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[SCG56-P02] 多成分ひずみ計に記録される地震動・降雨応答の検討

キーワード:歪、地下水、地震後の変化、降雨後の変化
産業技術総合研究所では,南海トラフ沿いで発生する地震の予測精度向上を目的として,2006年から20点を目標にした地下水等総合観測ネットワークを構築し,プレートの動きを監視している.各観測点では地殻ひずみ・地震動・地下水位などを観測しており,そのうちひずみの観測には主に石井式ひずみ計が使用されている.石井式ひずみ計は変位拡大機構と磁気センサーを用いた変位検出器を搭載しており,10-9 strain程度の極めて小さなひずみ変化までを記録できる非常に高感度な機器である.高感度であるがゆえに,ターゲットとなる地殻変動現象以外にも降雨や地震動など様々な現象をひずみ変動として記録することが知られている.本研究ではこれらの現象によるひずみ変動について調査をおこない,その特徴について検討した.
まず,地震動応答の特徴について整理するため,12点のひずみ観測点における2年分の観測記録について,選択した地震イベントに対し目視でひずみ変動の有無を調査した.また,ひずみ変動が見えた地震イベントについては,地震動の最大振幅値や震源距離を計算し,ひずみ変動との関係性の議論を試みた.次に,降雨応答の特徴や共通点を調べるため,6点のひずみ観測点における6年分の観測記録について,降雨時の水平ひずみの変動を調査し,降雨応答のカタログを作成した.また,各観測点における降雨応答の有無と降水量の関係について調査したほか,各観測点における代表的な変動を比較し,降雨応答の特徴について議論した.
ひずみ計により観測されたデータには潮汐や気圧変動などによる変動成分も含まれている.したがって,潮汐解析プログラムBAYTAP-G[Tamura et al., 1991] を用いてそれらを分離し,滑らかなトレンド成分を取り出した.BAYTAP-Gによって取り出したトレンド成分には長期トレンドが乗っているため,注目したい変動に先立つ降雨などによる変動がない1週間程度の期間を長期トレンド除去期間に設定し,最小二乗法で線形の長期トレンドを推定して,それを全体から差し引く処理をした.
地震動応答に関する調査の結果,地震動応答と思われるはっきりとしたひずみ変動を複数発見した.観測点間で地震動応答が見えた個数に差があり,太平洋側に近いほど地震動応答が多く見える傾向があった.しかし,一定の地震動が観測されればいつでもひずみ応答が見えるとは限らず,むしろひずみ記録には影響のない地震のほうが多かった.地震動応答は観測された地震動の最大振幅値や周波数依存の最大振幅値,震源距離・マグニチュードの大小にも依存していなかった.このことから,ひずみの地震動応答の発生を制御する原因が単なる地震動の振幅や地震イベントの規模だけではなく,それ以外にもあることが示唆された.
降雨応答に関する調査の結果,すべての観測点において降雨に伴う複数成分のひずみ変動を確認した.変動の有無には降水量との相関が認められ,降水量が多いほどそれに伴うひずみ変動のみられる頻度が高いことがわかった.また,複数の観測点において多くのイベント間で降雨応答として観測されるひずみ変動の成分や膨張・圧縮方向が共通していた.
本研究では多成分ひずみ計の降雨時や地震後の応答について,一定期間の観測記録を目視で調査した.その結果,一定量以上の降雨に対しひずみ応答が見られたが,地震については観測される地震あるいは地震動の規模とひずみ応答との対応が明瞭ではなかった.地震動応答は確認されたイベントが少なく,現時点での統計的議論は難しい.したがって解析期間を延ばし,より多くの地震イベントについて調査をする必要がある.降雨応答については,本研究で発見したイベントについて降水量とひずみ変動量・変動方向の検討から,降雨応答のメカニズムに迫れることが期待される.
まず,地震動応答の特徴について整理するため,12点のひずみ観測点における2年分の観測記録について,選択した地震イベントに対し目視でひずみ変動の有無を調査した.また,ひずみ変動が見えた地震イベントについては,地震動の最大振幅値や震源距離を計算し,ひずみ変動との関係性の議論を試みた.次に,降雨応答の特徴や共通点を調べるため,6点のひずみ観測点における6年分の観測記録について,降雨時の水平ひずみの変動を調査し,降雨応答のカタログを作成した.また,各観測点における降雨応答の有無と降水量の関係について調査したほか,各観測点における代表的な変動を比較し,降雨応答の特徴について議論した.
ひずみ計により観測されたデータには潮汐や気圧変動などによる変動成分も含まれている.したがって,潮汐解析プログラムBAYTAP-G[Tamura et al., 1991] を用いてそれらを分離し,滑らかなトレンド成分を取り出した.BAYTAP-Gによって取り出したトレンド成分には長期トレンドが乗っているため,注目したい変動に先立つ降雨などによる変動がない1週間程度の期間を長期トレンド除去期間に設定し,最小二乗法で線形の長期トレンドを推定して,それを全体から差し引く処理をした.
地震動応答に関する調査の結果,地震動応答と思われるはっきりとしたひずみ変動を複数発見した.観測点間で地震動応答が見えた個数に差があり,太平洋側に近いほど地震動応答が多く見える傾向があった.しかし,一定の地震動が観測されればいつでもひずみ応答が見えるとは限らず,むしろひずみ記録には影響のない地震のほうが多かった.地震動応答は観測された地震動の最大振幅値や周波数依存の最大振幅値,震源距離・マグニチュードの大小にも依存していなかった.このことから,ひずみの地震動応答の発生を制御する原因が単なる地震動の振幅や地震イベントの規模だけではなく,それ以外にもあることが示唆された.
降雨応答に関する調査の結果,すべての観測点において降雨に伴う複数成分のひずみ変動を確認した.変動の有無には降水量との相関が認められ,降水量が多いほどそれに伴うひずみ変動のみられる頻度が高いことがわかった.また,複数の観測点において多くのイベント間で降雨応答として観測されるひずみ変動の成分や膨張・圧縮方向が共通していた.
本研究では多成分ひずみ計の降雨時や地震後の応答について,一定期間の観測記録を目視で調査した.その結果,一定量以上の降雨に対しひずみ応答が見られたが,地震については観測される地震あるいは地震動の規模とひずみ応答との対応が明瞭ではなかった.地震動応答は確認されたイベントが少なく,現時点での統計的議論は難しい.したがって解析期間を延ばし,より多くの地震イベントについて調査をする必要がある.降雨応答については,本研究で発見したイベントについて降水量とひずみ変動量・変動方向の検討から,降雨応答のメカニズムに迫れることが期待される.