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[SCG57-P05] 参照物質を目指したフラックス法による結晶育成:天然モナザイトを出発物質とした試み
キーワード:標準試料、フラックス法、結晶育成、モナザイト
本研究では地球化学的分析や年代測定の参照物質となり得る合成結晶の育成を目的とする。参照物質は一般に、国際的に認定された天然鉱物や、人工ガラス(例えばNIST SRMガラスなど:Pearce et al., 1997, Geostand. Newslet.)を用いる場合が多い。ただし、天然鉱物の場合は、流体・固体包有物や累帯構造・二次的な変成・変質などによる化学組成の不均質など、分析において必ずしも理想的であるとは限らない。また、質量分析においては、マトリックス効果を低減させるため、未知試料と同種の参照物質を用いることが望ましい。そこで、年代測定の参照物質として活用可能な均質な化学組成で、傷や空隙などの瑕疵のない結晶を人工合成するべく、フラックス法による結晶育成を試みた。特に、U-Th-Pb法や(U-Th)/He法、フィッション・トラック法などの年代測定法で対象となるモナザイト(LREE(PO)4)について検討した。
フラックス合成は、液相から結晶育成する方法の一つであり、出発物質と溶媒(フラックス)を混合・加熱し、溶液を冷却もしくはフラックスを蒸発させることで、目的単結晶を合成する(例えば、長谷川, 1968, 鉱物学雑誌)。この合成法では、原料や雰囲気、溶媒の種類や温度、加熱保持時間や冷却条件などの育成条件を変えることで、結晶形状(自形性、大きさ、結晶歪の量など)や生成量を制御することが可能である。年代測定に必要な分析では、今日、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置(LA-ICP-MS)や電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)等が用いられることが多いため、本研究は以下の条件を満たす参照物質の合成を目指す:①均質な主要・微量元素組成でUやThを一定量(10~100 ppm)以上含有、②100 µm以上の十分な結晶サイズ、③不純物や空隙、劈開などが可能な限り少ない。このうち①については、国際的には特定元素や同位体をドープするのが一般的であるが、UやThを含有すると期待されるスリランカ産の天然モナザイトを出発物質として用いて合成を試みた。
本講演では3種類の異なる冷却条件下でのモナザイトの合成を試みた結果を報告する。出発物質を粉砕し、パンニングによって不純物や変質部を除去後、自然乾燥したものをフラックスであるNa2MoO4と混合した。その後、窒素雰囲気下にて1300℃で30時間保持して焼成し、(a)15℃/時間で900℃まで冷却、(b)5℃/時間で1100℃まで冷却、(c)5℃/時間で1100℃まで冷却の後、15℃/時間で900℃まで冷却、といった3つの条件で結晶育成を行った。その後、残存したフラックスを除去し、信州大学所有のエネルギー分散型X線分光器で測定を行ったところ、条件(b)と(c)から自形性が高く、無色透明な数百µm~数mmスケールのモナザイト結晶が確認された。続いて、結晶内の化学組成の均質性を確認するため、東濃地科学センター所有のEPMAによる元素マッピングを行った。結果として、結晶内で十~百µmスケールで主要組成である軽希土類元素(La・Ce・Nd・Sm・Gd)およびPについて均質な組成を有する領域が確認された。U・Th濃度については数百ppm以下であると思われるが、概ね均質に分布していることが確認された。結晶によってはSiやThに不均質が確認された。また、結晶内には、残存したフラックス成分や、出発物質に由来すると思われるTh酸化物や軽希土類ケイ酸塩鉱物、ハットン石とみられるケイ酸塩鉱物(ThSiO4)の包有や、これらの析出が観察された。さらに、富山大学所有のレーザーラマン分光光度計による測定により、シャープなリン酸塩ピークが検出されたことから、これらの鉱物は構造不整に乏しく、十分に結晶化していると考えられる。以上の結果から、本研究でフラックス合成したモナザイトは参照物質としての潜在性を有していることが期待される。今後はLA-ICP-MSを用いたU・Thを始めとする微量元素や同位体濃度の測定や、より高濃度かつ均質なUやThの混入のためのレシピの検討を進め、アパタイトやジルコンなどの鉱物でもフラックス合成を実施予定である。
フラックス合成は、液相から結晶育成する方法の一つであり、出発物質と溶媒(フラックス)を混合・加熱し、溶液を冷却もしくはフラックスを蒸発させることで、目的単結晶を合成する(例えば、長谷川, 1968, 鉱物学雑誌)。この合成法では、原料や雰囲気、溶媒の種類や温度、加熱保持時間や冷却条件などの育成条件を変えることで、結晶形状(自形性、大きさ、結晶歪の量など)や生成量を制御することが可能である。年代測定に必要な分析では、今日、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置(LA-ICP-MS)や電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)等が用いられることが多いため、本研究は以下の条件を満たす参照物質の合成を目指す:①均質な主要・微量元素組成でUやThを一定量(10~100 ppm)以上含有、②100 µm以上の十分な結晶サイズ、③不純物や空隙、劈開などが可能な限り少ない。このうち①については、国際的には特定元素や同位体をドープするのが一般的であるが、UやThを含有すると期待されるスリランカ産の天然モナザイトを出発物質として用いて合成を試みた。
本講演では3種類の異なる冷却条件下でのモナザイトの合成を試みた結果を報告する。出発物質を粉砕し、パンニングによって不純物や変質部を除去後、自然乾燥したものをフラックスであるNa2MoO4と混合した。その後、窒素雰囲気下にて1300℃で30時間保持して焼成し、(a)15℃/時間で900℃まで冷却、(b)5℃/時間で1100℃まで冷却、(c)5℃/時間で1100℃まで冷却の後、15℃/時間で900℃まで冷却、といった3つの条件で結晶育成を行った。その後、残存したフラックスを除去し、信州大学所有のエネルギー分散型X線分光器で測定を行ったところ、条件(b)と(c)から自形性が高く、無色透明な数百µm~数mmスケールのモナザイト結晶が確認された。続いて、結晶内の化学組成の均質性を確認するため、東濃地科学センター所有のEPMAによる元素マッピングを行った。結果として、結晶内で十~百µmスケールで主要組成である軽希土類元素(La・Ce・Nd・Sm・Gd)およびPについて均質な組成を有する領域が確認された。U・Th濃度については数百ppm以下であると思われるが、概ね均質に分布していることが確認された。結晶によってはSiやThに不均質が確認された。また、結晶内には、残存したフラックス成分や、出発物質に由来すると思われるTh酸化物や軽希土類ケイ酸塩鉱物、ハットン石とみられるケイ酸塩鉱物(ThSiO4)の包有や、これらの析出が観察された。さらに、富山大学所有のレーザーラマン分光光度計による測定により、シャープなリン酸塩ピークが検出されたことから、これらの鉱物は構造不整に乏しく、十分に結晶化していると考えられる。以上の結果から、本研究でフラックス合成したモナザイトは参照物質としての潜在性を有していることが期待される。今後はLA-ICP-MSを用いたU・Thを始めとする微量元素や同位体濃度の測定や、より高濃度かつ均質なUやThの混入のためのレシピの検討を進め、アパタイトやジルコンなどの鉱物でもフラックス合成を実施予定である。