震に応答する形での温度の変化は見られなかった.温度の変化は2段階に分かれて現れた。1段階目の変化は,地震波到達直後から4分間でのステップ状の温度上昇で,深さによって振幅が異なる.2段階目の変化は,地震波到達後から30分〜1時間が経過してから現れた.変化は滑らかな形で継続時間は30分〜1時間であり、その後元のレベルまで戻っているようである.
地震応答による温度上昇の原因として,地震動による孔内の水と孔壁の熱交換・水分子同士の摩擦熱,あるいは孔内の水の攪拌や移動(例えばShimamura & Watanabe, 1981 Nature; Kitagawa & Koizumi, 2000 JGR)などが考えられる.いずれの場合でも、熱伝導による熱交換可能な距離は、4分間では数㎜、1時間では数cmであることから,孔(直径20.4cm)のごく近傍からの影響に限定される。一方、孔内で水が移動したと考えると、深度66mと81mの周辺では地温(水温)勾配が逆転していることから,地震時の温度上昇は、計測地点よりも浅部から水が下降したはずである。温度勾配(-30mK/m)から考えて、温度計に対して孔内の水が7㎝下降したと解釈できる。地震に伴い、孔底のスクリーン部から周囲に水が流出した可能性がある。ただし観測孔では当時は地下水位を観測しておらず、確認はできなかった。地震応答が66mと81mの2つの深さにおいてのみ見られる理由は,51mと95.5mにおいては水温が一定の地下水脈の中に存在したため,たとえ孔内の水の下降があったとしても水温が一定に保たれていたためであろう.特に51mでは他の地点に比べて温度変動の振幅がかなり大きい(5mK程度)ことから、仮にcoseimic変化があったとしても検出できなかったのであろう。
二度目の温度上昇は、そのスピードがゆっくりであることから,地震動や余震等により地下水脈が影響を受け、スクリーンを通じて孔内の水が再度下降した可能性が考えられる。上昇した温度は下降後,地震前よりも高い温度で安定した.温度上昇前の温度への温度下降は,より長い時間スケールで現れると考えられるが,今回の観測では時間が足りないことから,データを得ることができなかった.ただし、温度上昇前の温度まで水温が下降せず,地震による永久的な温度変化である可能性も考えられる.本講演では、観測された温度変化に、地震動による加速度情報や周囲の地質構造を考慮し、多孔質媒質の挙動についても検討し、発表する予定である。
本研究は、東京大学理学部地球惑星物理学科の観測実習の一環として行わた。今回の観測にあたっては、孔の所有者であるホテルレジーナ様の許可をいただきました。孔で観測を行っている、山梨県富士山科学研究所の内山高氏には、孔の情報をいただき、また計測にあたって便宜を図っていただきました。