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[SCG57-02] ウィノナイト隕石の岩石組織観察およびU–Pb年代測定による母天体の熱進化史推定

キーワード:ウィノナイト、U-Pb年代、熱史
ウィノナイトは、コンドライト隕石に似た主要元素組成と溶融分化した組織を持つ始原的エコンドライト隕石の一種である。ウィノナイトグループは、還元的な鉱物組成と酸素同位体比によって特徴づけられ、鉄隕石の一種であるIABと同一の母天体を起源とすることが指摘されている(Benedix et al., 2000).また、これらの隕石の研究から、約45.6億年前に集積した母天体が内部熱(²⁶Alの壊変など)や衝突加熱によって顕著な熱変成と部分溶融といった分化過程と角礫化を伴う破砕過程を経験したと考えられている(Zeng et al., 2019)。しかしながら、このような複雑な過程がいつ・どのような順番で起きたのかについては未だにわかっていない。よって本研究では、ウィノナイト隕石Northwest Africa (NWA) 13679の詳細な岩石鉱物観察および、隕石中のリン酸塩鉱物(アパタイト)のウラン-鉛(U–Pb)年代測定を行った結果から、隕石に記録された母天体上でのイベントについて議論した。
実験では、初めにNWA13679試料から研磨切片を複数用意した。それらに対して、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡(SEM-EDS; JSM-6390A)を用いて試料の組織観察を行い、後方散乱電子(BSE)像を基に疑似カラーマップを作成して、試料全体の均質性や鉱物分布を評価した。次に、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA; JXA iSP 100)を用いて、主要なケイ酸塩鉱物(カンラン石、輝石、斜長石)や金属脈(Fe-Ni)、アパタイトの元素組成を分析した。さらに、オープン大学の走査型電子顕微鏡(SEM)に付属する電子後方散乱回折法(EBSD; ZEISS Crossbeam 550)を利用し、アパタイトの結晶方位を測定した.最後に、東京大学大学院理学系研究科附属地殻化学実験施設のフェムト秒レーザー多重検出型 ICP 質量分析計(fsLA-MC-ICP-MS; NuPlasmaII)を用いて、隕石中のアパタイトの局所 U–Pb 年代測定を実施し、その形成時期を検討した。
岩石鉱物観察の結果、粒径や鉱物の組成、体積比などが異なる領域がみられ、同じ隕石中でも岩相に不均一性がみられた。また鉱物学的特徴として、いくつかのカンラン石にはFe濃度がリムに向かって低下する逆ゾーニングみられ、アパタイトはFe-Ni金属やトロイライト、高Ca輝石との共生関係が観察された.さらにEBSDの結果から、アパタイトは衝撃に伴う結晶の変形や再結晶化の痕跡は見られなかった。よってアパタイトはケイ酸塩と金属メルトの混合以降に二次的に形成し、衝撃変成は受けていないことが示唆される。また、アパタイトを切るようにケイ酸塩鉱物の粒間に浸透している金属脈がみられるため、少なくとも2回以上の混合またはメルトの移動があったと考えられる。
Pb–Pb年代測定の結果、4555±26 Ma (2σ、n=5)であった。この年代は同隕石のNanoSIMSによる測定結果 (4200±330 Ma; 酒井ほか、2024 JpGU)よりも古く、IAB隕石のI–Xe年代やPb–Pb年代に近い結果であった(Bogard et al., 2005、Li et al., 2024).これらの結果から、ウィノナイト隕石の母天体の熱進化史について、輝石温度計や冷却速度と合わせて議論を行う。
参考文献
Benedix et al. (2000) Meteoritics & Planetary Science 35, 1127-1141
Bogard et al. (2005) Meteoritics & Planetary Science 40, Nr 2, 207–224
Y. Li et al. (2024) Journal of Geophysical Research: PlanetsVolume 129, Issue 3
Zeng et al. (2019) Earth, Planets and Space 71:38
実験では、初めにNWA13679試料から研磨切片を複数用意した。それらに対して、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡(SEM-EDS; JSM-6390A)を用いて試料の組織観察を行い、後方散乱電子(BSE)像を基に疑似カラーマップを作成して、試料全体の均質性や鉱物分布を評価した。次に、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA; JXA iSP 100)を用いて、主要なケイ酸塩鉱物(カンラン石、輝石、斜長石)や金属脈(Fe-Ni)、アパタイトの元素組成を分析した。さらに、オープン大学の走査型電子顕微鏡(SEM)に付属する電子後方散乱回折法(EBSD; ZEISS Crossbeam 550)を利用し、アパタイトの結晶方位を測定した.最後に、東京大学大学院理学系研究科附属地殻化学実験施設のフェムト秒レーザー多重検出型 ICP 質量分析計(fsLA-MC-ICP-MS; NuPlasmaII)を用いて、隕石中のアパタイトの局所 U–Pb 年代測定を実施し、その形成時期を検討した。
岩石鉱物観察の結果、粒径や鉱物の組成、体積比などが異なる領域がみられ、同じ隕石中でも岩相に不均一性がみられた。また鉱物学的特徴として、いくつかのカンラン石にはFe濃度がリムに向かって低下する逆ゾーニングみられ、アパタイトはFe-Ni金属やトロイライト、高Ca輝石との共生関係が観察された.さらにEBSDの結果から、アパタイトは衝撃に伴う結晶の変形や再結晶化の痕跡は見られなかった。よってアパタイトはケイ酸塩と金属メルトの混合以降に二次的に形成し、衝撃変成は受けていないことが示唆される。また、アパタイトを切るようにケイ酸塩鉱物の粒間に浸透している金属脈がみられるため、少なくとも2回以上の混合またはメルトの移動があったと考えられる。
Pb–Pb年代測定の結果、4555±26 Ma (2σ、n=5)であった。この年代は同隕石のNanoSIMSによる測定結果 (4200±330 Ma; 酒井ほか、2024 JpGU)よりも古く、IAB隕石のI–Xe年代やPb–Pb年代に近い結果であった(Bogard et al., 2005、Li et al., 2024).これらの結果から、ウィノナイト隕石の母天体の熱進化史について、輝石温度計や冷却速度と合わせて議論を行う。
参考文献
Benedix et al. (2000) Meteoritics & Planetary Science 35, 1127-1141
Bogard et al. (2005) Meteoritics & Planetary Science 40, Nr 2, 207–224
Y. Li et al. (2024) Journal of Geophysical Research: PlanetsVolume 129, Issue 3
Zeng et al. (2019) Earth, Planets and Space 71:38