日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG58] 固体地球科学と材料科学の融合が切り拓く新展開

2025年5月29日(木) 13:45 〜 15:15 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:河合 研志(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、大村 訓史(広島工業大学)、土屋 旬(大阪大学理学研究科宇宙地球科学専攻)、辻野 典秀(公益財団法人 高輝度光科学研究センター)、座長:大村 訓史(広島工業大学)、土屋 旬(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、辻野 典秀(公益財団法人 高輝度光科学研究センター)、河合 研志(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

13:45 〜 14:00

[SCG58-01] DFT計算に基づくAl含有ブリッジマナイトにおいて酸素空孔が安定性に対して与える影響

*矢澤 清太郎1小林 亮 2大村 訓史3河合 研志1 (1.東京大学、2.名古屋工業大学、3.広島工業大学)

キーワード:ブリッジマナイト、鉱物物理、分子動力学計算、酸素空孔

ブリッジマナイトは下部マントルにおいて70%以上の体積比を占めていて、下部マントルの物性に大きな影響を与えている地球科学的に最も重要な鉱物の一つである。理論的アプローチにおいて計算コストを下げるためにブリッジマナイトの組成はMgSiO3と仮定される場合が多いが、実際の下部マントル中ではこのような純粋な組成で存在しているわけではなく、Al, Feが含有することで空孔が生成される場合があるということが知られている。また、実験的結果から圧力が高くなればなるほど空孔は少なくなり、27 GPa付近から空孔はほとんど見られなくなると考えられている。空孔は鉱物の輸送特性や熱弾性的、粘性的性質に大きな影響を与えるとされており、このような空孔の存在比が急激に下がる境界領域では鉱物の性質が大きく変化することが予測され1000 km付近の深さで見られるマントル粘性の低下や停滞するスラブを説明できる可能性がある。空孔による弾性的性質や安定性への影響を調べることで実際の地震波観測と比較して下部マントル上部の組成に関する理解へ貢献できる。
このような物性を調べるうえで、実験的手法と比較してより正確に空孔の密度を固定して地球内部の超高温高圧下条件を再現することができる第一原理計算によるアプローチは有効である。これまではブリッジマナイトが存在する下部マントル領域では空孔はほとんど存在しないだろうという見方がされており、空孔を含むブリッジマナイトの性質を第一原理的に調べる研究はYamamoto et al. (2003)を最後になされていなかった。しかし、近年の実験的研究では下部マントル領域の最上部から上部までにマントル物性に影響を与える程度に空孔は存在するだろうということが示唆されている。
本研究では先行研究であるYamamoto et al. (2003)で使われた構造と同様の系を用意し分子動力学計算を用いて温度効果を取り入れた場合の空孔を含むブリッジマナイトの安定性および弾性的性質について調べた。Yamamoto et al. (2003)では取り込めていなかった温度効果を取り入れることで空孔と高温状態との相互作用がブリッジマナイトの安定性や弾性的性質へ与える影響を考慮することができる。