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[SCG57-05] 苦鉄質岩石中ジルコンの形成メカニズムと年代値の解釈
キーワード:U−Pb年代、Hf同位体、微量元素
ジルコンのU–Pb年代はマグマ活動のタイムスケールには欠かせないツールとなっており、花崗岩中ジルコンから得られる複雑な年代分布は花崗岩マグマ系の長寿命と多様なマグマ集積・混合・固結プロセスを実証してきた。近年、苦鉄質な深成岩に含まれるジルコンの年代報告も増えてきた。従来、このようなジルコンの晶出は集積岩中の間隙メルトが固化・分化する過程でSiO₂濃度が増加し、ジルコン飽和度が低下することで起こると考えられてきた。しかし、中央海嶺の斑れい岩における岩相とジルコン含有量の関係から、間隙メルトの「最後の一滴」からの結晶化だけではジルコン含有量を説明するのに不十分であることが指摘されている。カンラン石や直方輝石などZrの分配係数が著しく低い造岩鉱物が結晶化する際、Zrの拡散が遅い場合には鉱物-メルト界面でZrが濃縮され、ジルコンが飽和することが数値シミュレーションにより示されている(Bea et al., 2022, Chemical Geology)。このように、苦鉄質マグマにおけるジルコンの結晶化は単純ではなく、ジルコン年代の解釈にはその形成メカニズムの制約を考慮する必要がある。本発表では、飛騨帯に産する角閃石カンラン岩中ジルコンを例に(Itano et al., 2024, Geology)、Hf同位体比と微量元素分析を組み合わせて、これらの結晶化メカニズムを区別する方法を検討した。対象としたジルコンはカソードルミネッセンス像で暗色部と明色部に明瞭に分かれており、これらの領域は異なる微量元素特性を持つとともに、約1000万年の年代差を示す。粒子中心に多い暗色部は微量元素に富むことから、カンラン石結晶化時にZrが局所的に濃集して形成されたと解釈される。一方、明色部は微量元素に乏しく、角閃石結晶化時に分化したSiO₂が増加したメルトから形成された可能性が高い。Hf同位体分析では、両領域が誤差範囲内で一致する初生的な値(εHf = 10.3‰ ± 1.7)を示しており、同一のマントルソースを起源とする苦鉄質マグマ系が約1000万年にわたり活動していたことを示唆する。